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異世界ぼっち  作者: でーかざん
15/18

帰還

550pv超えました

たまに全話読んでくれていそうなログが残っていて、それを見るとすごく嬉しいです。

ありがとうございます

 初めて人が死ぬところを見てから四日。

 ユウ達が遠回りをして街につくまでに必要になった日数である。

 最短ルートより丸二日長くかかってしまった。

だがパトリックを失った三人ではたとえジャイアントスネークが一体であっても勝ち目なくそれ以外に生きて街に帰る選択肢はなかったのである。

門をくぐり街に入ると数え切れないほどの人でごった返している光景が一面に広がっている。

「帰ってきた…」

 多くの人をみて安心したユウは立ち止まって小さな声が漏れてしまう。

「立ち止まっている場合じゃないぞ。すぐにジャイアントスネークのことを報告しないといけない」

 ユウの背中を軽く叩きながら今真っ先にすべきことを言うガッツ。

依頼達成の可否に限らず帰還したらまずやるべきはギルドへの報告であり、特に今回のような異常事態はより早く、より正確に伝える必要がある。

ユウ達も解散して一度家に帰ることもせずに直接ギルドへ向かう道にはいる。

お祭り中の街に入ったからといって三人の間に会話が生まれることはなかった。ユウとスノウを毛嫌いしているパトリックはいないのに、その彼の死が重くのしかかっているせいで。

ギルドの建物にようやくたどり着く。普段の依頼のときに比べて数倍の道のりがあったようにユウには思えた。

中に入るとお祭り騒ぎの通りとはまた違った熱気に包まれている。いつものギルドともどこか違う熱気に。

その原因はすぐに分かった。いつもより冒険者の年齢層が若いのだ。しかも明るくすれた感じが全くない。

ユウ達と同じの仮パーティを組んでいた新人冒険者達だ。それが何組もいる。

どのパーティのメンバーの顔にも全く陰はない。依頼を無事に達成したのだろう。

そんな彼らは次の依頼を選んでいたり、別の人間と組んで新しいパーティをつくろうとしたりと精力的に動いていた。

見える範囲で沈んだ空気を出しているのはユウ達だけだ。

「報告は俺がしてくる。二人は適当に座っててくれ」

 ガッツがそう言ってカウンターのほうに歩いて行く。

 それをただ見送るユウ。

 後ろから服の裾を引っ張られ、ユウは振り向く。

「あっち、席が空いてる」

 そう言ってスノウがユウを席に引っ張っていく。それにも抵抗せずについて行くユウ。

 四人がけのテーブルに向かい合ってユウとスノウは座る。

 腰を落ち着けたことでユウに疲労が押し寄せてくる。両肩が唐突に重くなったかのようだ。次に足、首とどんどん全身が重くなる感覚に見舞われるユウ。

 相当疲れてたんだな。

 どこか他人ごとのようにユウの頭にそんなことが思い浮かぶ。

「初めて?」

「へ?」

 スノウの唐突な質問に気の抜けた声が出てしまうユウ。

「人が死ぬところを見るのは、初めて?」

「…ああ、初めてだった」

「冒険者をやっていくならこれからのたくさん見ることになる」

「…スノウは他に見たことあるのか、人が死ぬところ」

「ある」

「そうか…」

 そこで会話が途切れる。そのままガッツがやってくるまで二人の間に会話が生まれることはなかった。

 ガッツが報告を終えて戻ってきた。

 スノウの隣、ユウからみて斜め前の席に座る。

「とりあえず俺たちが見たことは全てギルドに伝えた。ジャイアントスネークについてはきちんと調査してから対応することになるらしい」

「そうか」

 そんな素っ気なく短い一言しか返せないユウ。

 そんなユウに目くじらを立てることもなくガッツは話を続ける。

「で、これが受けていた依頼の報酬だ。三等分してもらった。これが二人の分だ」

 そういってユウとスノウの前にお金が入った袋を置く。

 三等分。四等分ではなく三等分。

 目の前に置かれた報酬を手に取らずにただそれを見つめているユウ。

「受け取れ、ユウ。別にパトリックが死んだのはお前のせいじゃない」

 ガッツがそんなユウを見て言う。

「…ああ」

 ユウは報酬を手元に引き寄せる。だが懐にしまうことはしない。

 それ以上ガッツはなにも言わず、話を変える。

「後は、これからどうするかだ。まだ仮パーティを組む場合はギルドにそれぞれが再申請してくれ、だそうだ。俺は報告ついでに申請してきた」

 それを聞いてユウはスノウに正式にパーティを組んでくれるよう頼むことを思い出した。だが、今それをする気には全然なれない。

「二人はどうする?また俺と組むか?」

 ガッツの意外すぎる提案。

「…いいのか?消えるしか能のない俺なんかと組んで」

「今回の依頼は上手くいったからな、パーティとしては満足していた。少ないながらでもお前だから出来たことがあったろ」

 姿を出したり消したりして注意を引くのは確かにユウができる数少ないことだ。

だが、似たようにタゲをとることなら他の人でもできるのではないのだろうか。そんなことがユウの頭を占める。

 しかも…。

「死人が出たのに成功なのか?」

「依頼自体は成功したのは確かだ。パトリックの死は完全にイレギュラーだ。それでお前達の能力に疑問を持ったりはしないさ」

 初めて会った時以来、久しぶりにガッツはユウ達に笑顔を見せながら言った。

「スノウ、お前はどうする。俺とユウとまた組むか?」

 無言だが首をしっかりと縦に動かして意志を示すスノウ。

「そうか、ならまた三人で組もう。もう一人をいれるかどうかは明日にでも集まってきめようじゃないか。さすがに今日は疲れただろう。俺も疲れた」

 ガッツはそう言って大げさに肩をすくめてみせた。」

「…分かった」

 答えるユウ。

 頷くスノウ。

「じゃあ、明日の昼ごろに酒場で飯でも食いながら話そう」

 二人の反応から異論がないことを察するとガッツは頷き、手を振りながら背を向けて歩き出した。

「ユウ!」

 数歩進んだところで足を止めガッツは振り向き大声をあげた。

 驚くユウ。視線がガッツに釘付けになる。

「パトリックの死はお前のせいじゃない。それでも…」

 一度言葉を切って、間を置いてまた口を開く。

「それでも、他人の死が嫌ならお前は冒険者を止めるべきだ。もう一つの隠している力が無駄になるのだとしても、な」

 そう言い切ってからまた改めて背を向けてガッツは歩き出した。ギルドを出て行くまでもう二度と振り返らずに。

 そんなガッツの後ろ姿をユウはずっと眺めていた。ギルドを出て行った後も。

ずっと。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

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