修学旅行の下見
●修学旅行の下見① 98話●
土曜日
白桜 食堂
麻王は心海とお昼を食べている。
心海は、
「麻王兄、ひかりはどうなの?」
心海の作ったお弁当を食べている麻王は、
「眼を使ってないからはっきりとは分からないな。それより修学旅行下見の間は文音と仲良くな。」
「麻王兄は怒るだろうけど放っておけばいいじゃん!」
「弱者だからか?」
「私たちの世界はそうだったでしょ?」
「俺たちもこの世界に来た時はそうだっただろ?」
「違う!麻王兄ならこんな人間だけの世界なんて簡単に支配できた!」
「……心海がクラスの友人や陸上部の仲間たちと接しているのを見ると今の言葉は本意には思えないけどな。それよりも心海のお弁当は美味しいよ。」
「…………。」
「ただ有り得ないけど………これから先に万が一、俺がいない時に何かがあれば心海は逃げろ。」
「……美緒姉や文音を置いても?」
「それは俺の責任だ。マナの塊のその深紅のピアスをしていれば核ミサイルでも心海は被爆しない。お前だけは絶対に逃げろ。」
「私のことを愛している?」
周とひかりが歩いて来ると、
「麻王、兄妹そろって何をしているんだ?」
「これから青空が生徒会副会長として修学旅行の下見に行って来いってな。」
周は妹のひかりと並んで麻王の前に座ると心海は、
「私たちの前に座るな、周!」
ひかりは、
「心海!私のお兄ちゃんだよ!」
「アンタだって麻王兄のことを麻王って呼ぶじゃん!」
周は隣のひかりに、
「ヤメろ、ひかり!麻王は同級生でもソフト制作会社の社長だぞ?」
麻王は、
「心海もひかりも同じクラスで同じ陸上部。バチバチと火花を散らすライバルか?」
心海は、
「二キロでひいひい言って倒れるこんな弱いヤツが?」
ひかりは、
「もう一度言いな、心海!」
麻王は、
「子供か、お前たち?………いつか心海とひかりは別の競技で最高のライバルになるよ。
心海、直観と直感は?」
「……一ミリもしないけど?」
「心海、ひかり、白桜の野球部更衣室の隣に神谷がつくったリアルパター練習場があるから勝負して来たら?」
「私が勝ったら、麻王兄?」
「勝った方の言う事を何でも1つ聞いてやるよ。」
心海とひかりは、
「ホ、ホントに?」
「俺が噓をつくか?」
心海とひかりは、
「……結構、つくよ?」
「なら、周がつくか?」
ひかりは、
「……まあ。」
「なら今すぐに10本勝負して来い。」
「行くよ、貧乳ひかり!」
「心海よりあります~!」
「早く行かないと乳鑑定士の碧と弟子の神谷を呼ぶぞ?」
「キャッー!!!」
心海とひかりは、走って行く。
周は、
「……麻王ってよくそんなにポンポン言葉が出て来るな?」
「話が進まないだろ?修学旅行に生徒が行くのは12月初旬。それに二年生の大多数は海外を希望しているしな。青空は生徒会の予算縮小の為に国内旅行のみと言っているし…周の案が欲しいな。」
「麻王みたいな思考の瞬発力はないよ。」
「スキーやスノボーをするなら北海道か蔵王のある山形か。歴史や文化を見たいならベタだが関西か…。」
周は、
「………前の中学で北海道とスキーしたから京都や奈良も一度行ってみたいな。」
麻王は、
「なら周の意見で京都かな?で、本番は蔵王かな?最終的にPCで調べられるしな。」
「麻王、皆を呼んで聞こうぜ?」
「文音か?」
「………麻王にはバレバレ?」
「周のストライクゾーンはな。」
五分後
食堂に愛枝、棗、愛、神子、美緒、結衣、弓、香織、文音が集まっている。
麻王は、
「修学旅行の話から逸れるけど美緒、文音、済まないが弓と後で来るひかりに秘書のベースを教えてやってくれ。」
棗は、
「………私も教えてほしいな。」
愛枝は、
「棗がOKなら私も!」
愛は、
「愛枝がOKなら私もお願いします。」
「神子、結衣、香織もだろ?生徒会の仕事もしないしな。ちゃんとしてくれるならいいよ。」
愛枝、愛、美緒、結衣、香織は、
「………はい。」
麻王は立ち上がると、
「……今、京都は少し暑いな。じゃあすぐにでも涼しい北海道にでも下見に行くか?飛行機を予約しておくから三時間後に全員で時計台の前な。」
文音は、
「いいの、私、三年生だよ?」
「文音は修学旅行に行ってないだろ?それに青空が下見に行って来いというのは少しでも俺に休めって意味だしな。心海とひかりが帰って来たら周に任せるよ。」
麻王はお弁当を持って歩いて行く。
周は、
「麻王、勝った方の言う事を何でも1つ聞くって言うのはどうすんだ?」
立ち止まり振り返ると麻王は、
「俺とは言ってないしな。そんな時間はないよ……それにイーブンで帰って来るよ。美緒にフライトチケットと諸々のメールをするよ。じゃあ三時間後。ああ、美緒、心海にお弁当おいしかったと言っておいてくれ。」
そう言うと麻王はそのまま歩いて行く。
美緒は、
「嫌味?」
文音は、
「違うでしょう?」
愛は、
「……疲れ気味だね?」
神子は、
「………アメリカに連れていってもらった時に麻王君にすごいわがまま言ってね……サイテーだったよ。」
棗は、
「……私も昔の不良グループのことを相談して麻王に全て解決してもらったんだ。」
文音は、
「でも麻王はもう行っちゃったよ。余計に迷惑かけるよ?北海道に行ってもゆっくり休んでもらおうよ!」
愛枝、美緒、神子は、
「………だよね。」
周は、
「俺は部活もあるしいいよ。麻王は仕事をしながら後輩たちの面倒も看て、いつも本当に疲れている。無理は言わないで休ませてやって欲しい。」
心海とひかりが帰って来ると、
「あれ、麻王兄は?」
愛枝は、
「勝負はイーブンでしょ?」
ひかりは、
「……何で分かったの?」
周は、
「こら、ひかり、愛枝は先輩だから敬語を使え!」
ひかりは、
「はーい…でも、なんでイーブンってわかったのかな?」
文音は、
「多分、時間じゃあないかな?すぐに北海道に行くよ、二人も?」
美緒は、
「麻王が心海にお弁当美味しかったって。」
心海は、
「ヤリー!」
ひかりは、
「ふん!」
低い声で周は、
「……ひかり、おまえがああなったら俺は容赦なく切り捨てるからな…」
ビクッとするひかりは、
「…ごめんなさい、お兄ちゃん!絶対にそんなつもりなかったから…」
周の禍々しさに泣きつくひかりの姿に愛枝、棗、愛、神子、美緒、結衣、弓、香織、文音は、
「…………………………。」
二時間半後
新千歳空港にリムジンバスが来る。
バスの扉が開くとバスの運転手が、
「白桜の方ですね?」
美緒たちは、
「…えっ?……はい、そうですが?」
「夏葉さんから北海道の観光と美味しい食事を土日で案内して欲しいと言われて迎えに来ました。」
美緒はメールを確認すると”後で合流するよ。楽しんでおいてくれ。”って書いてあるよ。後、全員仲良くな。だって。
結局、麻王は日曜日も来なかった…




