球技大会?陸上大会?② お兄ちゃんタイムは終了
●長距離走は心理勝負? 96話●
白桜中等部3年生、500名は大きくAとBに分かれる。この事に麻王は異議を唱える。
中等部A 牧野芯、橘碧、井上ハルト、名古屋駿、伊藤聡、神谷智、千条司、坂季大地、夏葉美緒、夏葉心海
生徒会室
三年生の伊藤以外の芯、碧、ハルト、駿、神谷、千条、坂季、美緒、心海、ひかりが生徒会室に入って来る。
芯は、
「麻王、これ申請書。」
麻王は申請書を見ると、
「中等部生はAグループとBグループに分かれて我々野球部andバスケ部連合はAグループとして……何これ?」
芯、碧、ハルト、駿、神谷、千条、坂季は、
「………………。」
珍しく怒る麻王は、
「オマエたち高等部生だけが楽しんでいるんじゃないか?伊藤先輩は本当に同意したのか?」
碧は、
「……まあ、いいじゃんかよ、麻王~。麻王がBグループで中等部生500人を引っ張ればいいんじゃないか?」
両手を机の上に置くと麻王は、
「碧、昨年、結衣は中等部生3-Eとして球技大会のバスケに出場して同級生たちと親睦を深めたんじゃないのか?」
「……まあ。」
クシャクシャと申請書を丸めると麻王は、
「そう言う生徒たちも含め中等部生たちにいい思い出を残してもらい高等部に来てもらう意義で……はい、却下。」
芯、ハルト、駿は、
「ええぇぇぇ~ゴミ箱に~!」
碧とハルトは、
「女々しいな麻王。麻王が走ればいいじゃんかよ!ま、走れるなら交代しても問題ないよ、走れるならな。」
心海は、
「高等部vs中等部でいいじゃん~!麻王兄~!」
美緒は、
「でもね、麻王、今回は球技大会じゃなく30kmマラソン大会でしょ?それって酷暑の中で事故とかもあるでしょう?」
「当然、事故は考えないとな。」
ひかりががっかりして、
「麻王先輩、中等部Aが高等部のバスケ部と野球部の集まりで中等部生は全員出たくないって…。」
呆然と麻王は、
「出たくないのか、全員?…そもそも、碧、美緒、心海、オマエたちは生徒会だろ?俺はおまえたちを見たことないけどな。」
碧は、
「青空は怖いしよ~!却下、却下で、もう面倒くさいしよ…」
碧の言葉に心海だけが笑い転げている。
気まずい空気に神谷、千条、坂季は、
「…………………………。」
麻王は椅子から立って自身の生徒会副会長席の上に座ると、
「マラソン大会は今週の日曜日でもう一般道も借りて変更の時間もないしな。ひかりと中等部に説得に行くか…」
ひかりは、
「うん、一緒に二人で行こうよ、麻王先輩~!」
「はぁ~、高等部vs中等部って…子供か?」
麻王は一人生徒会室を出て行く。
自分たちのゲームにしたことに不満気な麻王の背に芯、碧、ハルト、駿、神谷、千条、坂季、美緒、心海は、
「………やっちゃった?……やっちゃったよなぁ…」
麻王は振り返ると、
「ああ、その申請書を清書して今日中に再提出な。」
芯、美緒、心海、ひかりは、
「ええぇぇぇ~もうクシャクシャ~ですが~!?」
白桜中等部
中等部生徒会室に生徒会役員と各部活部長が集合している。
麻王は、
「俺と高等部一年の上杉ひかり先輩がフォローしてやる。中等部三年の最後の思い出に…一人100Mでもどうだ?」
白桜中等部生徒会長の山形聖美は、
「それはいい案です高等部副会長。」
麻王は、
「山形先輩に妹二人か…授業料が大変だな。」
山形聖美は、
「夏葉先輩ほどじゃないですが私たち三兄妹は特待生です!……何でお姉ちゃんを振ったんです?」
「言ってもいいのか?」
「え?…は、はい…」
「お父さんの会社を継いだ大士先輩は藍や聖美が大好きだろ?」
「はい、私もお姉ちゃんも大士お兄ちゃんを手伝ってます…」
「今、大士先輩は神薙総合財閥傘下に入り、新しい会社にしようとしている。それも知っているな。」
「も、もちろんです!」
「そのお兄ちゃんから大切な妹を奪えないだろう。」
「……それは夏葉先輩が神薙総合財閥のあれだからですか?」
「そこまで理解しているならもうこれ以上は話す必要はないだろ?」
涙を拭うと聖美は、
「……わかりました。」
「大士先輩には内緒だからな。」
ひかりは、
「何の話です?」
「いずれ俺たち二年が卒業したらひかりたち一年の誰かが生徒会長になる。山形聖美は、頭もキレるし、度胸もある。必ず力になってくれるよ。」
ひかりを見ると聖美は、
「ふん!全面的に協力させて頂きます、夏葉先輩!」
ひかりは、
「あ~!今、鼻で私を笑った~!小娘~!」
100Mなら記念に出ると中等部三年が集まって来る。
そこに周もやって来ると、
「麻王、妹とお前のバージンロードを俺も手伝ってやるよ。」
「これ、明らかにシルクロードだろ?世界記録が42.195kmを2時間と少しで走ると考えたら時速20km/hで走り続けるか…時速20km/hって女子中学生の全力疾走以上だな…。」
中等部生の一人が、
「夏葉先輩がいれば高等部生にも勝てると思います!」
「中等部三年生、全員参加で一人100Mだと50kmになるな…だからといって一人60Mも短すぎて中途半端だな。」
「中等部生徒会副会長の榛東輝です。麻王先輩、白桜はこれまで中高一貫のエスカレーター式でしたが来年からは面接もあり成績の悪い者もほとんど進級できないと聞いています。」
「いや、聞いてないけど?」
「神薙先輩が中等部全校集会に来られて言っていましたよ?ですから中等部生は全員勉学に必死です。ですから夏葉先輩にエールを送ってもらえば僕たちはもっと頑張れると思うんです!」
ひかりは、
「ね、頑張ろうよ、麻王先輩?」
「そっか。そう言う意味で青空は言ったんじゃないと思うけどな。」
麻王は中等部生徒会室から出て行ってしまう。
「え?」
ひかりは、
「ええぇぇぇ~待ってよ~麻王先輩~!ああ、聖美ちゃん、榛東君、5人ぐらいやる気のある子を集めておいてね!放課後、もう一度来るからね!麻王先輩、待って~!」
中等部生徒会室のソファに座ると周は、
「青空は本格的に白桜高校を変える気だと思うぞ。まぁ、俺は腐っていた元陰キャだしな。やる限りは、麻王は最高のパフォーマンスを見せてくれる。もう一度、もっと中等部生が楽しめるように考えてみたら、聖美、榛東?」
榛東は、
「……はい。」
聖美は、
「夏葉先輩と周先輩の長距離走ですよね?いっそのこと中等部生は観るのはどうでしょうか?」
周は、
「長距離走ほど精神的駆け引きが必要な競技もないしな。俺が中等部生なら麻王の駆け引きの妙をみたいな。」
聖美は、
「でも、今年の外部生は赤羽先輩たち10人とひかり先輩1人の11人、つまり99.8%の高等部一年生が内部進学ですよ?」
周は「……まだ白桜高等部には親の権力を嵩に懸かけたチンピラがゴロゴロいるしな。青空なら50%ぐらいまで削るんじゃないか?」
聖美と榛東は、
「……でも、青空先輩ならやりそう…」
周は、
「お茶ぐらい出ないのか?」
聖美は、
「……………。」
「そっかぁ、高等部に来たら厳しいぞ~!いや、厳しくするぞ~!」
榛東は、
「は、はい、すぐに買って来ます!」
榛東が走って行くと聖美は、
「そういうのってどうなんでしょうか、上杉先輩?」
「体罰教師復活論者が多いのはいただけないけど、山形先輩は体で覚えろ論者で厳しかった。」
「お兄ちゃんが?」
「ああ、でも、山形先輩が自身に一番厳しかった。そしてその先輩の教えは今の俺たちや赤羽たちがしっかりと引き継いでいる。聖美のお兄さんのプレイで青空も俺も何度も救われた。あの神薙総合財閥の跡取り息子がだぞ?」
「夏葉先輩は?」
「ああ、バスケに関しては麻王と青空は五分だけど、山形先輩の夢を一瞬で甲子園決勝まで叶えたのは間違いなく麻王一人のおかげだよ。その麻王は山形先輩よりも自分自身に厳しい。俺が言うのもなんだけど、麻王と山形先輩の白桜最底辺と白桜最頂点の青空の三人で白桜高校を甲子園決勝まで導いた。」
「……努力と根性ですか?」
「あの三人にとっては当たり前なんじゃないかな?」
最終的に中等部Bは、中等部三年7人、上杉周、夏葉麻王、上杉ひかりで決定した。
日曜日 白桜マラソン大会
中等部A
牧野芯(5km)、橘碧(5km)、井上ハルト(1km)、名古屋駿(1km)、伊藤聡(1km)、神谷智(1km)、千条司(1km)、坂季大地(1km)、夏葉美緒と夏葉心海の二人で残り14kmを配分。
vs
中等部B
中等部三年代表7人(各100M×7)、上杉周(10km)、夏葉麻王(予定15~17km)、上杉ひかり(予定3~4.3km)
ウインドブレーカー姿の麻王は、
「長距離走は心理的駆け引きが非常に大きい。俺が先に走る事を望んでいる芯、碧のペースダウンをできるのはひかりだがひかりは中等部生の為に俺と周を呼んだ主役だ。最後の花道を頼むよ。周、第一走者を頼めるか?」
HAKUOUバスケ部ユニフォーム姿の周は、
「芯と碧はスタミナのバケモノだけど、ハルト、駿、伊藤先輩たちと一年坊主はテクニックに走り過ぎてスタミナはふつうじゃないかな。」
麻王は、
「さすが解説の周。」
クスッとHAKUOU陸上部ウインドブレーカー姿のひかりは、
「兄は昔から分析大好きですよ。」
笑顔の周は、
「うるさいよ。……あの時、麻王に出逢わなかったら今頃、俺は…ありがとうな、麻王。」
「大学で出会った友とは生涯は付き合わないが、高校時代に出会った友は生涯ものだと兄さんが言ってたよ。」
ひかりは、
「男の友情か…いいなぁ~!」
周は、
「おまえは入ってくんなよ。」
「なにそれ~!」
周は転入した時の中等部三年の時は全く違う。それは彼自身の努力に努力を重ねて来た事による自信。もちろん、麻王の存在が周の努力を成功という最高の自信に昇華している。
出逢った頃から麻王の周への信頼は厚い。それは周もよく知っている。
スタート地点に来ると麻王は、
「愛枝、神子、棗、文音、弓、香織は10km走の周と最後に走るひかりにドリンクを渡してやってくれるか?」
「麻王は?」
愛枝たちが心配そうに聞く。
「ありがとう、俺は大丈夫。その代わりに周たちにはこまめにドリンクを渡して欲しい。頼むな。」
麻王の笑顔に愛枝たちは何も言えず頷く。
このメンバーで中等部A vs中等部Bの長距離走は始まった。
白桜高校グラウンドで1kmを中等部三年生7人が全力で走る。全力で走る中等部三年生に芯は余裕で付いてくる。三年生のタスキを受けた周と芯の勝負がはじまる。
白桜高校で言えば、今年の4月までは青空と麻王を除けば、スタミナは、芯、碧、周、優也の順だった。
でも3kmを超えた頃から芯が周に離されていく。芯には信じられない光景が呼吸を乱し始める。
どんどん放されて行く周の背を見ながら激しく息を切らす芯は、
「……そ、そんな…な、なんで…」
どんどんと周とキョリが離される。
中等部Bは芯と碧は各5km、他の者は各1kmで6km。残り14kmは美緒と心海で配分する。
芯はタスキを碧に渡すとそのまま倒れ込む。続く、碧は芯よりもスタミナは劣る。
加えて芯と代わった5kmで周の姿はもう見えない。
この酷暑の中、前走の周がまったく見えない。これが碧には精神的にツラい。
しかも、夜と違い離れた距離感が夜に練習で走るよりも把握できてしまい精神的に余計に疲れさせる。
加えてこのような展開になると思っていなかった準備不足の碧の心拍数はまだ上がっていない。
この三つの悪条件が更に周とのキョリを引き離す。
10km地点で約700M以上の差で周は麻王にタスキを渡す。
麻王は周を一切見ず最初から全力で走って行く。
羽田までの折り返し点で待っている中等部Aのハルトと駿、伊藤に神谷、坂季、千条の三人は、中継カメラに写る麻王の速さに呆然としている。
麻王は一人で15kmを走る予定だったが20km地点を超えた所で愛枝がスケッチブックに美緒が追い上げて来ていると書いているのを見て、
”愛枝、ひかりを最後の2km地点で待たせろ!”
そう言いながら麻王は走って行く。
愛枝は、
「え、麻王が18km以上走るの?うん、分かった!」
理想は中等部Aに2km離して、ひかりにタスキを渡したい。
麻王は更にスピードを上げる。
25kmラインで棗が、
「麻王、1.5km差で心海が超追い上げ!」と麻王に告げる。
「……心海か、速くなったな。」
麻王はもう一段スピードを上げる。走り終わった全員が中継モニターに映る麻王のその速さに呆然を超えて信じられない。
ヘリコプターで上空から撮影し続けている。
残り2キロで麻王はひかりにタスキを渡すとひかりは、
「麻王先輩、行って来ます!」
ひかりはゴールまで残り2kmを駆けて行く。
白桜高校では中等部生500人も集まり大歓声が視聴覚室で起こっている。
視聴覚室
ストップウォッチを持っている聖美は、
「キャッー!!!!!! 20km、夏葉先輩35分ジャストだよ~!」
中等部三年生たちは、
「ウソ!?…42.195kmの最速タイムが123分だから…えっ…えぇぇぇぇぇ~!」
麻王は平然と立って中等部Aの最終ランナーの心海が来るのを待っている。中等部生徒会副会長の榛東が走って来る。
中等部Bのタスキを持って走って行くひかりを見ながら榛東は、
「感動しました、麻王先輩!」
麻王は、
「何か感じたか?」
「はい!自分の役割を理解しました!もっと自身をいじめ鍛えて皆を引っ張って行きたいたいと思います!」
「体をいじめるだけじゃあ身体を壊すだけだ、常に思考をすることな。」
「ですね!頑張ります!」
「その笑顔を見れてよかったよ。」
休憩していると神谷や赤羽たちが走って来る。
「麻王先輩、一生先輩について行きます!」
「いや、来なくていいよ。それよりも周の走りを見ていたか?この日と地区予選と甲子園に向けてどれだけ走り込みをしたか理解できるか?」
「野球であれだけ走り込む必要あるんですか?」
千条が麻王に問うと、
麻王は深いため息を尽くと、
「あいつは冬のウインターカップにも備えているんだよ…。ひかり、頑張れよ。」
麻王の言葉に野球部の神谷や三好が麻王にバスケ部に入部してもいいですか?と尋ねる。
「最初はランニングの代わり程度に軽くバスケゲーム感覚でな。ついて来たいならそこからな体幹トレーニングとイメトレな。」
中等部三年生榛東、神谷、千条、三好、赤羽や神戸、榊たちの前を心海がチーターのように力強く猛スピードで駆けて抜けて遥か前方を走るひかりを追いかけて行く。
神谷は、
「…………え?100Mの千条より軽く速いよな?」
神戸は、
「………いや、俺たちの100M走より断然速いって。」
笑顔で榛東は、
「中等部の陸上部の頃から心海先輩の本気はスクーターより速いですよ!」
赤羽は、
「………スゲーよ、夏葉三兄妹、速え~!」
麻王は、
「血は繋がってないけどな。」
榊と神戸は、
「ええぇぇぇ~そんな事をサラッと~!」
麻王は軽く屈伸すると、
「ジョーク、ジョーク、夏葉三兄妹って言われたくなくてな。さ、本気で追いかけますか?」
「………ええぇぇぇ~!今からまた走るんですか?それにもう行っちゃいましたよ?」
「心海はプレッシャーの掛け方が上手い。高確率でひかりは過呼吸で倒れる。」
神谷は、
「………もうひかりも心海は遥か彼方ですよ?行かないんですか?」
「追いつくだろ。」
「……………。」
ひかりは残り700Mを超えると弓のスケッチブックに”心海が残り7kmから猛スピードで追い上げてもう後ろにいるよ。”と書いてある。
走りながら心の中でひかりは、
『……もう後ろに?心海って長距離走も速いの?え?2km差をもう?』
そう思うひかりの心に動揺が走り、息が乱れそうになる。
でも中継モニターで見ていた周と麻王の走りを思い出すとひかりは力が出る。
残り500Mでひかりは心海にピタリと真後ろに追いつかれる。心海は楽に追い抜けるが何故かひかりを追い抜かない。
そのプレッシャーの中でひかりも粘り続ける。
同じ陸上部のライバルでもあり、親友の心海がこれほど速かった事に動揺して遂に過呼吸を起こしてひかりが倒れる瞬間、
麻王がスライディングでひかりを抱きかかえる。心海は軽く飛び越えて”来たね、麻王兄!”さらにスピードを上げて心海はゴールまで一直線に走って行く。
周にひかりを任すと麻王は、
「よく頑張ったな、ひかり。タスキをもらうぞ?」
そう言うとひかりのタスキを持って再び麻王は走り出す。
周の腕の中で薄っすら目が覚めるひかりは、
「…………麻王………先輩?……もういない…」
ひかりを抱き起すと周は、
「ひかり、速くなったな!」
「………お兄ちゃん。」
「麻王は何をしても最高にカッコいいぞ、ひかり。」
「うん!」
心海はもちろん麻王が追いかけて来ることを理解してトップスピードで走っている。
短距離走最高速の心海のスピードで残り100Mラインを白桜高校グラウンドのレーンに入った瞬間、
心の中で心海は、
『麻王兄に勝った!』
心海が確信した直線残り5Mで麻王は心海を抜き去ってゴールする。
「ええぇぇぇ~!………麻王兄、いつも………何でも譲ってくれたでしょ~!」
さすがに息を乱した心海は麻王に怒る。
麻王は振り返ると笑顔で、
「マナを使わずに感心したよ。でも、もう高校生だろ?そろそろ大人の女の用意をしないとな。」
疲れ切ってそのままグラウンドに仰向けになってしまいながら心海は、
「……ハァハァハァ……だね!」
「妹に勝ちを譲るお兄ちゃんタイムは終了だ。」
麻王は心海の方を見ずにひかりの過呼吸の処置をしに戻って行く。
優也が心海は俺に任せておけと言って心海に蹴られている。
優也は、
「心海よ~、お兄ちゃんタイムは終了だ~!」
「求めてねえよ~!クソ優也~!心海、怒りの飛び蹴り~!」
「マジ超イテェ~!オマエ、性格悪過ぎ~!」
「麻王兄のマネすんな~!」
「肋骨が~ぎゃぁぁぁ~!」
麻王にタオルケットを持って来ると聖美は、
「お疲れ様でした、夏葉先輩。」
「ああ、妹二人に渡してやってくれるか?」
クスッと聖美は、
「……やっぱり麻王先輩はお兄ちゃんに似てますね?」
右手を挙げると麻王は、歩いて行く。
「……麻王先輩…」
「夏葉君、かっこよかったね、聖美。」
白桜高等部ブレザー姿の藍が歩いて来る。
「お姉ちゃん?」
藍は歩いて行く麻王の後ろ姿をじっと見つめている。
「……言わないの?」
「もう伝えたよ。」
「なんで、お姉ちゃんだけ!?赤瀬先輩とか好き勝手にしてるのに!」
「夏葉君が”今じゃない。今は藍も巻き込まれる”って…」
「信じるの?」
「信じるよ。聖美も夏葉君のあの走りを見なかった?」
「……確かに人間離れしてるけど…そういうことなの?」
「どうかなぁ、でも、私は高校卒業まで夏葉君を信じるんだ。」
「……高校卒業って…そう言えばお姉ちゃん咳しなくなったね?」
「でしょう?」
「なによ、それ?教えて~!」
「ダーメ。」




