球技大会?陸上大会?①
●球技大会? 陸上大会?① 95話●
六月、生徒会選挙に次いで白桜高校二番目の大きな行事は白桜中等部三年生、約500名の生徒たちを高等部に招待し、中等部球技大会のサポートを高等部の生徒たちがすることだ。
今年は新一年の神谷や赤羽たちも加わる。
昨年、最も盛り上がったのがバスケットボール。ただ野球部とバスケ部の双方が強くなった為、今年は陸上競技。もちろん、青空の提案。
中等部普通科7クラス+スポーツ科、計8クラスのトーナメント戦。全ての競技に得点が与えられクラス間でその得点数を競う。高等部の生徒は中等部のどのクラスにも自由にヘルプできる。
図書室
麻王は図書室で本を見ながらメモを取っている。
小さな声でひかりは、
「麻王先輩。」
「ひかりか…。」
「少し疲れ気味ですね。」
「そうだなぁ。この一週間は睡眠時間1時間ぐらいかな。ところでひかりは将来、何を目指しているんだ?」
「麻王先輩の秘書。三年の一条先輩に美緒先輩、最近は心海も手伝っているって聞いたから。」
「……心海は物理だけは得意だからプログラミングにな。で、ひかりは何が得意なんだ?」
ひかりはニコリとシャーペンを口に加えて座っている麻王を覗き込むように見ると、
「当然、全部です!」
「当然なんだ………なるほどね、すぐ働いてもらおうかな?」
「先輩の為ならいいですよー。」
「軽い。弓に通じるものがひかりにもあるな。ま、そういうフットワークの軽い子も好きだよ。」
麻王のマジマジとした表情にひかりは照れる。
「先輩は噂通りスケコマシですね?」
「その言葉が本当なら球技大会に出てないか?正当な評価は大切だろ。スケ(女)コマス(騙す)か………下品な言葉だな。スケコマシという者は図書室に来るべからず。帰った、帰った。」
麻王の言葉にひかりはクスッと笑うと粘る。
ひかりは麻王の隣の椅子に座ると、
「交渉しませんか?」
ひかりの言葉を無視して麻王は本を見ながらメモを取り始める。
ひかりは、
「長距離走に心海と美緒先輩が出ますよ?」
メモを取り続けながら、
「へー、美緒は長距離は強いし、最強コンビだな。」
「でしょ?麻王先輩、私と組んでくれませんか?」
「……スポーツは飽くまでも海馬の働きをよくする為にしているだけだからな。」
「甲子園で正しく血と汗を流す人が?お兄ちゃんとよく似ていますね?」
ひかりは笑顔で答える。
「周はグラウンドは仲間とのコミュニケーションの場と考えているって言ってたな。俺は周みたいに優しくないよ。」
「優しいのも嬉しい。でも時に真剣に戦って欲しい時もあるんですよ、麻王先輩?」
「せやな。」
クスクス笑い転げるひかりは、
「関西弁~!」
「ひかりってすごいな。ふつう、これだけ断ったら諦めるのに…。いいよ。」
頭を掻きながら本を終いに行く。
ひかりは麻王のその後ろ姿をジッと見ている、
『……カッコイイな…お兄ちゃんといつも一緒にいる麻王先輩はウインターカップでも甲子園でも凄いけど、勝負の勝ち負けやワンマンプレイより親友たちの心を大切にしたパスをする。』
「何だかな~。」麻王の独り言にひかりはクスクス笑い続けている。
ひかりは明朗快活だが男性に対して積極的というよりはむしろ消極的。
でも麻王といると積極的になれる。
そんな麻王といる時の自分がひかりは好きだと気付く。
そしてそういう自分にしてくれる麻王はもっと好きだと気付く。
「ひかり、ひかり?」
「ひゃい!」ひかりは、はっと驚く。
麻王は笑いながらひかりに手を差し出している。ひかりは黙って麻王の手を握る。
麻王は、
「海馬の活性化に付き合ってやるよ。長距離走って何キロ?というかいつからだ。」
「白桜から羽田を経由して帰って来る30kmですよ。午後4時ですからもうすぐですよ。」
麻王は、
「この暑さで30km?ああ、青空か……そもそもひかりは長距離走得意なのか。」
「短距離走よりは落ちますが、まあまあ速いと思います。先輩は副会長でしょ。だから10人交代してもいいんですよ。」
「それもう地獄のリレーだよな。」
麻王の言葉に何故かひかりは笑いが止まらない。でもそれもきっと緊張している私の為の言葉なんだ…ひかりはそう思うと手を握っている麻王が愛おしくなる。




