ラウンドロビン 虎ノ門学園 白桜 聖林館 春日野
●ラウンドロビン一回戦 93話●
白桜 食堂
「麻王、追追試合格したぜ!麻王の予想プリントバッチリよ!」
食堂で固定したギブスのまま麻王に抱きつく優也。
麻王は財布からお金を出すと、
「そうか………浜松町駅前にストロベリーシェイクあっただろ?俺、芯、ハルト、優也自身の4つを買って来てくれ。」
「軽く3kmはあるぜ?」
「毎週新聞配達一週間分と同額を送ってやっただろ。それと足腰が衰えない為のリハビリだよ。」
優也は、
「俺に衰えなんてねえ~!」
「ああ、ストロベリーの真ん中の苺をズラしたらgo dash againだからな。交通事故を起こすなよ。」
「それもリハビリだな!行ってくんよ!」
優也は走って行く。
ハルトは、
「……アイツって二年になっても変化しないな、麻王?」
「俺たちは高校生だ。バスケや野球が全てではないだろ?」
「……まあ、麻王と青空はそこに入ってないけどな。」
「ああ、ブルーベリーにしとけばよかった。」
「…………。」
芯は、
「ところで麻王、優也の右手のケガはどれぐらい掛かる?」
「神子にうっ血している周辺の部位の血流を瀉血してもらえれば半分の全治二週間かな。」
「そっか…試合には無理だな。」
芯は深刻な顔をする。
麻王は、
「そんなに強い相手がいるのか?」
芯は、
「虎ノ門学園の本道寺文也、上手いが昨年、山本に肘打ちを入れた卑怯なヤツ。対戦校でも怪我人が続出している。」
麻王は、
「それはインターハイ本戦決勝の話だろ?」
「信二は東京予選リーグで既に本道寺文也にボコボコよ…」
「気付かなかったのか?」
悔しそうに芯は、
「五人しかいない俺たちにはわからなかった。常に青空と伊藤先輩が敵ゴールに行ったら足の遅い信二だけ狙われちまって…信二はよく耐えてくれたよ…」
「それで本戦では一発ノックダウンか…」
芯は、
「麻王には野球の地区予選に力を入れほしいんだ…それにラフプレーも暗黙のルール内だと思う。」
「野球の予選大会は7月8~28日だけどな。」
麻王の言葉に芯は、
「……そうなのか?でも、バスケのインターハイ本戦と野球の地区予選はバッティングするだろ。新入部員の赤羽たち五人、俺、山本、バスケセンス抜群のハルトと駿。このメンバーで頑張ってもらうよ。麻王は野球一本で。」
「…そっか。」
東京地区 各トーナメントで勝ち上った虎ノ門学園はA、白桜高校はB、都立春日野高校はC、聖林館Dのラウンドロビン(各チームは全てのチームと一回だけ競技を行う)
ラウンドロビン一回戦 A虎ノ門学園vs B白桜高校
新東京総合体育館
白桜ユニフォーム姿の芯は、
「……麻王、何でここに?」
「5分でこの試合を終わらせたら野球の練習試合に間に合うだろ。どいつが反則王のフミヤ君?」
ユニフォーム姿の麻王は芯に聞く。
「…………麻王、お前…。」
芯が麻王の胸ぐらを掴む。
胸ぐらをつかまれたまま麻王は、
「おまえの言い分はファールもルール内だろ?お前があいつを許す事で白桜が試合に負けるまではいい。だが昨年、他校の生徒が三人バスケを辞める程の後遺症を持つケガをした。今年も出たらお前が代わりに謝罪に病院まで行け、そして全額の治療費も払え、芯。」
麻王の言葉に芯は右手を落とす。
「………分かったよ。でも、報復は許さねえ。ファールまでだからな、麻王?」
「了解、副キャプテン。」
麻王は芯ではなく観覧席をジッと見る。
芯は、
「本道寺の虎ノ門のベンチはアッチだよ、麻王!」
「そんなヤツはどうでもいいんだよ。」
「……麻王…。」
試合開始
本道寺文也は、当然、ウインターカップで活躍した麻王を真っ先にマークしに来るが麻王の側に来る前に突然、倒れる。麻王が担架を要求する。
「意識清明30ほどですね。救急車を直ぐに。」
麻王は審判や走って来たドクターに伝える。
審判は、
「……君、医学に詳しいのかね?」
麻王はニコリと、
「いえ、医学部志望の単なる学生ですよ。」
伊藤は、
「医学部志望生は別に医学に詳しくねぇって。行くところがあるんだろ、麻王?」
「ええ、開始21秒か…残り4分半あるな。」
麻王は着替えるとすぐに新東京総合体育館を出る。
芯は、
「お~い、麻王~!マジかよ~!」
伊藤は、
「榊、すぐに入れ!」
緊張気味に白桜ユニフォーム姿の榊は、
「いつでもOKです!」
芯は、
「伊藤先輩~!」
芯を無視して虎ノ門学園ベンチに行くと伊藤は、
「おい、コラ、小野寺、昨年の夏はやってくれたな。トリプルスコアにしてやるからソッコーのぼせトンチよりマシなおまえが出てこいよ。」
虎ノ門学園ベンチ、唯一の三年生、キャプテンの小野寺は、
「………伊藤…」
「三年の俺たちはこのラウンドロビンに敗退したら実質、終わりの引退試合だ。それでいいのか?」
「……でも…」
「本道寺文也はもう虎ノ門学園には帰って来ねえよ。俺の後輩君の追い込みは半端ねえからな。」
「え?」
「最後のケリをつけようぜ、小野寺。」
一瞬、目を閉じ立ち上がると小野寺は、
「……よし!決着だ、伊藤!」
新東京総合体育館 廊下
昨年、本道寺文也に後遺症を負わされた三人が跛行 (足を引きずって歩行する事)で麻王の下に来る。
「皆さんのご希望通り手術をします。残念ですが三年の皆さんは高校生活の間はスポーツはもうできませんがナノレベルの特殊なタンパク質を巻くのでしっかりとリハビリをすれば、ほぼ回復すると思います。ま、私がしなくても治験で近い内に始まると思いますが。」
後遺症を負わされた三人は、
「本当ですか!」
「この手術はまだ世界でも行われていません。故に条件があります。ここに本道寺文也が貴方達に怪我をさせた証拠の映像と過去の対戦相手の怪我人の記録があります。今後こういう人が出ないように彼を私の手術後に訴えて欲しい。弁護士は私が用意します。OKならこの用紙に書かれている病院と医師にご連絡してくださいね。」
麻王は三人に用紙を渡すと自転車に乗る。
「バスケ人生で夏葉さんに会えただけでも感激です!」
「……アイツだけは絶対に許せない!証拠もなくて……でも今ならもちろん訴えます!」
「ありがとうございます、夏葉君。でもどうやって本道寺文也を倒したんです?」
「消しゴムの欠片ですよ。パチンコ球の方がいいんですけど貫通するでしょ?大学に行かれたらバスケの試合で対戦しましょうね。」
麻王は自転車で走って行く。
最初は呆然としていた三人は、
「消しゴム?………夏葉君、ウインターカップで戦いたかったな…。よし!俺たちは白桜高校に応援に行こうぜ!」
三人は去って行く麻王に笑顔で手を振る。
香明学園 グラウンド
練習試合 香明学園vs白桜
神谷、坂季、藤原、三好、千条たち新一年は緊張して固い。麻王が白桜ベンチに入って来ると全員の空気が変わる。
「先輩!」
麻王は笑いながら、
「楽しめって。打たれても三振してもいいものを持っていると分かったら必ずお前たちはスカウトの目に止まる。ま、千条以外は大学に行くんだろうけどな。」
「お、俺も大学に行って逆指名します!麻王先輩。」
千条が興奮気味に話す。
「弓、セカンドの準備をしろよ。」
麻王の言葉に弓は”はーい!”と敬礼する。
神谷と坂季は、
「………軽い。」
「香明学園は強い。だからこそ正面からぶつかれ。負けても経験値は上がる。だから俺は出ないよ。」
麻王は自分は出ないよとサラリと言うと、
「ええぇぇぇ~!麻王先輩は出てくれないんですか!」
神谷が不安そうに麻王に言うと、
麻王は、
「ベンチで試合を見ながら優也に期末の勉強を教えるよ。」
神谷たちは、
「ええぇぇぇ~ここ、敵地の香明学園ですけど~!」
周は、
「そうだ、麻王、香明学園だぞ!」
麻王は、
「先発は?」
周は、
「……一応、麻王が来ない場合に備えて千条もアップ済みだけど?」
麻王は、
「坂季はストッパーとしてふつうは理来だろ?」
藤原は、
「ははっ、今日はストレートが走らなくて………すみません、麻王先輩。」
麻王は、
「そっか。キレのいいMAX130km/hのストレートと制球が活きての藤原の変化球だからな。」
坂季は、
「みんな、麻王先輩に見てもらってアドバイスもアリじゃあないか?」
麻王はラップトップを取り出すと、
「いいよ。」
周は、
「サラッと”いいよ”じゃあねえ~麻王~!」
麻王は、
「スカウトが来ているぞ、周?千条の荒れ球を如何に抑えて香明と戦うか?キャッチャーの腕の見せ所だろ?」
周は、
「……制球力もある麻王ならただのキャッチャー………いいな、それ!」
「だろ?」
「……………。」
香明学園12vs白桜高校6で練習試合は終わった。
新東京総合体育館
ウインドブレーカー姿の小野寺は、
「……やっぱりおまえには勝てないな。ありがとう、伊藤。」
白桜ウインドブレーカー姿の伊藤は、
「俺はできても残り半年、おまえは大学でもするんだろ?」
小野寺は、
「……進学しないのか?」
ポケットからスマホを出すと伊藤は、
「ああ。……本道寺文也は退学処分になったな…」
虎ノ門学園選手たちは、
「ええっ!!!!」
伊藤は、
「もうお礼まいりに来てもおまえたちとは無関係者だ。即警察を呼べばいい。」
小野寺は、
「ああ、白桜には勝てなかったが春日野には何とか。聖林館は…頑張るよ。」
小野寺の言葉に伊藤は遠くで待っている白桜メンバーの下に歩いて行く。
虎ノ門学園二年の山口は、
「……白桜の伊藤さんって超有名人ですけど、キャプテンの知り合いですか?」
「……またいつか。よし、これからはつねに三人一組で行動するぞ。」
「はい!」




