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強欲社長と畜生の世界

●社長の訳は? 90話●


白桜高校 校門前

放課後遅くに麻王が帰ろうとすると木村棗が立っている。


校門前に自転車を押して来た麻王は、

「リムジンが迎えに来るだろ?」


「今日はリムジンのタイヤがパンクしていて…。」


棗はうつむきがちに話す。


「…いいよ。少し待ってくれないか?」


麻王は駐輪場に自転車を置き直しバイクを持って来る。麻王は冬服の上書きとウインドブレーカーを棗に着せるとグローブも渡す。


「夏葉君は寒くない?」


麻王はバイクのエンジンを掛けると、

「本当は歩きたいんだけど仕事があるからな。寒くないから大丈夫。」


「用意いいんだね。ごめんね…………変な意味じゃないよ?」


「気をつけるのはオオカミさん、いや、オオカミ少年?両方か…いやいや、狼人間か?」


クスッと笑うと棗は、

「夏葉君、すごく頭良いのに授業中もそういう所あるよね。」


「棗は賢いだろ。ほら、ヘルメット。」


麻王は棗にフルフェイスを渡すと自身はハーフキャップ(50ccなどで被るヘルメット)にゴーグルを被る。


後部シートに座った棗を見ると麻王は、

「バイクは怖いか?」


「ううん、怖くないよ。」


「飛ばさないけどしっかりつかまっておけよ。」


「うん。」





30分後、新宿 都庁前に着く。


「結構掛かったな。」


麻王がゴーグルを取ると、棗のフルフェイスもゆっくりと取ってやる。


「……夏葉君はどこに行くの?」


「久し振りに俺の会社にな。」


「わ、私もいいかな?」


「別に構わないよ。」



バイクを近くのマンションの駐輪場に止めると都庁に向かって棗と一緒に歩いて行く。



「ここだよ。」


麻王の言葉に棗が見上げる超高層ビル。


エレベーターに乗ると棗は驚きながら、

「………家賃、すごく高そうだね?」


麻王は棗を見ながら、

「ワンフロアを七つ借りているからな。いい環境は人の意識も高くするし、働く者の心を癒してくれる。」


棗は麻王を見つめながら、

「バイクで話していたファイナンス……いい社長さんだね。」




47階 ファイナンス 社長室


「お疲れ様です、社長!」


高級スーツを着た強面(こわおもて)の男たち20人が両膝に両手をつけて麻王に頭を下げる。


麻王は、

「その挨拶は止めようか?役職はあっても俺たちは同じ夢を目指す仲間だからな。」


「社長、そちらの女性は?」


一人の男がそう言うと棗は驚く。


「知人の大切な女性だよ。」


棗はオドオドしながら、

「……な、夏葉君、この方たちは?」


「ウチの会社の幹部兼学生だよ。」


「学生……さん?」


棗は首をかしげる。


「俺と青空の生徒だよ。高卒認定試験を取ったら大学に行く者も多くいるよ。」


「夏葉君、教員資格持っているの?」


「教員免許は試験をパスすればいいワケじゃないからな。教員免許を持っている現役の先生方にも協力してもらっている。職業教師じゃなく面接に面接を重ねた本物の教師。それと夏葉君じゃなく麻王でいいよ。部長は?」


幹部の鈴木と言う男は、

「後、15分で帰って来ます。」



麻王は棗を社長席に座らせると自身は報告書に目を通している。棗は出されたお茶を飲みながら真剣な表情の麻王を眺めている。



「最近、売り上げもいいな。他の金融関係からの嫌がらせは?」


鈴木は端的に、

「最近はほぼ有りません。ですが大阪支店に一件だけ。」


「彼女がいるからメモに書いてくれるかな?」


鈴木は軽く頷くと素早くメモを書く。



「ありがとう。部長や大阪で頑張ってくれている田中専務にもよろしく伝えておいてくれ。」


麻王はメモを受け取ると玄関を出てエレベーターに向かう。先ほどの幹部らしき鈴木という男が付いてくる。




ファイナンス屋上のレストラン

麻王と棗は会話をしている横で鈴木はテイクアウトする弁当を100以上注文している。棗はその奇妙な光景に気を取られる。


四人テーブルで麻王の向かいに座る棗は、

「………夏葉君、殺しとかもしているの?」


棗の質問に麻王は少し笑う。


麻王は携帯を取ると何処かに連絡をしている。


携帯を耳に掛けたままラップトップを操作している麻王は、

「……LRファイナンスの夏葉麻王という者ですが社長さんはおられますか?」


二分程、麻王は待っている。


「あ、社長さんですか? 初めまして夏葉麻王と言います。あ、そちらのつまらない脅しは、結構です。ウチの会社に買収されたいor弁護士と税務署の方がそちらに行くか。どちらがご希望ですか?どちらもご希望じゃない?」



麻王は話しながら医療カルテとMRI画像を見ている。



「今、社長さんが先日受けた健康診断の結果を見ています。あ、社長さん、膵臓癌ですね。」


「守秘義務違反?……裁判?……貴方が死ねば原告はいなくなる。原告がいなければ裁判は続けられない。裁判とはそういうものです。」


「それと貴方の部下の常務たちが強欲社長の死後の跡目争いですでに揉めているようです。正しく畜生の世界でさすがに笑えませんね。私ならまだ治療できますよ。」


「……生きたい?…ええ、すぐに買収の手配と手術の準備をします。では失礼致します。」


麻王は携帯を切る。


棗は自身の心臓に手を当ててホットしている。


棗は、

「も、もう心臓止まるぐらいドキドキしたよ。」


「ま、手術後は刑務所に入ってもらうけどな。鈴木さん、今の話を帰っている部長に伝えて来てくれるかな?もちろん手術の用意も。全員お疲れ様。」


幹部らしき鈴木は頭を下げるとエレベーターに走って行く。


棗は呆気に取られてしばらく黙っている。


「……………。」



「夏葉君みたいな立派な人が何であんな人達の面倒を見ているの?堅気の人じゃないよね?」


棗の問いかけに麻王は”中階層に庭があるから行こうか?”と棗を連れて行く。




綺麗な東京都心部の夜景が見える中階層

「……わぁ……すごく綺麗な庭園だね~!……夏葉君?」



柵の手前まで歩いて行くと麻王は、

「……貧困や環境、教育が悪いと心の弱い人間は大きな傷や病を持つ。そう言った貧困や環境がある限り、必ず社会という盆からこぼれ落ちる人間は今後も出て来る。そういう者を捕まえて釈放するの繰り返し………それならこぼれた人間自体を救って更生させた方が早い。それにウチの社員はそこらの人間より遥かに真面目で優秀だよ。」


麻王は静かに遠くを見ながら話す。



「……それが夏葉君が社長の訳?」


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