神子の涙
●中間考査で優也は退部➁ 83話● 神子の涙
渋谷
麻王は渋谷区のバイクショップでバイクの修理をしている。
バイクショップの店長は、
「麻王ちゃん、さすがに警察の改造したバイクの部品は手作業になるから一時間程、原宿近辺を周って来たら?」
「…そうですね。……心海が欲しがっていた服でも探しに行くか…心海って弓と並ぶお洒落好きだよなぁ…。」
「麻王ちゃん、妹想いだよねー?」
「じゃあ店長、申し訳ないですがお任せします。」
麻王は原宿駅から少し入ったアパレルショップを回って行く。アパレルショップ前に東神子が男性と服を選んでいる。
スラックスにワイシャツ姿の麻王は、
「好きな人ができたのか…いい雰囲気だな。」
麻王は邪魔しないように元来た方向に戻る。
神子は、
「……夏葉君?……ううん、麻王君?」
麻王は返事をしないで人混みの中を歩いて行くと神子は走って来る。
麻王は立ち止まると、
「神子、最近、あまり話す機会なかったな。」
「誤解してないよね、夏葉君?」
神子が涙を流すと麻王は、
「何も見てないよ。」
神子の連れの男が突然、麻王を殴る。辺りが騒然とする。神子は男を止めている。
麻王は立ち上がると、
「嫌な思いさせたな、神子。俺は何ともないから。」
そのまま麻王は歩いて行く。
「麻王君、待って、ホントに違うんだよ!」
神子はその場に座り込んで泣いている。
15分後
神子と会った場所がまた騒然としている。麻王のファイナンスの社員たちが神子たちを取り囲んでいる。
大柄なファイナンス社員の二人は、
「テメー、社長を殴ったんだってな!!!! 社長や専務から暴力絶対禁止と言われているが社長に手を出すヤツだけは絶対許さねえ!!!!!!!」
神子の連れの男は、
「………も、もしかしてヤクザさんですか?ヒエエエエエぇぇぇ~!」
神子の連れの男は逃げ出す。
「逃がすと思うのか、ガキー!!!」
ファイナンス社員の前に立つと麻王は、
「お前ら組でも作るつもりか? 暴対法が適応されたらファイナンスも潰される。理解して行動しているのか?」
ファイナンス社員の二人は「社長!?」と驚く。
「その女性は俺の友人だ。さっき一般人が80M後方にいる警察官を呼びに行った。俺が対応しておくからすぐに南に逃げろ。身を守る以外の戦いは絶対にダメだ。行け。」
ファイナンスの社員たちは頭を下げると走って行く。
警察が来ると、
「大丈夫ですか。目撃者の話だと最初に高校生らしきものに君が殴られたと…。」
「妹の服を探しながら歩きスマホしていたら、ぶつかった中学生に殴られて、原宿駅周辺のショップの方に聞いていただいたら直ぐに分かります。彼女の前で恥ずかしいので被害届は結構です。以後、歩きスマホは気を付けますので。」
警察官二人は、
「仕方ないなぁ…」
麻王は神子の手をつなぐと、
「帰るぞ?」
神子は、
「夏葉君、そこのお店に一緒に来て。」
と逆に麻王はアパレルショップに連れて行かれる。
警察官の一人は、
「……めちゃ可愛い彼女ですね、巡査長?」
巡査長は、
「………ああ…って……コラ、仕事しろ!」
「当然の夜勤に日曜出勤………キツいっスね、巡査長?」
「…ああ。」
神子は、春の選抜以降、日本に帰って来る麻王の白桜ブレザーが傷んでいたから専門店に来ていた。
そして、昨年の神子へのアクセサリーのお礼に寸法を直接確認したいと…。その後、二人は公園に行く。
公園
ベンチに座ると神子は、
「………ごめんね。あの男性は白桜高校の元普通科の同級生だよ。原宿に行った事ないなら案内してやるって…逃げられちゃったけどね。」
神子はクスッと笑う。
「夏葉君なら間違いなく守ってくれた。」
夕陽を見つめている麻王は、
「当たってないよ。」
「えっ…だよね?……夏葉君って言ったのは…あんまり馴れ馴れしいのも……ううん、それに麻王君があんなにあっさり殴られるとは思えなかったし…。」
「いとあはれなパンチだったな…」
「使い方、間違ってるよ~!」
「現代語なら間違ってないだろ?」
麻王の言葉に神子はクスクス笑う。
「ところで社長って何、麻王君?」
神子は素朴な疑問を麻王に問う。
「神子。」
「は、はい。」
「明日と明後日、用事ある?」
「中間考査終わったし、体育館に夏葉君の寸法確認しに行かなくてよくなったし、何もないよ。」
ベンチから立つと麻王は、
「今からニューヨークに行かないと行けないんだけど一緒に行かないか?」
麻王は神子に手を出す。
麻王の右手を握ると神子は、
「……う、うん、いいの?」
「美緒たちももう行っているしな。神子のパスポートは?」
「修学旅行用のパスポート?カバンにずっと持っているよ。」
「じゃあ多分、無理だろうけどお父さんに連絡してみたら?」
「う、うん、少し待ってね!」
5分後
神子は下を向きながら、
「………夏、いえいえ、麻王君なら頑張って行って来いって。」
「じゃあ10分でバイク持って来るよ。」
「あ、あの、し、下着とか歯ブラシはいいかのかな?」
「ニューヨークで買えばいいよ。」
「じゃあ、今すぐ、い、一緒に行けるよ。宜しくお願いします。」
麻王はまだ少し緊張している神子の手をつないで神子の歩く速さに合わせてバイクショップに行く。
少し強引だけど一緒の速度で歩いてくれたり、緊張しないように歩きながら色んな話をしてくれる、どんなにすごくなっても麻王は変わらない。そんな麻王が神子は大好きだった。




