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最高の卒業式

●最高の卒業式 74話●


三年生の卒業式が粛々と進行する。

麻王に招待され、アメリカから一日帰国をした弥生と千佳が白桜高校の卒業式に参加している。

生徒会長の神薙青空は演台につくと睦月弥生と深森千佳を呼ぶ。



弥生と千佳が壇上に上がると青空は、

「二人は、この後すぐに大学のテストが控えているので日本滞在は半日だけです。が、世界最高峰と言えるハーバード大学に行った二人に海外の大学の経験談をして頂きませんか?」


弥生と千佳は、

「……いいの?」


「貴女方の父二人はあの悍ましき事件にまったく関与していなかった。そして何も知らない貴女たちはすべてを失い、愛する白桜まで追われた。」


「………………。」


「今日、卒業する504人に貴女たちとの別れを惜しむ者はいれど、責める者など誰ひとりとしていませんよ。」


卒業生のさらに後ろの二年生の中にいる文音は、

「お姉ちゃん~!千佳~!皆、待ってるよ~!」


体育館出入口にいる伊藤は、

「オラ、さっさとしろ、睦月!深森!おまえたちの大ファンの山形先輩が泣いてるだろうが!」


涙を何度も拭うと山形は、

「…ぅぅぅ…うるさいわ、聡! 睦月!深森!ハーバード様ってのは卒業式のスピーチもできねぇのか!」


弥生は、

「……大士君…」


千佳は、

「よし!弥生、私から話すよ。」


「……うん、…うん、私も負けない…」


二人は以前よりもずっと気品と自信を持って話す。最後に千佳は卒業して行く三年生全員にスマホを出させる。



20分後

演台の弥生は、

「……いつかアメリカに留学や仕事で来られる方は遠慮なく私たちに連絡を下さいね。最後に…」


卒業生504人は、

「………………………。」


弥生の隣にいた千佳は演台のマイクを取ると、

「白桜サイコー!永遠たれ~!」


卒業して白桜を去る三年全員が席から立つと弥生と千佳は拍手喝采に包まれる。



卒業式が終えると、


山形先輩も野球部の碧たち後輩と涙を流して抱き合っている。

文音と弥生も抱き合っている。千佳は同級生たちと抱き合い涙を流している。


麻王の姿はない。



千佳は、

「………弥生、麻王がいないね?」


弥生は、

「……うん。」


弥生も千佳も卒業証書を持ってボストンでも会わない麻王を探している。


青空が二人の下に来る。


「ご卒業、おめでとうございます。残念でしょうが麻王は来れません。二人にこれをと…。後、これをお二人に。」


会釈をすると青空は、弥生と千佳に手紙を渡す。


二人はそれぞれの手紙を読むと涙を流す。



弥生は、

「青空君、ボストンから電話だけで申し訳なかったけど推薦状、ありがとうね。」


千佳は、

「それと最高すぎる卒業式をありがとう。」


弥生と千佳は涙を流しながら青空にお礼を言う。



青空は、

「直接、麻王に会う事は叶いませんが鏡越しで好いなら案内しますよ。」


弥生と千佳は顔を合わせると、

「……是非お願いします!」



青空は、

「他言は絶対に…」


青空の言葉を遮ると千佳は、

「わかっています!もし情報が漏れたら裁いてくださっても結構です!」


「わかりました。では、表にリムジンを待たせてありますよ。」


弥生は、

「青空君も大人になったね?」


「弥生~!」


クスッと青空は、

「これから貴女たちは本当の大人になることを強いられますよ。」


「………………。」





神薙総合病院

弥生と千佳は鏡越しからオペ着姿の麻王が複数の医者と伴に手術をしている姿を見る。


青空は、

「命の炎が燃え尽きようとしている人には麻王が医師免許を取ってくれるまでの時間はありません。それでも助ける事ができるのは一日僅か500人程。」


鏡越しの弥生と千佳は、

「………500人も?」


「元々、私の父の下で働いていた優秀な医師がギリギリの所まで手術をして麻王が数分で最後の処置をして次のオペ室に行きます。」


「………………。」


「麻王の名前が表に出る事は決してありません。弥生さんも千佳さんもボストンでも会えなかったでしょう?」


「……はい。」


「これがその理由です。」


鏡越しの麻王が医師と話し次のオペ室に行ってしまい弥生と千佳に麻王が見えなくなる。弥生と千佳の瞳から涙が溢れ零れ落ちる。


涙と嗚咽の止まらない弥生と千佳を青空は連れて出て行く。




弥生と千佳は神薙総合医大屋上のヘリポートに来る。


ヘリの音が聞こえて来ると青空は、

「そうそう、二人には学生寮に居てもらいましたがそれぞれアパートを用意していますよ。」


千佳は、

「ううん、きっと今は愛枝たちに麻王を奪われる…」


弥生は、

「……うん、だから私たちは学生寮からやり直します。きっと麻王は私たちが寂しくならないように千佳と二人一部屋にしてくれたの。」


千佳は、

「今は何のしがらみもなく、毎日が楽しくてね!庶民の気持ちもわかる、すごくいい女になって帰って来るんだ。」


青空は、

「卒業したら神薙総合財閥で働かれたらどうです?」


千佳は、

「憎き神薙家に?まぁ、お父様たちと働けるのも魅力的だから候補にはしておいてもいいかな。ね、弥生?」


弥生は、

「だね……本当にありがとう、青空君。麻王からの手紙を読んでどれだけ私たちを想ってくれているかよくわかったよ。」


ニコッと青空は、

「本当に成長しましたね。」



ヘリが神薙総合医大屋上に着陸すると涙する弥生と千佳は搭乗する。



ヘリコプターの音で声が聞こえなくなっていく。

「二人が…推薦状三…麻…」


青空はヘリコプターのドアを閉める。聞こえなくても弥生と千佳にはハッキリとわかる。


ヘリコプターは空高くに飛んで行く。



振り返らずに青空は、

「よかったの、麻王?」


ワイシャツ姿の麻王は遠くなったヘリコプターを見ながら、

「……いいんだよ。」


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