木村棗
●木村棗 71話●
昼休み
白桜高校
珍しく青空と碧が二人で食事をしている。
青空は、
「剣道部員増えたらしいね?」
青空が碧に言うと、
「その代わり、大林さんたちにめちゃくちゃしごかれたけどな。」
碧のスマホに父親からコールが鳴る。
「悪い、青空……もしもし親父、今食堂なんだけど。放課後から何?…おお……マジかよ………ああ、………分かったけど麻王はしばらく帰って来ないぞ。分かった。何とかするよ。」
スマホを切ると碧は、
「はぁ~…」
すごいため息をつく碧。
笑いながら青空は、
「らしくないぞ、どうした?」
碧は、
「いやぁ、昨日、愛枝、結衣、香織たちが親父たちと麻王にゴルフを教わっていると最年少で副警視総監になった木村副警視総監とその娘が来たらしいんだ。」
「で?」
「木村さんが自分と娘にゴルフを教えて欲しいと言ったら麻王が空気を読んでくれて”いいですよ”とまで言ってくれたのは良かったんだけど……ハァ。」
「それで?」
「”娘をもらってくれないかな?”と言われて麻王は即答で”丁重にお断りします”とカバンを持ってそのままアメリカに行ってしまったらしいんだ…」
「すごいな?」
「すごいだろ?」
「いやいや、あの一瞬の会話でそこまで覚えている碧がね。」
「…………。」
青空は、
「でも麻王らしいね。それに碧、お前はそんなに親孝行だったか?」
碧は、
「……まあ、愛枝と同じ白桜幼等部組のボンボン息子をさせてもらっているのも親父のお陰だしな……それ以降の結衣の涙と親父のヤケ酒にな……警察は超縦社会だからな。」
剣道部継続の喜びの後の問題に落胆する碧。
青空は、
「なぜ、それで碧の妹が涙を流すんだ?」
「木村副警視総監と捜査一課長橘ではな…それより青空は、海外に行かないのか?」
「行くよ。麻王と同じ道が違う道か…」
「結局、青空と麻王ってどっちが賢いんだ?」
「どうだろうね…麻王は記憶力抜群に見えて実際は全般的に隙なく強いからね。」
「青空と麻王のダブルフルスコアーとか勉強して来たのがバカバカしくなるぜ。」
「……碧の父親は麻王を特殊警察部隊に入れたがっているのか。」
「青空よ、警察組織は江戸時代だよ。」
「なるほどね、少し興味深いな…」
放課後
碧は妹の結衣の中等部に行く。
白桜中等部3-E
結衣は、
「お兄ちゃん?私はもう大丈夫だよ?」
「……結衣、麻王を諦めてくれないか?お兄ちゃんも将来、結衣が麻王と一緒になってくれたらすごく嬉しい。でも…」
「……やっぱり昨日のこと…例えば麻王先輩が警察官になったらそういう選択を迫られるよね…。本当に好きだから諦める。それはわかっているよ…わかっているよ。」
結衣は涙を流し続ける。
「結衣、麻王はアメリカか?」
結衣は泣き続けながら、
「……うん。……帰って来るのは一週間後だよ…」
「親父のヤケ酒を一週間も見るのかよ~!」
一週間の予定より早く麻王が空港に帰って来る。麻王の携帯に副警視総監の木村から連絡が掛かって来る。
羽田空港
既にバイクに跨っている麻王は、
「はい……ええ、何故?……知り合いが多いんですね。今から娘と?……分かりました。場所は有楽町のクレスケンスルーナはどうです?ええ、最上階にフランス料理店があります。ええ、30分で十分ですよ。では。」
そう言うと麻王はバイクのナビにデータを入れる。
30分後 有楽町 ホテルクレスケンスルーナ
黒スーツに青のネクスト姿の麻王は最上階のフランス料理のフロアに行く。
現首相の川上は、
「夏葉先生、君のお陰でこうして僕は15年振りに好きな食べ物を食べる事ができるようになったよ!」
麻王は、
「定期的に検診には来られてくださいよ。」
他の政治家や官僚も「夏葉先生」と挨拶をする。
副警視総監の木村は啞然とする。
麻王は予約を取っている席ではなく、空いている窓際の席がいいと言う。
木村と娘の棗、麻王の三人で会話をしている。
麻王は、
「娘さん…いえ、棗さんは私のどこが好きなんです?」
麻王の質問に棗は、
「………………。」
棗は下を向いて黙っている。
麻王は座っている席の窓からホテルの下を見ると、
「11…14人……一階は占領されているな。」
木村に対して麻王は、
「アジア系のテロ犯が日本に入っている情報をお聞きですか?」
「部下が頑張っているよ。夏葉君はどこでそんな情報を?」
「今、不審な男たちがホテルの下に全14名が入って来ました。」
木村は、
「さ、さあ?首相もいるし、高級ホテルだからね。」
木村がホテルの下を見ると煙幕が上がっている。
麻王は席を立つとフランス料理のスタッフたちに指示をし、非常階段を保冷庫で塞ぐ。続いて店内の全員を窓から見えない片隅に集める。
麻王は布に包んでいた刀を出すと、
「皆さん、下から武装したテロリストが下から上がっています。何があっても絶対に大きな声を出さないでください。」
川上は、
「な、夏葉先生、どうしたら?」
「ボディーガードの人たちは最後の砦です。ま、必要ないですけどね。」
笑顔でそう言うと麻王は颯爽と走って行く。
棗は、
「………………。」
最上階にエレベーターが上がって来ると、5人の機関銃を持った武装した男たちが廊下の左右を確認している。
テロリストたちは誰もいない最上階のフロアを別々に分かれて探し始める。麻王は5人を順々に倒していく。
麻王はテロ犯の持っていた無線機をフォークで削り始める。
テロ犯たちから連絡が来る。
麻王が持つ無線機の音が”ザーザー”と雑音が入って聞こえにくくなっている。
“…This is not working. so all the hostages were caught. we want you to help us.
『無線の調子が悪い。人実は全員捕まえた。ヘルプをよこして欲しい。』
エレベーターから上がって来た二人の男も捕まえた麻王が刀を抜刀しテロリストの一人の男に切っ先を向けると、
木村は、
「夏葉君、非人道的行為は僕が許さないよ!」
麻王は、
「最上階に最初の五人のテロリストが来た時、首相以外全員殺すつもりでしたが? 一階にはライフジャケットに時限爆弾をしている男も一人います。後一時間で一階は突入したSWATと伴にテロリストに爆破されますよ?」
麻王の言葉に木村は、
「…そ、それは…」
「それに非人道的行為というのは権利を全うしている人間に使う言葉です。その権利を持つ者には死ねと?」
川上は、
「こら、木村君!夏葉先生に失礼だろ?NY市警でも教官をする日本の宝だぞ!慎みたまえ!」
首相の言葉にも木村は、
「……で、ですが…」
「ま、私も暴力は嫌いなので屋上から失礼します。サヨナラ、皆さん。」
麻王は換気口を開けて本当に出て行こうとする。
川上は、
「待って、待って、夏葉先生~!」
換気口から振り返ると麻王は、
「一階の命優先の一般市井の方々を助けて来ますよ。」
川上は、
「だよね~?木村君は必ず説得するから、ね?ね?それにここにも一般市井の人たちがいるよ?帰って来て」
換気口から飛び降りると麻王は、
「首相に一本取られましたね。では、ボディーガードの方々、無線機とラップトップを私に。」
そのまま麻王は窓際のカーテンを引き千切ると川上や木村は、
「………………。」
やれやれと言った感じで麻王は、首相のボディーガードから無線機、ラップトップと引き千切った大きなカーテンを持つと、腕時計の時間を確認し55階のエレベーターの通風孔から一階に向かって降りていく。
一階 換気通路
一階、換気通路から下のテロリストたちを見る麻王は、
「残りのテロリストは9人…。ライフジャケットの時限爆弾は手動操作か…。古典的で助かったな。」
麻王は二階まで戻り発煙筒を換気口横の通風孔入り口に三つ同時に点けると通風孔奥に投げる。
一階、換気口に戻って様子を見ている。残り五分…。
通風孔の至る所から煙が出た瞬間、換気口からスッと飛び降りるとライフジャケットの男3人を即座に気絶させる。
残り6人の男が麻王に気付き機関銃を打つとロビーの窓ガラスが激しく割れ砕け散る。
麻王の姿はない。
そう男たちが思った瞬間、背後から激しい衝撃で男たち6人は倒れる。
出血している右手を押さえながら麻王は、
「右手に二発か…マナは使えないし、機関銃には流石に生身で真正面からは勝てないか…かなり鈍ったな。」
特殊急襲部隊SWATが突入して来る。
SWATのリーダーは麻王の横に駆けつけて来ると、
「…………貴方は?」
汚れ切ったスーツの上着を脱ぐとワイシャツ姿の麻王は、
「I got a preliminary report for them……いえ、最上階のフロアテロリスト5名確保。一階のライフジャケットに時限爆弾をしているテロ犯を含め9名、テロリスト全14名を制圧。Are you alright?」
「OKOK,……Pardon?」
「…………。」




