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悲しい少女にさよならを

●悲しい少女にさよならを 69話●


飛行機に乗ってニューヨークから帰って来た美緒は超ご機嫌。


白桜高校

一年スポーツ科クラス


麻王はフラフラしていると碧は、

「どれだけ顔を腫らしているんだよ、麻王も人間なんだな。」


碧が笑いながら剣道部にしつこく誘う。


「睡眠時間もほとんどないのにそんな時間ないな、碧。」


麻王は素っ気なく話す。


「俺の妹じゃあダメなのか、麻王?」


「突然、何の話しだ?もう知っているのか…言いづらいな…」


「知っている?妹の結衣に言いづらいのか、麻王?」


「そろそろ全校集会だろ?」


「……ああ、弥生先輩か?」


駿は、

「朝からすごいニュースだよなあ…。」


ハルトは、

「……380人だったか?もう白桜にいられないんじゃないのか?」


麻王は席を立ち窓際で(たたず)んでいる周に、

「周、弥生はアメリカに行ったよ。」


「……本当か、麻王?」


「ああ、全校集会に行くぞ。」


「…………。」





白桜 総合体育館


麻王たちが体育館に入ると全生徒が荒れている。


「人殺し!」

「学校から出て行け!」

「殺人鬼の娘!」

「根暗女!」

「親の会社をどうしてくれるんだ~!」

「やっぱり妾の子だな~!」



教師が止めに入るが1500人以上の生徒の暴走は止められない。文音は体育館の前方で罵声を浴びて小さくなって屈んでいる。



麻王が両耳を塞いで屈んでいる文音の前に立つと体育館が瞬時に静まり返る。


「この中に家族を殺された人間はいるのか?」


麻王の言葉に1500人以上が緊張感に包まれる。


「………………。」


「いないのか?でも自身は正義と思っている馬鹿なオマエたちは罵りたいんだろ?集団で一人を殴りたいんだろ?」


「………………。」


「それが理不尽な物理的暴力でない限り、俺はオマエたちを止めない。オマエたちの日々くだらない毎日の鬱憤を晴らしたいんだろ?遠慮せずに早くやれよ。」


「…………。」


「親が殺人を犯して子供も殺人を犯したケースを一件でも聞いたことがあるか?まして今回は祖父だが?親の遺伝子を継ぐのは優性MAXで50%、祖父なら25%……片方だけを50%引き継ぐことは確率として有り得ないな。しかもそれは身体的特徴に過ぎない。」


耳を塞いで座り込んでいた文音は顔を上げると、

「………麻王。」


「先天的な遺伝が父親と母親の50%前後に過ぎない。せめて身体だけでも完全に継いでくれたら移植が容易にできるのにな。HVGやGVHの拒絶反応も起こらないのか…。でも、馬鹿なオマエたちにはわからないし、考えないよな。」


「………………。」


芯や周、碧。ハルトたちは、

「麻王~話が逸れているって!」



「夏葉に守られて調子に乗りやがって、妾の子が!」


一人の男子生徒の声が体育館に鳴り響く。


生徒たちは、

「……今の誰?」


三年生の女子生徒の一人は、

「……夏葉君、二年生の久保だよ。」


「そうか、ありがとう。」



文音を抱き起すと麻王は、

「文音、一ヶ月の秘書代は?」


「…え、54万円…だよ…」


「じゃあ名誉棄損で八億円の請求か。オマエのフルネームは?一ヶ月以内に裁判所から通知が来るからな。」



体育館の中央にいる二年の久保を生徒たちが避けて空間ができると、

「…………な、なんで八億円になるんだよ!」


久保は蒼白になる。


文音は、

「麻王、もう、大丈夫だよ…」


麻王はそのまま軽々と壇上に上ると、

「言葉も立派な理不尽な暴力。高校生なんだからそれぐらい覚えておけよ。裁判所の通知に八億円の内訳の解答が書いてあるから。」


麻王はそのまま壇上の教壇の花瓶の中からレコーダーを取り出す。



「人殺し、学校から出て行け、殺人鬼の娘、根暗女…etc. 合計200人以上はいるな。声紋から全ての犯人は判るからな。逃げられると思うなよ。」



麻王の言葉に体育館にかつて有り得ないほどの緊張感や泣き出す者も出てくる。



麻王は、

「あ、そうそう、名誉棄損罪は刑法230条、つまり刑事法だったな。支払いはオマエたちの親だけどお前たちは運がなかったら少年院かもな。」



麻王はポケットから携帯を取り出すと教師たちが止めに入ろうとする。


麻王は教師たちを制止させると、

「その行為は白桜高校校則第95条第1項公務執行妨害罪に当たる。加えて、侮辱罪の生徒を守れば今後永遠に教員生活を終わらせることになる。先生方には常日頃、お世話になっていますしね。」



麻王の言葉に教師たちが固まると麻王はスマホで何処かにコールしている。泣き出し頭を抱える生徒が続出する。



「あ、先生ですか?お世話になっています。ラップトップですぐに解析するので…。」


麻王の携帯を青空が取り上げると、

「先生方、何でもありませんので。」



青空は壇上からマイクを持つと、

「何をしているんだ、お前たちは!」


青空の言葉に全校生徒は縮み上がる。



「訳は後で麻王から聞く。全員、速やかに教室に戻れ!先生方もすぐに授業の準備を。」


青空の言葉に誰一人一言も発せず体育館を出て行こうとする。



麻王はやれやれと壇上を降りると立ち尽くす文音の下に歩いて行く。


「姉の睦月弥生や深森千佳はハーバード大学に行ったぞ。」


麻王の言葉に全生徒や教師たちも足を止め言葉も出ない。


「白桜の長い歴史でも文系なら間違いなくトップに入る弥生と千佳の二人でもハーバードではついて行けるかどうかだろうな。」


麻王の言葉に全生徒や教師たちもまだ啞然と聞いている。



「直ぐには全ての準備はできないが秋学期の九月には文音もアメリカかイギリスの大学に行け。これでコイツらとさよならだ。」


文音は、

「……やっぱり私に集団生活は無理かな…麻王にサヨナラ言われちゃった。」


文音の目に悔し涙と麻王のサヨナラに涙が溢れ落ちる。



麻王は、

「文音、いつかおまえはお姉ちゃんたちの下に行くよ。」


「……なんでそんなこと言うの…?」


「俺じゃない。おまえの才能がそうさせるんだよ。」


「……私の…才能が?」


「ああ、ここにいる誰よりも辛い想いをして来たおまえは誰よりも公平な判断ができる人だからな。」


「……麻王…今はわからないけど、わかるんだね?」


「ああ。家がなくなるなら家に来い。妹がおまえの曇天の空を蒼天にしてくれるよ。」


「うん!」



理事長はまた推薦状を書かされないか一人ハラハラドキドキしている。



文音は、

「……麻王、夏が終わるまで家…今朝、家に警察が来ていたけど家もなくなるの?」


「……………。」


麻王は返事をしない。



文音は涙を拭くと笑顔で、

「麻王みたいにバイト頑張ってこのど底辺から這い上がるんだ!私、頑張るから皆の名誉棄損は取り下げて。」


体育館から出ようとしていた生徒たちが文音に集まる。


「守れなくてごめんね、文音!」

「受験のストレスで、すまない、一条。」

「文音、いつも勉強教えてくれていたじゃん、私たち置いて行くの?」

「文音は賢いもんね!」



「…………みんな。……うん!ありがとう!麻王みたいにうまく言えないけどみんな気にしないで。」


文音は女子生徒たちと抱き合うと体育館から出て行く。




麻王は、

「お前は行かなくていいのか? 久・保・先輩。」


二年生の久保は、

「へ、俺?」


麻王は久保の背中を押すと文音の前に行った久保は、

「……ごめん、一条、お前の事が好きだったんだ。夏葉に嫉妬して…本当にごめん。」



麻王は示指と母指の二本指でレコーダーを持つと全員の前でレコーダーを粉々に潰す。



生徒たちは、

「スゲー~!握力?」


「指力?」


最初から文音を心配していた文音の同級生から拍手が起こる。



深くため息を尽くと麻王は、

「よくわからないな。」


麻王は呆れて体育館から出て行くと優也、芯、周たちが麻王を追いかけて行く。


駿は、

「イヤ~今回はマジでビビった~!」


ハルトは、

「特に青空は怖かったな!」


青空は二人の後ろから、

「レコーダーも録音してないし、携帯も中等部の心海にコールしていたな。」


駿とハルトは、

「うわ!聞いてた?」


青空はニコリと、

「さあ?」


碧は、

「……中等部の心海に?授業中だろ?」


「全員、騙されたのか?麻王ってさり気にチャレンジャーだよな~!」


駿とハルトは笑い転げている。


青空は、

「まあ、あそこで周りが引かなければ本当にしていただろうね。」


「…………。」


青空は、

「で、僕の何が怖かった?」


駿とハルトは、

「もう~聞こえているじゃん~!」





白桜中等部

普通科3-C

「夏葉さん、授業中ですよ!」


「……いやあ、”先生ですか?お世話になっています”って……何?」


「少しはお兄さんを見習いなさい!」


「いえいえ、その兄から……何?」





一年スポーツ科クラス


周は、

「先生たちも大慌てで授業の準備だろ?青空、怖え~!」


「あ~あ、結衣のライバルが一人減ったと思ったのに…。」


碧がガックリして言うと麻王が久保先輩を連れて来る。


「碧、芯、この先輩が八億円の代わりに剣道部に入ってくれるらしいぞ。」


優也は、

「クソ雑魚先輩がかよ~要らね~!」


久保は、

「…………クソ雑魚先輩って。」


芯は久保の首をロックすると、

「まあ、廃部阻止に後二人かぁ。希望が見えて来たな!」


「……え、俺、もうカウントされてるの?苦しいんだけど?タップ、タップ!!!!」



笑いながら二年の同じクラスの伊藤が教室に入って来ると女子生徒たちは、

「聡先輩~!」


周は、

「伊藤先輩、人気ある~!」


伊藤は、

「芯、碧、久保はバカだけど根性はあるよ。可愛がってやってくれ。」


久保は、

「…い、伊藤さ、後輩に可愛がってくれって何だよ~!?」


久保の言葉を無視して伊藤は麻王と出て行く。



芯は、

「麻王って何気に伊藤先輩や山形先輩と仲良いよな。ジェラシーー!!!!」


「イテテテテ、首もげる~!」


碧は、

「今日の放課後から来いよ、雑魚先輩!」


「…………え、ふつうにイヤだけ…イテテテテ~!」


スポーツ科クラス全員が、

「頑張って~!雑魚先輩~!」


「言葉の暴力~!」


久保が教室いっぱいに叫ぶと碧が頭を殴って竹刀を運ばせる。



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