麻王のアメリカと日本の往復生活とΔAI
●麻王のアメリカと日本の往復生活とΔAI 63話●
生徒会室
生徒会室は会長の青空や副会長の麻王がいる部屋の奥に生徒会会議室がある。更に奥には膨大な資料が置かれている部屋が存在している。
麻王は生徒会室の奥の生徒会会議室で何かの作業をしている。
青空は、
「深森千佳の件は助かったよ、麻王。」
青空は問題も起こらず最終的に深森財閥を買収できた事に対して麻王に礼を言う。
さっきから手を止め、ラップトップのモニターを見ている麻王は、
「政治の話は聞いているだけで疲れるからな。」
青空は麻王のラップトップを覗き込むと、
「………デルタAIは、さすがの麻王も苦労しているみたいだね?」
「理性を持つ人間と同等以上の知能をつくるのが容易い訳ないだろ?少し息抜きをしないとΔのいいアイデアが浮かばないな…。」
普段は表情に見せない麻王がかなり疲れてジッと目を閉じて座っている。
青空は食堂でコーヒーでも買って来るよと生徒会室を出ると、愛枝、神子、文音、愛、美緒が生徒会室の扉の前にいる。
「麻王は明日アメリカに戻らないといけないから全員帰ってくれるかな?」
愛枝が青空に噛みつく、
「私と神子は生徒会副会長、美緒も書記、愛も会計だよ。文音は…関係ないけどね!」
青空はため息交じりに、
「君たちはアルバイトばかりしてきてないだろ。先日、睦月先輩と深森先輩に入ってもらってね。もう必要ないよ。それに麻王の身体を本当に心配しているなら出て行ってくれないかな?」
生徒会規則を使えば副会長の愛枝と神子は青空と再選する形で一時的に生徒会長の席から降ろせる。だが明らかに掛け持ちしてまで日本に帰って来た麻王の気持ちを考えると愛枝、神子、文音、愛、美緒にはそれはできない。
愛枝は、
「私たちが生徒会を辞退したら麻王に今日一日だけ合わせてくれる?損はないと思うけど?」
そう愛枝が申し出ると同時に、
麻王が生徒会室から出て来る、
「予測変換機能を従来の1000倍以上にすると持ち主の思考とほぼ一体化するんだ。可愛い子供みたいだよな。」
青空は、
「それがデルタと関係あるのか、麻王?」
麻王は、
「一度、地固めをするべきじゃないのか? 最近、買収された睦月財閥と深森財閥からあまりいい噂を聞かないしな。一枚岩じゃない組織は一瞬で崩壊する。そもそも金になびく人間は信頼できない。明日はアメリカに帰らず睦月家と深森家に挨拶に行くよ。」
青空は目を閉じてしばらく考えると、
「睦月家と深森家は関係が深いし……そうだな。麻王にはアメリカと日本の往復をさせて済まないが頼むよ、麻王。」
青空の言葉に愛枝、美緒、愛、神子、文音は下を向いている。
麻王は美緒たち五人に高速変換機能のチップを渡すと、
「……それを試しに全員のスマホに組み込んでやるよ。それじゃあ、愛枝、美緒、愛、神子、文音、それにリサ先生も誘って食堂に行かないか?」
神子は、
「リサ先生はヤバいよ…。」
「いいんだよ。コネで入ったリサの立ち位置は至極悪い。おまえたちといればリサの立場もよくなるからな。」
美緒は、
「……ああ、それで…」
「そいうこと。」
愛は、
「麻王君、このチップは?」
麻王は食堂に歩いて行く。
青空は携帯を取り出すと、
「早速マーケティングとは麻王らしいね。弥生と千佳も食堂に行かせるか…。」
白桜 食堂
弥生と千佳、リサたちも白桜食堂にやって来る。
愛は、
「麻王君、結衣ちゃんとオーストラリアに行ったんでしょう? 私たちもアルバイトしたお金で行くから連れて行って欲しい…。」
「誰から聞いた?」
「父の医学部時代の友人の犬養先生が言っていたよ。」
麻王は深いため息をつくと、
「……人の縁はわからないな。」
文音がストレートに、
「麻王は結婚しないで愛人をたくさん作るつもりなの?」
麻王は、
「おまえたちに対してそんな扱いをした事がないけど。」
美緒は、
「……もちろん分かっているよ、麻王。どうせ直情的な結衣がアメリカまで来たんでしょう?私は文音と違ってちゃんと麻王のことを理解しているよ?」
文音は、
「美緒、ズルいよ~!」
目を閉じると麻王は、
「……例えば小説で男2女1、男1女2が恋をするとかあるだろ?」
愛枝、美緒、愛、神子、文音、リサ、千佳、弥生は、
「………………。」
「男1女2のケースで男が一人の女性を選ぶ。それで選ばれなかった女性が結果不幸になるなら?」
千佳は、
「うんうん、それなら最初から二人を選ぶが正解だよね?」
弥生は、
「未来の裁判官がそれ言うかな?私は一人を選ぶ男性の判断を尊重する。」
千佳は、
「弥生、そこが違うと思うよ?私と弥生が麻王と結婚して何の問題が起こるの?」
「……それは……まぁ、そうだよね。」
愛枝、美緒、文音は、
「こら~勝手に三人の世界をつくるな~!」
愛枝は、
「私は大学を卒業したらきっと仕事も忙しくなる。文音みたいに麻王を独り占めする気はないよ。ローテーションならせめて日曜日は一緒にいたいから三人ぐらいかな。週に2回は会えるから我慢できるよ。」
愛枝は呟く。
愛も、
「一緒のマンションにして共同生活も楽しそうだね。」
神子は、
「婚姻用紙の名前欄が増えたら叶いますね?」
神子が話すと美緒、弥生、千佳、リサも話に加わって盛り上がる。
ずっと無言のままの麻王は目を開けると弥生や千佳のスマホも借りる。小さなマイクロチップを全員のスマホに器用に入れている。
美緒は、
「………聞いてる、麻王?麻王はどう思うの?」
美緒は真剣に尋ねる。
小さなピンで器用に全員のスマホを分解しながら麻王は、
「……そうだな…例えば誰かが俺以外の男性と結婚しても幸せになるならそれで全然構わないんじゃないか。でも未来は誰にも分からないだろ。」
麻王は笑うが誰も笑わない。
文音は、
「……もしかして私たちを利用したの?」
弥生と千佳は、
「……文音…」
手を止めると麻王は、
「クソみたいなヤツらとつるんで堕ちて行くおまえを助けて俺にどんなメリットがあるんだ?」
文音は、
「お姉ちゃんから数百万のノーパソをもらったんでしょう?」
「俺の自作ラップトップのCPUは弥生に渡されたノーパソの3億倍の処理速度だよ。」
千佳は、
「……3億倍って…人間の知能?」
「そうだ。弥生が真剣におまえのことを心配しているから仕方なく話に乗ってやった。」
「じゃあ、お姉ちゃんのことを…」
「文音、おまえの周りには打算的なクズしかいなかった。だからおまえの目には人の優しさや想いを懐疑的に見る癖がある。俺はおまえと出逢ってから一度でも裏切ったか?」
「……ううん、……でも、麻王はアメリカに行った…」
文音の言葉に愛枝、美緒、愛、神子は、
「………………。」
「俺が自身の努力を認められてさらに努力することの何が悪い?」
弥生は、
「愛枝たちももういいでしょう?」
千佳は、
「まるで子どもだね?」
まだ不満気な愛枝たちは、
「……………………。」
麻王は椅子を逆にして全員を見ると、
「美緒は一緒に暮らして結婚しているも同然だから1人減ったな。愛枝はゴルフレッスンで付き合っているからこれで2人目。」
「愛は父親が医者だから三人目。リサは昨年のセンター試験の模範解答間違えていたのを指摘してやったから四人目。」
「神子はアメリカのアキュパンクチャー(針治療)をおしえてやっているから五人目。」
「文音は青空の会社の秘書に誘われていて帰って来なさそうだから六人目。千佳はフランス語で話さないと怒りそうだから七人目。弥生は噓も優しさと思っていそうだけど俺は本当の事を言って欲しいから八人目。」
リサは、
「何か、すごい雑な理由だよね?センター試験の模範解答の間違いと結婚は関係ないよね。」
麻王は、
「いや、全力で肯定されてもな。教師の自覚があるなら少しぐらいは凹もうか?」
愛は、
「私なんてお父さんの話だよ?」
「そもそもさ、お前たちが疲れている時に俺ならこんな風に無理矢理話をさせると思うか?」
「……だよね…ごめんなさい。」
「でも、それぞれの子供は有り得ないぐらい可愛いだろうな。」
「……そうだよね?」
全員が照れている。
「大幅にアップグレードしたスマホがみんなの後ろの席にあるよ。」
麻王の言葉に愛や美緒たち全員が照れたまま取りに行きキャッ、キャッ騒いで振り返ると麻王はもう食堂にいない。
「麻王~!?ズルいよ~!」
食堂のおばちゃんは、
「やかましいわ!さっきからアンタら全員でキャッーキャッー、いい加減にしな!」
「…………すみません。」
千佳は、
「……私だけ単なる麻王の想像だよ?」
クスッと弥生は、
「でも、千佳は、”将来の夫はフランス人か最低でも語学が私より堪能でないと絶対にあり得ない~!”って言ってたから間違えてないと思うよ?」
「あ、あれは…」
丼を左手に持った伊藤が歩いて来ると、
「うるせぇ、地雷共だなぁ。お、そのスマホはなんだ?」
文音は、
「……聡君…」
愛は、
「麻王君が考えたチップで”予測変換機能を従来の1000倍以上にすると持ち主の思考とほぼ一体化するらしいんです。」
「へー、俺もしてもらおっと。おばちゃん、ご馳走さま。」
伊藤は歩いて行く。
美緒は、
「……地雷だって…」
文音は、
「聡君は頭もいいよ。」
神子は、
「らしいですね。でも、全国模試に伊藤先輩の名前もないですよね?」
文音は、
「お金がもったいないって…」
愛枝は、
「呆れるよね!」
美緒は、
「……そう言うのはどうなの、愛枝?麻王や青空君はもちろんすごいけど伊藤先輩も文武両道でやっぱりすごいと思うよ。」
愛枝は、
「地雷まで言われて黙ってろって言うの?」
千佳は、
「愛枝、麻王は”変われる機会と考えないのか”というと思うよ。」
愛は、
「すぐに麻王君を問い詰めて…優しくないよね…」
弥生は、
「手を差し伸べたら他の皆から叩かれる。たまらないんじゃないかな?」
美緒は、
「もう、食べてばっかり、リサ先生!」
「ん?美緒ちゃん、カツ丼の食券買って来て。」




