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オーストラリア ケアンズ

●オーストラリア ケアンズ 58話●


大型船

デッキ

少し強い潮風とその潮のにおいが薫る中に麻王と結衣は立っている。


麻王は、

「ここはもうビッグアイランドの近くだよ。日本だと大晦日でハワイは人が多いし、二人でオーストリアのケアンズまで運んでもらおうか。南半球は夏だしな。」


結衣は、

「あの、ビッグアイランドって何ですか?」


麻王は結衣に携帯を渡すと、

「ハワイの本島のことだよ。お父さんに連絡したら?」


「持ってますよ?」


「この船からは俺の携帯しか繋がらないからな。」


「お借りします。」




オーストラリア ケアンズ


麻王はオーストラリアのケアンズで予約する。結衣は麻王らしくふつうの素朴なホテルをチョイスすると思うと微笑ましくなる。


ホテルフロント

麻王がフロントのオーストラリア人と英語で話している。借りるのはツインルーム(定員が大人2人の部屋。寝具としてベッドが2台設置されている。)。


結衣は、

「……あの、ツ、ツインルームですか?」


「何もしないよ。それかもう一部屋借りた方がいいか?」


無言で結衣が首を振ると、

「こ、これは…その…り、旅行ですか?」


「いや、すでに東海岸で大旅行をして来ただろ?」


「……そ、そうですね。」


麻王の言葉に凹む結衣を見ると麻王は、

「……俺のわがままのために大切な妹を日本に置いて来た。兄さんにも迷惑を掛けた。美緒、愛、神子、愛枝たちにも辛い想いをさせた。結衣と会えて嬉しかったが…あとはわかるか?」


「はい…もし、今の私の立場が他の誰かだったらツラすぎます…」


「でも、一生懸命バイトをし、貯めたお金で会いに来てくれた人には少しはいい思い出もつくって欲しいしな。……ああ、結衣は新東京総合体育、二階の観客席にいたな。」


「………見えたんですか…」


「見えたよ。有難う、結衣。」


赤面したままの結衣は、

「い、いえ…」





麻王は地元のスーパーに買い物に行くと結衣に好きな服を選ばせ食材を買う。


ティシャツ姿の結衣は、

「食材も買うんですか?」


「ペットボトルは日本より高いしな。」


「え、そんなにも?でもこの3リットルは……えっと…オーストラリアドルで105円?…安いですね?」


「だろ?」


「でも、旅行ぐらいはいいじゃないですか~!」


「結衣の夏服を買いに来ての次いで。あえて無駄遣いをする必要はないだろ?」


「……英語圏に暮らす者の発想ですね?」


「受け答えしかしない口数少ない俺が?」


「……自覚はあるんですね。」



熱帯雨林を見渡せるロープウェイや高原列車でショッピング。結衣には夢のような時間。


“GUN SHOP”という看板のお店を見ると結衣は、

「あのお店って銃が撃てるんですか?」


「みたいだな。でも、日本人観光客はぼられるぞ。」


「私、NYとBostonを三日間さまよってわかったんです。英語は下手だとぼられるって!だから先輩がお願いします。」


「記念になるか…」



GUN SHOPで結衣は、銃を選ぶのによく分からなくて困る。


「へー、38口径があるのか…」


麻王はリボルバー(回転式)を見つめる。


「38口径って何です?」


「うーん、細かい説明は置いといて日本の銃と同じだよ。結衣の力でも反動はほぼないしょ。警察志望なら打ってみたら?」


結衣の12発の弾丸は全く的に当たらない。


「指を傷めるからそろそろ他に行こうか?」


「先輩は撃たないんですか?」


「携帯しているのにどんな浪費グセだよ。」


「えっ…えぇぇぇぇぇ~!」



一発目の弾丸は左端に外れそこから中心に向かって連射する。


結衣は、

「……何で一発目は外したんです?」


「人質を取れた際に射…警察官になったら教えてもらえるよ。日本は教えないかな?」



ケアンズの地元の人たちの祭りに麻王と結衣は参加させてもらう。麻王は舞台に結衣も上げる。



ダンスが終わった後、麻王は地元住民にお礼にと、お手玉を3、9、15、18つと回すと20個目で全て落とす。観客席に笑いと拍手が起こる。


次にポケットからトランプを出すと麻王は観客に53枚の全てを見せる。

麻王がシャフルすると突然、全てのトランプが消える。

観衆が呆気に取られると、先程のお手玉を拾い観衆に投げる。


キャッチした少年のポケットを指さすと先程のトランプが出て来る。ケアンズ住人から拍手喝采が起こる。



「凄かったですね?……どうやってあんな遠くの少年のポケットにトランプを入れたんです?」


「タネが分かったらマジックは面白くないだろ?そろそろホテルに帰るぞ。」お手玉を回しながら麻王はクリームショップで”何が好い?”と結衣に聞く。


二人でソフトを食べながらホテルに向かう。

結衣はトランプの謎が知りたいと言う。


麻王は、

「…ああ、トランプは結衣を連れて舞台に上がる前にあの少年とすれ違った時にポケットにもう1つ入れておいたんだよ。」


「……お手玉も心理的な布石ですか?」


「さすが中等部一位。」


「20個目を落としたのもわざとでしょ?」


「そうそう今からホテルで結衣も落とすから。」


「もう、上手くないです!……麻王先輩……もう日本に帰って来ないのですか?」


「どうして?」


結衣は、

「……結局、クリスマスプレゼントも渡せなかったからボストンに持って来たんですよ…ホテルに置いてあります。……もう私の好きな麻王先輩の野球姿は見れないのかなって…」


「俺の目的は医学部卒業じゃないからな。」


「えっ…どういう…」


「医学部を卒業するだけなら高校卒業後でもいいだろ?」

「ですよね…」


「だが、今も苦しんでいる人はこの日本だけでも数え切れないほどいる。だから、医師免許証が欲しい。」


「……まだ先輩は高校一年生ですよ…」


「世界中の権利者と呼ばれる者、且つ、大病を持つ者に健康を与えて法を操作する。」


「……何となくわかりました…」


「だが、そのためにはホップステップジャンプでメディカルスクールを卒業しないとな。でも、結衣と明日一緒に日本に帰ったら即オペをしないといけない人たちが待っている。」


「……それが終わったらやっぱり麻王先輩はまた…」


「全然、わかってないな。」


「えっ…」


「日本は学年制、アメリカは単位制、医学部卒業試験合格後の医師国家試験、ただし医師国家試験は日本の医師なら日本で取らなければならない。つまり二つは必要になる。」


「……やっぱりよくわからないんですが…」


少し止まると麻王は、

「……もう説明はいいんじゃないか。」


「あきらめないで~!」


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