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法の定義とは

●法の定義とは 57話●


結衣は文化祭の後、アルバイトで貯めたお金でウインターカップ観戦後、愛岐たちと入れ替わりでボストンに向かった。


麻王はボストンかニューヨークの大学のメディカルスクールか、近くの医療施設にいると聞いたが麻王はどこにもいなかった。


三日間、結衣は麻王を探し続け、ニューヨークのメディカルスクールや医療施設を周るが麻王はいないと言われる。

結衣が会えないかと不安になり始める。


三日目、結衣はNY大学に行くとDr.シュナイダーという医学教授が出て来る。


“Are you Miss, Yui Tachibana she is looking for Mao「君が麻王を探しているユイなのか。」?”


シュナイダー博士の英語に結衣は、

「あ~もっと単語で話して~!Yes,yes,I am Yui,Mao,Yes,yes!」



突然、シュナイダー博士は、

「OKOK、…初めましてお嬢さん、私はクルト・F・シュナイダー。皆からDr.シュナイダーと呼ばれているよ。」


「……日本語ペラペラ…しかもちょっとかわいい…」


「今も一週間に一度は神薙総合病院に行っているよ。」


「あ、……申し遅れました、橘結衣と申します。」


「マオを探している日本人の女の子がいると聞いてね。残念ながらマオとは会えないよ。」


「……なぜ、ですか?」


「国家機密だからね。そうそう、合言葉は?」


「……合言葉…ですか?」

「代わりにマオと身近な関係と証明できるモノがあります?」


「……麻王先輩からのプレゼントのパターもないし……合言葉で!」


“Go ahead,please. ではどうぞ”


「アヘッド?……イヤイヤ、今は合言葉、合言葉……もう、こんな時間ないのに~!」


Dr.シュナイダーは自身の携帯を取ると、

“………Yeah,Manabu?you know who Yui Tachibana is?………ya,his brother?oh,yes,I know who he is………ありがとう、さようなら”


「……あの。」


「OK that’s allright. 分かりました。学生手帳は、ユイ?」



「…生徒手帳ですか?…日本に帰れば……すみません、忘れました…」


「フゥー、やれやれよ…モバイルフォンを貸しなさい。」


「……スマートフォンですか?待ってくださいね?…………はい、これです!」


結衣のスマホを操作するとシュナイダー博士は、

「……OK、いいでしょう。行きますか?」


「はい!」


「なぜ私を信頼しました?」


「身なりとそのIDです!」


Dr.シュナイダーはポケットから見えている他人のIDを取り出すと、

「ニセモノですけど?ひっかかったよ!日本人、チョロキューね!」


「えぇぇぇぇぇ~!」


シュナイダー博士は結衣をNYのケネディ空港まで案内した。


二時間半後に着陸型自家用ジェット機はタンカー並みの大型船に着陸する。



Dr.シュナイダーは“ここから先の事は絶対に内緒だ”と結衣に言うと船内は船室と言うよりは病室に近い所に結衣を案内する。



ガラス越しに麻王は他の医師たちと共に結衣が見た事もない医療器具で手術をしている。



結衣の隣に立つシュナイダー博士は、

「今、彼が執刀している患者は上院議員だよ。彼がボストンに来て既に384名の患者の手術を終えている。」


ガラス越しから見える麻王の姿に結衣は、

「………………。」



アメリカの医師国家資格を持っていない者が手術をできるのかと結衣が問うと、一生動けない者や苦痛を味わった後に確実な死が待っている者にそんな法が何の意味があるのか?


それは医師の資格を乱用する者の為の法律だとDr.シュナイダーが自身の考えを述べる。



「マオのオペがなければ今オペ中の彼は一週間以内に確実に死ぬ。それに周りのスタッフのやる気を見たまえ。マオは自身の腕だけでなくスタッフ一同全ての力を借りる。」


「医療従事者である事にプライドを持つ者ならこれ以上の臨床経験と感動はないよ。」


麻王が手術を終える。ガラス越しの結衣からも患者は安らかに寝て心電図も安定しているのが判る。



結衣は、

「法の定義ってそれを乱用する者のためにある…え、犯罪者を捕まえる為じゃなく?難しいよ~!………でも患者さんの寝顔が全てを物語っている……よ。」


麻王がオペ室から出て来るとそのまま歩いて行く。



一人何処かに歩いて行く麻王の姿に結衣は、

「……麻王先輩…」


「ユイ、マオはいつも術後に甲板にいるよ。」


Dr.シュナイダーはガンバって来いよと結衣の背中を叩く。




大型船

結衣はかなり緊張気味に甲板でたたずむ麻王に声を掛ける。


「ま、麻王先輩。」


麻王は振り返らず、

「結衣か。」


「……わかりました…?」


「一人で来たのか?」


「……はい。なぜ一人と?」


「そう言う別れ方をしただろ?」


「……すみません…勝手に来ちゃって…」


麻王は振り返ると、

「そんな訳ないだろ?」


結衣は麻王の言葉を聞くと安心して涙が溢れる。


「……最後の話も聞かずに……本当に後悔して。」


麻王は手を差し出すと、

「ほら、こっちに来い。」


「……麻王先輩…」



結衣は泣きながら麻王に会えなかった時の話をする。


「……結衣がボストンに来た事はすぐに連絡が来て判ったよ。だから大学や病院のスタッフは結衣が止まるホテルを紹介してくれただろ。ボディーガードも交代で常時四人ついてもらっていたよ。」


「……何で?」


「なぜ、すぐに会わなかったのかということか?」


「…………。」


「さっきの手術は30年先の医学でな。」


「……30年も先の…」


「正しくトップシークレット、苦戦したよ。」


「…………。」


「二ヶ月で384、一ヶ月に190以上のオペ。中々、ハードでな。」


「……こんなにいつも守ってもらっているのに…私って本当に面倒で馬鹿な女だ…麻王先輩を困らせてばかりで…そんなバカな私に比べ、麻王先輩はやっぱりすごい…」


「そうか?」


「えっ?」


「人には二種類いる。自らの愚かさを悔やみ這い上がる者と自らを死地に追い込ませ逝く者と…」


麻王の言葉にただただ聞き役になる結衣は、

「……お兄ちゃんには前者になって欲しいな…」


麻王は甲板越しに遠くを見ると、

「碧や芯、優也、ハルト、駿、周そして青空……あいつらが友であることを誇りに思っているよ。」


麻王の言葉に結衣は何故か涙が止まらない。


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