文化祭の意味①
●文化祭の意味① 51話●
高等部二大イベントの1つ白桜文化祭が二学期中間考査後に行われる。
中等部からの1500人も加わって各種模擬店が出展される。
外部から家族関係以外も含めて五万人以上が来る一大イベント。
今年は甲子園での白桜野球部の活躍もあり例年の三倍以上が予想されている。
クラスで模擬店をしようが個人で何をしようが10万以上の売り上げがあれば問題ない。
参加しない事も自由だが10万以上の売り上げがなければ、必ず10万円分の奉仕活動を一ヶ月以上学校内でしないといけないのでほぼ全員が参加する。
赤字のグループは一年間学校外の奉仕活動。
トップ3までの売り上げに入った者には留学や大学進学時の支援金等が支援される。
白桜高校
生徒会室
生徒会長席の青空は、
「これが終わったら行くの、麻王?」
ソファでラップトップを打っている麻王は、
「……行くよ。」
「そっか……じゃあ、後片付けをしていかないとね。」
白桜高校 図書室
東中の頃から仲の良かった心海と弓が白桜中等部からやって来る。
図書室にいる麻王を見つけると心海は、
「麻王兄~、一緒に何かしようよ。」
ラップトップを打っている麻王は、
「466位の心海さんと510位の弓さんは勉強してなさい。」
麻王は歯牙にもかけない。
続けて図書室にいる麻王を見つけた香織と結衣は、
「あ、あの中等部一位と二位の私と結衣なら一緒に参加してもよろしいでしょうか。」
香織と結衣が麻王に声を掛ける。
素っ気なく麻王は、
「料理店をしようかと考えているんだけど、お前らってフランス料理食べるだけだろ。いいや。」
麻王は素っ気なく断る。
最近の麻王は、何故かかなり厳しく接して来る。
結衣と香織が粘って申し出る、
「麻王先輩、飲食店を出店するなら厳しい審査と申請が必要になると思いますが私たちならお役に立てると思います。」
ようやく手を止めると麻王は、
「父親か?警察が許可するのは風営法などだろ?食品衛生責任者、防火管理者と各役所の申請は済んでいるよ。」
香織は、
「……そうだったんですか…」
結衣は、
「香織!」
心海は、
「麻王兄、中等部三年466/522だよ!500番台から脱出できたんだよ!」
麻王は、
「弓、転入試験で青空に愛枝たちには負けないと約束したんじゃないのか?」
弓は、
「ハハ、ま、ぶっちゃけ、入ってしまえばこっちの勝ちかな?って…」
結衣は、
「白桜において生徒会長の権限は絶対的なものなんだよ。」
心海は、
「そうそう、その口頭での約束も面接の一つと言われれば即退学だよ、弓。」
麻王は、
「……四人とも可愛いしな、うーん、メイド喫茶って儲かるのものなのか?」
心折れた心海と弓、香織が笑顔で麻王に駆け寄る。
結衣は、
「元々、麻王先輩は何をするつもりだったのですか?」
「……そうだな、三日間で保護者関係だけで1万人以上…行列ができそうなラーメン屋もいいんだけど待つ人が多く出るのは心苦しいな…。」
心海、弓、香織は、
「麻王兄(先輩)もノープランじゃん!」
結衣は、
「食品衛生責任者と防火管理者は立派な資格ですよ。各役所の申請を済ませているのにノープランの筈がないでしょ。今回の文化祭前に赤瀬先輩も温室育ちを注意されたと落ち込んでいました。私たちが…。」
結衣が三人に注意を続けていると、
「結衣以外来なくていいや。知恵なき者、知恵出さざる者は去れ。」
麻王は結衣だけを連れて生徒会に申請に行こうとすると、心海、弓、香織は追いかけて来ない。
廊下を曲がると麻王はため息交じりに、
「ふー、もう少しガッツがあると思ったんだけどな…結衣、あいつらを助けに行ってもいいよ?」
「いいえ、時に突き放すのも友人かなって思います。間違えていますか?」
「間違えてないよ。もうスポーツ科クラスには誰もいないし行くか?」
もじもじと結衣は、
「……麻王先輩、私も高等部に来たらスポーツ科クラスに行きます…」
「そう遠くないいつか、結衣も高等部二年や三年になっているんだよな…」
「……先輩?」
廊下を結衣と歩きながら窓の外の白桜グラウンドを見る麻王は、
「高等部二年生になった結衣は今の俺より年上だろ。二年生になった橘結衣は一年生から見たら大人な頼りがいのある女性なんだろうなって。」
「先輩みたいな頼りがいのある二年生に慣れてるかな?……でも、そう考えると不思議ですよね。」
高等部一年生スポーツ科クラス
誰もいない教室を見渡す結衣は、
「……それにしてもホントに教室に誰もいませんね?」
麻王の席に結衣と向かい合わせに座っている麻王は、
「今頃、碧たちもみんなグループを組んで自宅会議じゃないかな。……そう言えば、結衣は父親の仕事の手伝いをしているって言っていたよな。どんな事でも頑張れるか?」
「もちろん、どんな事でもします! 麻王先輩、父は厳しくて、私、フランス料理なんて食べたことないですよ。」
「あれは言葉の文だよ。お前たちにはつまらない人間になって欲しくなくてな。」
結衣は、
「やっぱりそうだと思いました……麻王先輩の気持ちを理解しなかった香織たちは心折れましたがね…」
「いつかは一人でやって行かないといけないしな。」
「……こんな時に不謹慎ですが…好きです、麻王先輩!」
麻王は、
「俺も結衣は好きだよ。」
上目づかいの結衣は、
「……友達とか後輩としてじゃなくて?」
「そうだよ。」
「……じ、じゃあ、愛枝さんとかはどうするんです…か?」
「キスの一つもないのに結婚の話か?」
「やっぱりないんですね!?…あ、いえ、…私たちはまだ中学生と高校生ですよね…それでも…結婚なら?」
「結衣は、一生涯を共にする人をそんな簡単に決めれるのか?」
「ま、まぁ、そうなんですが、私は先輩でいいかなって…」
「価値観、性格の相性、相手の親との相性、営みの相性、etc.etc…人はそんなに簡単じゃないが、やっぱり幼なじみは大きいと思うよ。」
「……幼なじみですか?」
「ああ、学生時代から一緒にいる異性なら気心も知れているし、意見が合わない時も許せることが多いんじゃないか。」
「……考えているんですね?」
「考えるよ。その夫婦の下に産まれてくる子どもが不幸だからな。」
「……そうですよね。」
「結衣と特別仲のいい異性の友人たちがいてその中の一人しか選べないならどうだ?」
「……麻王先輩と同じ考えかと…」
「一人を選んで、その後に残りの人たちも幸せになれるならいいんじゃないか。」
「で、でも、そんな未来のことなんて言ってたらキリがないですよぉ…」
「俺には視えるとしたら?」
結衣が誘拐された時、確かに無数の発砲音が結衣には聞こえた。だが警察官僚の父、橘は”お前には関係ない”の一言でその話は終わった。
だが、それなら結衣を救いに来てくれた麻王は何故無事なのか?
脳裏にその疑問と忌まわしき過去が浮かんだ結衣は、
「………わ、私…」
「冗談だよ。」
「………で、ですよね!……ハハ…ハハハ…」




