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誤解と温かさ

●誤解と温かさ 49話●


生徒会室


珍しく興奮気味に青空は、

「彼女はすごいね!あれだけ学校に来てなかったのに本試験と同等レベルの追試で972だよ。生徒会に入れたいな。麻王?」


麻王はため息交じりに、

「本人に聞いてくださいな。」


そう言うと麻王は生徒会室から出て行く。



文音は、”次の選挙で生徒会に入る”と青空に言うとバスケ部のマネジャーになりたいと言う。青空は断る理由もないし、”いいよ”と回答する。



麻王は自転車置き場で竜王号を整備している。




文音は、

「麻王!今日はバイクじゃないんだ。」


「ふだん、バイクは乗らないし学校は自転車のみだよ。文音は迎えの車が来るだろ?」


「……麻王と暮らしたいって言ったらお姉ちゃんに泣かれたもんね。」


「どっちの涙かな?」


「え?何、それ?」


「さあ?」


「もう!麻王は家庭教師してくれるんでしょ。今から参考書を買いに行こうよ。」


「分かったよ。自転車で後から追いかけるよ。」


文音は麻王の自転車の後ろに乗ろうとすると、



自転車を押す麻王は、

「お嬢様っという生きものはトラブルを好むのか?」


「なによ、それ?」


「押して行くか…」


「無視するなぁ~!」




「参考書は私の今のレベルよりワンランク上でいいよ。」文音はクスっと笑う。



そして新宿西口

全十階の本屋に着く。麻王は二階で経済誌を見ている。文音は三階の参考書に行く。


揉めている声が聞こえると二階にいた麻王は三階に走る。


本屋の店員と文音が揉めて大勢の人が集まって来る。



文音は、

「私たちは白桜高校の生徒ですが何か!?」


「……ふん、金持ち学校のお嬢様の娯楽か…遊びで万引きしたんだろ?」


三階の監視カメラを見ると麻王は、

「カメラの死角か…。」


そうつぶやくと麻王は書店員と口論している文音の前に行く。


「彼女は白桜高等部の生徒副会長兼風紀委員ですが?」


麻王は文音の胸ポケットから学生手帳を取り出すと店員に渡す。


手帳を取ると書店員は、

「小賢しい噓を…………ウソ?」


麻王は、

「どうです?」


書店員は、

「………………。」


麻王の言葉に周りの空気が麻王たちに流れる。



書店員に対しての空気が悪くなると書店員はキレだすと、

「だから金持ち学校のボンボンお嬢様の気まぐれだろ!」


麻王はため息交じりに、

「そうですか…じゃあ先ず証拠を見せて下さい。今、原告の立場にいる貴方は証拠を提示する側にいる。」


「次に万引きの定義は代金を支払わないままこのビルの敷地から出た瞬間に生じますが、彼女はまだこの三階のこのブックストアさえ出てませんよ?」


「それに貴方は今、金持ち学校と言いましたね?立派な名誉棄損です。彼女は将来、睦月財閥を引き継ぐ女性なので覚悟はおありですね。」


麻王が詰め寄り書店員が困惑すると店長が走ってくる。



5分後

店長は、

「生徒手帳を確認させて頂きましたが事実のようですね。白桜の生徒会副会長様に本当に申し訳ありませんでした。」


麻王は、

「ようではなくそうです。ただあくまでも我々は他校の生徒と変わらない一高校生ですよ。」


店長は、

「……すみません、騒ぎがひどくなり、後日、必ずお詫びに行くので一先ずお引き取り願えますか?」


「もういいよ、麻王?」



文音と麻王が本屋の玄関を出ると書店員が大型のハサミを持って追いかけて来る。書店員のハサミが麻王の右手に切りかかると同時にハサミの先端が麻王の右手を貫く。


麻王は左手の手刀で書店員を気絶させると追いかけて来た店長が頭を抱える。


右手の出血部位を押さえると麻王は、

「周りにまだ人はそれほどいないのでその書店員を連れて行って下さい。」


店長は、

「で、ですが…」


「私は知り合いの医師が近くにいるので。こんな事で全員の人生が狂うのはおかしいと思いませんか?まあ、青臭いガキの戯言ですが。」


麻王は笑顔で話す。





神薙総合病院

外科応急処置室から麻王が出てくると麻王はそのまま長椅子に座る。


麻王の隣に座ると心配そうに文音は、

「……麻王、強いのに……なのに何で刺されたの?」


長椅子後ろの壁に凭れ、深呼吸をする麻王は、

「……文音、お前、過去に捕まっただろ?」


「……お姉ちゃんが言ったの?」


「違うよ。お前のあの怯える目を見てな。」


「ち、違うの、聞いて、麻王!」


蒼白な顔をした文音のアタマを麻王は左手で撫でると、

「あのグループか別のグループに無理矢理やらされたんだろ。」


「……な、なんで…」


「人の表情や目に噓は表れる。睦月家で辛い想いをして来た文音なら分かるだろ?」


「……じゃあ、何でわざと刺されたの?」


「人の心の傷は簡単に癒えない……人は辛い記憶が多くなると心が折れない様に次第に心そのものが曲がって行く…」


「……私は麻王みたいに自身の心を言語化して来なかったから…そういう話は難しいんだ…」


「例えば、タトゥーを入れる人の傾向に幼少期に虐待や虐めにあった人が多い。わかるか?」


「……うん、最初は純粋な心の持ち主だったけど、外的、精神的に自己防衛と自己正当化をするために刺青とかその人自身の心が過剰に過敏になるとか?」


麻王は、

「そんなに難しくないよ。本来なら傷害事件になる所を俺が引けば、先方はもう今後一切文音にイチャモンはつけられない。」



文音は麻王の胸で泣き続けと、

「分かるよ。分かり過ぎるよ!……でも何で麻王が…?」


目を閉じると麻王は、

「大切な誰かを守りたいことにそんな理由は必要ないだろ?」


文音は激しく泣き続けると、

「……許せないよ………あの店員もアイツらも!」


「……劣等感と妬みだよ。」


「…え?」


「あの書店員もアイツら五人も……それ以前に文音に嫌な思いさせたヤツらも文音に対する劣等感と妬みだよ。」


「……私に…?」


「美人で頭もいい、家も金持ち……心貧しき、アイツらには持つ文音は眩し過ぎるんだよ。」


「……でも、店員は男だったよ…」


「文音みたいないい女と付き合えないってとこだろ?」


「……聞いてもいい?……麻王は?」


「俺?………今は妹たちや他の五人にファイナンスの300人を幸せにするので精一杯だよ。」


「……だよね。」


麻王はクスッと笑うと、

「少しは否定しろよ。」


「……ふ、ふん、私と一緒にいれるだけ麻王は幸せなんだからね?」


「ツンって何がいいんだ?わかんねー。」


「ツンじゃないし、私といて、麻王も幸せでしょ!?」


「脳が壊れる…ああ、せっかくだからこの機会に文音は精神科を受診して来い。」


「こら~!」




神薙総合医大一階ロビー 出入口


二人で病院を出ると麻王は自転車を取りに行くと、

「家庭教師遅れるだろ? 早く行くぞ。」


麻王は自転車の後ろに自身のカバンを乗せて笑顔でパンと叩く。


「うん!」


「しっかり掴まれよ。超飛ばすからな。」


トロトロと走る竜王号に文音はクスクス笑いながら、

「……麻王ってバカだよねー。」


笑みを浮かべると文音は麻王をしっかりと強く抱きしめる。



キコキコと自転車を漕ぐ前の麻王に文音は、

「……私の学生手帳にいつ生徒会のバッジと署名捺印をしたの?」


「将来、手品師を目指しているからな。」


「ふつうマジシャンでしょ。それと…わ、私の心を救ってくれてありがとう、麻王。」


文音は目を閉じたまま麻王に聞こえるように大きな声で叫ぶ。


「風で聞こえないって。」


麻王が正面を見つめながらキコキコと自転車を漕ぎながら話す。


「こんなに遅いんだから聞こえているでしょ!」


笑いながら麻王は、

「ハハッ、明日から生徒会副会長と風紀委員よろしくな!」



「もう絶対に私に押し付けようとしたでしょ~!それに学生手帳を取り出す時に私の胸を触ったよね?」


「文音、今、自身のバストサイズを思い浮かべてみろ。」


「何、それ?」


「いいから。」


目を閉じると文音は、

「…………いいよ、今、想像した…いくつ…?」


「周りには86と言っているけど本当は80だろ?」


「……絶対に私自身しか知らないのに……ねぇ、何で?…ホントになんでわかったの?…ねぇ?……えぇぇぇぇぇ~麻王ってホントはエスパー!?」


「手品師を目指しているからな。」


可笑しくて仕方がない文音はクスクスと、

「わざとエスパーって聞いてるのに、何で古典的な手品師っていうのよ~!?」


17年間で私が最も安心できて楽しい時間。それが麻王と一緒にいるこの瞬間。今、私は心から笑えている。”本当にありがとう、麻王”。

身長165の私と私の心に目線を合わせてくれて、対話をしてくれる彼、それが麻王…。

……この温かさを失いたくないから私はもう後ろを向かない……ありがとう、麻王…


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