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一条文音➁ ワンパン ワンパン!

●一条文音➁ 48話●


歌舞伎町

田中がバイクを持って来る。


麻王は、

「二度とあんな世界に戻らないと、姉でも誰でもなく俺に誓え。そしてどんな事でも悩まず俺に相談しろ。俺が絶対に守ってやる。約束できるか?」


文音は悔し涙を流すと涙声で、

「利用されているのはわかっていた……でも、それでも…もう二度とあんな世界に戻りたくない…。……約束してくれるの、本当に……?」



文音は座り込んだまま涙を流す。文音は震えながら小指を出すと麻王は文音に微笑んで小指を結ぶ…。



麻王は座り込んだ文音のスカートに上着をかけると、

「田中専務、文音にこのままスーツを用意してもらえないかな?今からアメリカに交渉に行くから秘書として一緒に連れて行くよ。」


田中は、

「へい!」


麻王は、

「標準語。」


「はい、只今!おーい、キヌ子―!」


田中はコーディネーターを勉強している部下を呼んでくると文音をアパレルショップに連れて行く。


麻王は携帯を取り出すと弥生に連絡している。



田中は涙声で心配そうに、

「社長~、アメリカでも無茶しないで下さいよ~。」


「田中専務がそれ言う?」


麻王の言葉にヤクザや半グレ風の100人以上が爆笑すると麻王は、

「もうお前たちは社会の爪弾き者でも反社会的勢力でもない。自覚して行動しろよ。」


田中は鼻水を垂らしながら、

「ぅぅぅ……社長一人に全員殺され掛けて今度は病院で助けてもらい………看病までしてもらっ………すみません、バカで上手く言えなくて…ぅぅぅ…」


麻王は、

「…悲しいがいつか成長し巣立っていく者もいるんだろうな。でも、それでも仲間として家族として長く一緒にいたいな。」


田中は、

「……社長。」


元ドラゴンヘッドの輩たちは、

「俺たちは一生社長について行きますよ!」


「おうよ!俺たちは家族だかんな!」


元ドラゴンヘッドのレディースの一人は、

「社長のファイナンスはお給料もいいしね!……え?何?キャッー!!! ごめんなさい~キャッー!!!」


クスッと笑うと麻王は、

「後で俺のソフト会社の方に一旦お金が振り込まれるから半分は俺たちの金融会社に。残り半分は全員のボーナスに。無駄遣いをしたヤツは即クビな。ま、それでもしたければ専務に申請書を渡すように。任せるからな、猛。」


田中は、

「へい!いえいえ、お任せください!」



もちろん彼ら彼女たちはエルシオンの歴戦の英雄マオ・レューゼを知らない。でも麻王の悲しき瞳の中の彼の優しさに触れる時、その無邪気な彼の笑顔に触れる時に彼ら彼女らは痺れる。心も身体も痺れる。


”任せるからな、猛”の一言に田中の漢涙が止まらない。




身支度をした文音がバイクに乗ると麻王も二人分のスーツをバイクのボックスに詰める。

「成田まで行くからしっかり持っておけよ。」


文音はヘルメットを持つと、

「うん!……このヘルメットのマイクは?」


ヤンキー風のロングヘア、ボディコンセーター姿の女は、

「それはね、お嬢さん!」


文音は、

「キャッー殴らないでー!」


女は、

「それはね、ヘッドマイク。」


文音は、

「………し、知ってます……よ?」


女は、

「バイクを正しく手足の様に自由自在に操る社長にだけ許されている優れもの。」


文音は、

「……貴女は?」


女は、

「昔、聖林館で男を取られてイジメ、ううん、暴行され中退した元半端な陰キャ……ま、今は空手三段だけどね。」


「空手三段……聖林って超進学校の?」


「うん、今は中卒だけどね……社長と離れるのは嫌だけどいつか大検取って、絶対に東大の文一に行く!社長に”ウジウジと過去に囚われずサイコーにいい女弁護士になって世間を見返してやれ”ってね!」


女の活きた瞳に文音は、

「………う、うん…名前は?」


「理論の子と書いて、理子。カタカナのリコでいいよ、文音!」


「私も負けないから頑張って、リコ!」


バイクから後部シートに(またが)っている文音を見ると麻王は、

「リコ、ありがとう。行くぞ、文音?」


強く麻王を抱きしめると文音は、

「うん!」


白い煙が上がるとアクセルターンで一瞬に遠くなる。





文音はバイクの後部座席で、

「……あの人たちって?」


文音を乗せ、軽いフットワークで走る麻王は、

「俺の金融会社の社員であり、俺と友人が作った学校の生徒。」


「夏葉…麻王?何者なの?」


「ん?一条文音秘書の社長だけど。」


麻王の言葉に文音は初めて笑う。


バイクは首都高に入る。


「そんな事よりしっかりつかまれよ。」


首都高をオーバー180km/hで楽々と走る麻王に後部シートの文音は、

「ええぇぇ~高速道路に入ったらめちゃ飛ばすんですけど~?落ちるよ~!キャッー!!!キャッー!!!!」





そして中間考査から二日後の朝。麻王と文音が登校する。


白桜ブレザー姿の文音はポツリと、

「中間考査終わったんだ…。」


同じく白桜ブレザー姿の麻王は、

「昨日は学校休みだったから今日は朝の全校集会の後に授業がある。その後に文音の追試があるけどな。教室に行きにくいならいっそのこと全校集会で話すか?俺がサポートするけど?」


文音はニコリと笑うと、

「……ううん、自分で話す。それにアメリカはやっぱり凄かったね!もう逃げないって決めたから。ね、ファイナンスの社長?」


総合体育館に入る麻王は淡々と、

「自転車操業の燃え盛るかちかち山だけどな。ああ、これからは気軽に麻王でいいよ。」


クスッと文音は、

「麻王刑事に比べたらもう怖いものなんてないよ~!」



彼女は1500人の前で堂々と話す。生徒たちもその堂々とした振る舞いに拍手を送る。壇上から堂々と降りてくる文音。


壇上の下にいる副会長になった麻王は腕時計を見ると全生徒に、

「理事長の話は無意味に長いのでカットします。次は下田先生から今後の予定を。」


少し驚いた表情で文音は、

「……麻王は一年で副会長なんだ。」


「使いパシリだけどな。」



一年生スポーツ科クラス列に立つ愛枝は、

「……イチャイチャして…誰よ、あの女!」


ニコッと愛は、

「きっと困っていたんだと思うよ。」






放課後

麻王は右バッターボックスでフリーバッティングをしている。


文音が後ろのベンチで観ている。

「あのピッチングマシーンの信じられない球速で気持ちいいくらいよく飛ぶね?」


そう言う文音は、静かに麻王のバッティングを見ている。


麻王は撃ち続けながら、

「アメリカでも文音の流暢な英語に驚いたけど追試も全科目合格に驚いたよ。」

「…………うん、元々、勉強は嫌いじゃないんだ……。」


麻王は文音の下に歩いて行きリングを渡すと、

「仮にだけど文音に何かあったらそのリングが俺に知らせてくれるよ。信じるか?」


「当然!」


文音は笑顔で左手の薬指にはめる。


「……麻王は好きな女性がいるの?」


ピッチングマシンを止めに行く麻王は、

「五人は守りたいと思っているよ。」


麻王の後をついていく文音は、

「…………五人?…………そ、そこに私も入れる?」


文音は自身が涙を流しながら話している事に気付く。



「文音はもう不幸な未来じゃないだろ?」


そう言うと麻王は歩いて行く。


「えっ……え?」


麻王は立ち止まり振り返ると、

「全校集会の時の弥生を見たか?」


「え、……そんな余裕は全然なかったよ……それより私が妾の子だからダメ?」


「何でも妾の子を理由にして逃げるなよ。」


「ひどいよ…」


ピッチングマシンの油圧を調節しながら麻王は、

「それだけの容姿と頭脳、運動神経を持って何が不満なんだ?世の女性にボコボコにされるぞ。」


クスッと文音は、

「麻王って変わってるね。麻王のご両親はどんな人なの?」


「親の顔なんて知らないよ。」


「……えっ…?……麻王って孤児院なの?」


「違うよ。4歳の時に心海を託された。美緒は、11の時だな。そうやって妹二人と一緒に暮らして来た。」


「……えっ…?えっ…どういう…」


「文音。」


「は、はい。」


「幸か不幸かは自分自身の中でその基準を持ってない者だよ。わかるか?」


「……何となく……じゃあ、麻王は?」


「俺は心海や美緒、そして兄さんと出逢って幸運過ぎるよ。そしてその出逢いの中に文音、おまえもいる。」


涙声の文音は、

「……もう、麻王って何なの?年下のクセにムカつく!」


「あんなクソショボい五人に(たか)られているようじゃあまだまだだけどな。」


「今ならあんなヤツらワンパンで沈めてやる!ワンパン、ワンパン!」


「ハァ~。」


「タメ息つくな~!」

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