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愛枝へのプレゼントの意味 とその名はマスター

●ゴルフ勝負、そしてプレゼントの意味 42話● 


観衆の反応とは逆に麻王はクラブを持ったままフロントに向かって歩いて行く。

愛枝が追いかけて来る。


オールバック、細身の黒スーツ姿のマスターが奥から箱を持って来て麻王に渡す。


「ありがとう、マスター。 苦手だったパターも上手くなったな、愛枝。」


麻王は愛枝に長い箱を渡す。



愛枝が箱を開けると愛枝が以前から欲しがっていたパターが入っている。麻王に毎月払っていた金額よりもずっと高価なパター。


「少しクセが強いけど、練習した分、使い主に応えてくれる。努力家の愛枝に理想のパターだよ。」


パターを手に取る愛枝は、

「………………。」


愛枝は言葉が出ない、その代わりに涙が溢れでる。



「俺が朝夕の新聞配達に日々追われている時に愛枝が手を差し伸べてくれた。だから今、俺はここにいる。感謝しているよ、愛枝。」



溢れる涙を拭うと愛枝は、

「……ホントに…義理堅いね、麻王…は…ありがとう!すっごいゴルファーになるからね!」


結衣と香織も走って来ると、


麻王は、

「ああ。マスター、先ほどの結衣と香織のプレーを見て二人には理想のアイアンをお願いできます?」


マスターは、

「ううんもう~!麻王ちゃんからのプレゼントなら私が欲しい~!」


愛枝は、

「………………。」


麻王が結衣と香織にアイアンをプレゼントしようとした時、


橘と名古屋が歩いて来る、


橘は、

「いや~負けたという言うか、あんな神業を見せられたらもう得した気分しかないよ。」


名古屋は、

「そうそう夏葉君、最初から勝つ自信あったでしょう?」


結衣と香織は、

「え?」


何度も涙を拭うと愛枝は、

「……誰が失敗しようが麻王ならそこからホールインワンを狙って来るでしょう?」


橘は、

「……少し違うな。あれだけの技術を持つ夏葉君がアドレスに入っても微動だにせず静止していた。風が止むのを待っていたんだろ?」


少し笑うと麻王は、

「どうでしょうね?」


名古屋は、

「えぇぇぇぇぇ~!教えてよ~!」


「当たっていたら答えるつもりでしたけどね。」


名古屋は、

「ええぇぇ~知りたいんですけど~!絶対に絶対に知りたい~!」


愛枝、結衣、香織は、

「…………。」


「夏葉君、プレーに負けたからその費用は私たちが持つよ。」


橘と名古屋が完敗だという感じで申し出る。



「私たちが勝った時の約束はしていないですよ。それに大切なものは自分の汗水を流したものでないとね。」


今度は麻王は爽やかに笑う。



面識はあるが橘と名古屋がイメージする麻王はもっと威圧感の強い男という感覚だったが”理想の高校生”という感覚に橘は思わず笑みを浮かべる。



「結衣と香織には今日ここに来てからマスターに観てもらっていてね。今日のプレゼントのお礼に二人に合ったアイアンを…」


麻王が話している途中で香織が、

「………麻王先輩、凄すぎ…もうプレゼントなんかもらえないかも知れないから……一生使えるドライバーがいいです、店長!」



マスターは、

「マスターと呼びな、小娘!ま、乙女心としてはそう言うかなと思って、五年先に成長が止まった時にバッチリ使えるようになるドライバーよ。」



結衣は、

「……わ、私も赤瀬先輩と同じパターがいいな。」

愛枝は、

「絶~対にダーメ、それにそもそももうこの型番ないしね。」


麻王は振り返ると、

「マスター。」


マスターはカウンター下を探すと、

「あいよ、麻王ちゃん!………えっと…はい、ブービーパター、使い易いわよ♡」


ヘッドに安定感を持たせるために非常に大きなヘッドのブービーパターを持つ結衣は、

「………ブービーパター……ヘッドが逆三角形の何か嫌な名前ですね?」


「何言ってんの、小娘!文句言うなら返しな!」


結衣と香織は、

「……乙女だ…」


麻王は、

「本当に使いやすいよ。」


「はい!」



橘は、

「夏葉君、あらためて娘や息子の件では君に何度お世話になったね……君には本当に感謝の言葉もない。これは私個人の頼みなんだが私のレッスンプロになってもらえないかな?」


名古屋は、

「橘先輩ズルいですよ。それ僕の台詞ですからね。」


香織の父もこれまでの息子娘のお礼とレッスンプロをしてほしいと麻王に頼む。



「分かりました。マスターと交渉してください。でも僕は高いですよ?」


麻王は軽く会釈をし、”失礼します”と言うと帰って行く。


悠々と去って行く麻王を見ながら橘と名古屋は、

「……愛枝君、……夏葉君のレッスンプロってそんなに高いの…?」


二人は緊張して聞く。


「あの神業見たでしょ?気に入った人にしか絶対教えないのである意味、超スペシャルですよ。麻王の生徒は私と、今日は来ていないおじいちゃんだけですよ。じゃあね、先生!」


愛枝は麻王を追いかけて走って行く。



マスターは、

「橘さん、名古屋さん、麻王君は知らないけどそのおじいちゃんは…。」


マスターは小さな声で橘と名古屋に話すと二人は、

「…えっ……えーッ!?」


「……こほん。それはそれとして、せめて彼が娘たちに買ってくれたプレゼントは私が払うよ。」


橘が申し出ると、


名古屋は、

「そのセリフは僕のですよ!」


「お前、ボキャブラリー少ないって!さっきからその台詞ばっかりだろうが!」


マスターは、

「先生方、麻王君はそういうの一番嫌うから。勝負に勝った時を言及しなかったでしょう?もう二人とも野暮なんだから。それに彼には乙女として嫌われたくないから受け取らないわよ。先生たちもカッコイイ大人になったら?」


マスターは奥に行ってしまう。



麻王が使った安物のパターを見る橘は、

「……やっぱりヘッドの重心がアンバランスだよな…このパターの角で…正しく弘法筆を選ばず…を目の前で初めて見たよ…彼の生徒からスタートしようか、名古屋。」


橘と名古屋は感動を越えてまだ痺れている。



小声で香織は、

「……赤瀬先輩と帰っちゃったよ…レストランで”もう俺の女”って言葉は?」


ニコニコしている結衣は、

「香織の質問に”愚か者は嫌い”って麻王先輩は言ってたでしょう?最初から麻王先輩を下に見ていたお父さんたちもやり返された。」


「つまりは、20歳までキス禁止も却下ってこと?」


名古屋は、

「キスとはなんだ~!」


「キャッー!!!!!!」



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