噂を流したヤツ 青空のLR参加
●誰か一人を選ぶとしたら 37話●
六限目
白桜高校 一年生スポーツ科クラス
六限目の体育の時間、愛に基本中の基本のレイアップを教えている麻王の下にハルトが走って来ると、
「最近、姉貴と仲いいな、麻王?」
ハルトが茶化す。
麻王は「そうか?」といつもと変わらない。
体育の斉藤先生が腹痛でトイレに行ってしまい六限目は自習時間。
愛は黒髪ロングの髪をまとめていたゴムを取ると、
体育館端にいる女子グループの下に座る愛に好子は、
「……最近、夏葉君と仲いいね、愛?」
「えっ…夏葉君は優しいから…でも、うん…一緒にいるだけで幸せ…」
好子の左隣にいる愛枝はムスッと、
「………………。」
クラス委員の成美は、
「愛枝も柔らかくなったね!」
好子は、
「そうそう、情熱甲子園で白桜野球部、美人マネージャー赤瀬愛枝さんってクローズアップされてね!全国の男性から注目されて、もう愛枝もタレントさんだよね!」
愛枝は、
「ま、まぁ、当然?」
成美は、
「夏葉君といると不幸になるとかだっけ?……誰があんなひどい噂を流したんだろ?」
愛は、
「……やっぱり麻王君はすごく優しいよ。この前はお父さんと一緒に食事したし…」
好子と成美は、
「キャッー!!! 麻王君だって!お父さんに挨拶とか?もうラブラブじゃん、愛!」
愛枝は、
「………………。」
体操着姿の青空は、
「麻王、スリーポイントシュートで勝負しない?」
青空が声を掛ける。
芯、優也、ハルト、駿は、
「オイオイ、10球なら麻王と青空に二人に勝てるんじゃないか?」
芯や優也、新しくバスケ部の練習にも参加しだしたハルトや駿にスポーツ科クラスのクラスメイトも加わる。
芯が9/10球まで粘るが最後に脱落すると青空と麻王はスリーポイントラインから下がり始めながら続けて打ち続けてもボールはゴールリンクにスッと入り続ける。
バスケラインのセンターラインにまで下がっても青空と麻王の二人はシュートを入れ続ける。
スポーツ科クラス全体が青空と麻王の競争に盛り上がる。
水戸は、
「麻王ってふつうに男子のおれたちが見てもかっこいいよな~。何で人気ないんだ?」
水戸の言葉に優也がアタマをはたく。
芯は腕を組みながらつぶやく、
「もう高等部はほぼ全員知っているからはたく意味ないんじゃないか、優也。しかしそんなクソな噂を流したヤツは誰だろうな…。絶対許さねえ…」
麻王がコート20M後方反対側のサイドライン近くまで走りそのまま反転し、フェイダウェイからそのままシュートをするとボールは滞空時間の長い放射状の軌道を描きながらリンクの上を行き過ぎたと思った瞬間、走り込んで来た青空がそのボールを片手ダンクする。
スポーツ科クラスの男子全員は、
「…………息ピッタリ。」
女子生徒たちは、
「キャッー青空君~素敵すぎ~!」
水戸は、
「……やっぱり麻王って人…イテ!」
芯は鼻息荒く、
「やかましいわ、水戸!」
立ち上がると水戸は、
「褒めてるだろ!……クソ~ポカポカと俺が殴られ続けるだろうが!早く犯人見つけようぜ!」
麻王と青空はそのまま体育館から出て行く。
優也は、
「斉藤先生に続いて青空と麻王も雲に太鼓の鼓と書いて雲鼓かよ。」
優也が言うと、”珍しく博識だな”と水戸と雅が笑う。
碧は、
「ギャッハハ、そんな漢字ねえよ!それに長いわ!それにウンコはオメーだ、優也!」
芯は、
「あの位置からでは青空でも八割ぐらいか。反転しながら敵が追いかけて来ていると考えてフェイダウェイでシュート…でも、麻王は腕を振り切ってなかったな。青空の動きを見て即座に手首のスナップのみでパスか…。息ピッタリで感動だったけどスリー勝負じゃなかった?」
六限目が終わったらすぐにバスケの練習をするぞと副キャプテンの牧野芯が全員に声を掛ける。
放課後
白桜 校門
「帰るのか、麻王?」
青空が声を掛ける。
麻王は靴を履き替えながら、
「バイトもあるし、それにもうすぐ中間考査もあるしな。」
「久々に一緒に帰るか、麻王?」
「いや、俺の話を聞いてた?無視したよね?それにバスケ部と野球部のキャプテンがそれ言う。」
ニコッと青空は、
「さっきのプレーを見て皆、燃えているから部活は心配ないでしょ。」
「ま、たまにはいいか。」
二人は港区の客船ターミナル近くを歩きながら、
「麻王、生徒会の副会長になってくれないか?」
「それ、何度目だ?そもそも生徒会選挙で俺が忖度を否定した。それに女子が怖がっている俺が入ったら生徒会の支持率もお前の人気も落ちる、だろ?」
「女子生徒も麻王への信頼は高いよ。一緒にいて不幸になるのが怖いだけだよ。」
「噂を流した青空がそれ言うかな?」
「やっぱりバレてたんだ?」
「バレバレな。噂が広まるのが早過ぎ。それに最初は女子限定。甲子園から全校生が帰ってくる直前の誰もいない学校で広がるはずがないしな。プラス、俺たちの活躍を疎んでいる奴ならお前にも何らかの形で行くはずだろ。トドメは俺のそういう事を知っているのは青空を含めたごく一部。」
青空は海を眺めながら、
「怒っているか、麻王?」
青空の横に並び水面を見つめる麻王は、
「感謝しているよ。女子生徒たちはフリーバッティングをしている時に相談に来るぐらいだしな。理想の環境をお前が演出提供してくれたよ。」
本当の親友とは余計な言葉は必要ないのかも知れない。そう思わせるほど二人の空気は自然で美しく見える。
青空は突然、質問する、
「最近、井上は麻王への接し方が違うけど麻王は誰を選ぶんだ?」
「………難しいな。ふつう人には大なり小なり妬みや嫉みが僅かでも存在する。でも彼女たちにはそれがない。天然でも悪意の強いおぞましいやつもいるだろ。」
麻王の言葉を黙って聞いている青空は、
「もう全員をもらったら?」
「この世界ではそれは幸せになれないんじゃないか。」
「麻王次第だと思うけど?それぐらいの甲斐性も麻王にはあるだろ?」
「そういう青空はどうなんだ?」
「僕は日本人女性には興味が持てないな。」
「自立している女性もいるけどな。」
「それが当然のことと思えている女性はどれくらいいるかな?」
「厳しいな…」
話を変えて青空は麻王に質問する、
「そうそう、駿との会社も右肩上がりらしいな。僕も入れてくれよ、麻王?」
麻王は、
「神薙財閥の嫡男でなくても神薙青空は近い将来、世に出て来る力があるしな。勧誘する手間が省けたよ。」
麻王の言葉に青空も笑みを浮かべながら夢を談笑する二人。
少し幼くも高校生らしく麻王は、
「ソフトの続編って有り得ないぐらい大変でな…」
身振り手振りで説明する麻王を温かく見る青空。
「僕なら120%のパーフォーマンスを出せると思うよ。」
自信満々に答える青空。
「マジ?」
「大マジ。」




