マナ鉱石
●マナ鉱石 35話●
30分後
静岡県
大型バイクを停めると麻王は、
「ほら、着いたぞ?」
後部座席の心海は、
「麻王兄~飛ばしすぎだよ~!」
バイクから降りると麻王は、
「心海を後ろに乗せていたしな……もうエンジンは使えないな。」
「……もしかして弁償?」
「成功したら税金で新品を持ち主さんに払ってくれるらしいぞ。」
「……成功しなかったら?」
「そんな姿を見たことあるか?」
「ないね!」
「まあ、所詮、俺は人間だしな。」
「……麻王兄のそれって自虐ネタ?」
麻王は1km先の港に停泊している空母を見ると、
「大統領しか知らないフットボールがあの空母に…」
「フットボールって…?」
「核の起爆装置だな。」
「マジ~!」
「マイアなら凄まじい数の追手をだすな。」
「……女王陛下ってめっちゃ怖かったね?」
「こっちの世界に来るかもな。」
「…………。」
麻王と心海が話していると原発施設にジュラルミンケースを持った大男が歩いて行く。
心海は、
「……麻王兄…アイツ?」
「ここにいろよ。」
大男の下に歩いて行くと麻王は、
“What are you doing in this weird place , Mr? 『こんな田舎で何しているです?』”
“Who the hell you? 『誰だオマエ?』”
“I’m this local English teacher. 『地元の英語教師ですよ。』”
麻王が英語の教師と名乗った瞬間、大男は右手に持ったナイフで切りかかって来ると麻王はスッと避け自身の左腋に大男の右手を挟む。
麻王はそのまま腰を捻転させ、強烈な右肘を男の顔面に叩きこむ。男は何をされたかも判らずその場に力なく倒れる。
心海は、
「ヒェッ、死んだかも…さすが麻王兄は体術もバツグン…」
麻王は倒れた男のジュラルミンケースを開けファイルを取り出すと、
「へー、これがフットボールね。衛星はヘリコプターを追い続けているな。」
麻王は心海のスマホで結衣と香織に連絡を取る。
心海は笑いながら歩いて来ると、
「パパが泣くぐらいしょっぱい英語だったね。」
“When I could talk to him like this, he would suspect me as an agent, right?バーカ” 『バーカ、俺が流暢に話したら男は俺を疑うだろ?』
ネイティブスピーカーと遜色のない発音に心海は、
「……スゴ!下手な英語の発音もできるんだ……でも最後のバーカだけは分かったよ!」
「日本語だからな。」
「麻王兄って何でも身に付けて行くね?」
「心海と美緒は兄さんに直接教えてもらっているんだろ?」
一人ぶつぶつと心海は、
「パパは発音、そんなに上手くないし。でも、教え方は学校の先生とは比べものにならないけどね。」
麻王は気絶している男を縛りながら、
「海外ドラマを一万回観たらこれぐらいになるよ。」
「一万回も無理~!」
ニコッと麻王は、
「努力も習慣だよ。」
麻王は、
「ヘリコプターがすぐに来るから心海はここにいろ。俺は、アフターサービスに行って来るよ。」
準備体操をしている麻王に心海は、
「……足のケガは?」
「ハンデだよ。」
海と田畑を見ると心海は、
「……ここは少しマナを感じるよ。使うの?」
「今の俺では美緒や心海、樹さんと奥様を連れて遠くへは飛べない。だから結衣と香織の父親の話に乗ったんだよ。」
「……香織を知っていたの?」
「新聞配達でな。」
「気を付けてね。」
「それに少し欲しい物があってな。勉強しておけよ。」
麻王は笑顔で心海にそう言うとそのまま日本からいなくなった。
土曜日
白桜中等部
昼までの授業後に麻王は珍しく中等部にまで足を運ぶ。
三階の窓から心海は、
「麻王兄―!」
心海は中等部校舎三階から声を掛けて校舎下にいる麻王の下に走って来る。
右手に包帯を巻いている白桜ワイシャツ姿の麻王は、
「予選が終わった後に心海の三者面談でも来たけど、半年ぐらい前にこの校舎にいたと思うとやっぱり懐かしいな。」
「お帰り、麻王兄。右手の包帯は何? 大丈夫なの? 朝一に帰って来たって聞いたけど、一週間は長いよ~!」
「まあ、話は後でな。今日は一緒に帰らないか。ここで待っているよ。」
「ホントに!?待っててね!」
心海は一瞬目を丸くしながらも喜んで教室に戻って行く。
帰り道で麻王は心海と美緒に小さな円柱状の鉱石のネックレスを二人に渡す。
ネックレスの先端にある真っ赤な宝石を見ると美緒は、
「…………これは?」
「鉱石に僅かに含まれるマナを集めて一つの円柱状の石にマナを凝縮させたものだよ。」
心海も先端が青い宝石を見ながら、
「……地球にマナがあるの?」
「海外では価値のない鉱石らしいけど、愛枝の商社に頼んで集めてもらっているよ。この世界で使う必要はないかも知れないが、美緒と心海には持っておいてもらいたくてな。」
心地良い優しいマナが美緒と心海の身体を取り巻く。
「……ありがとう、麻王!信じられないぐらい嬉しい…」
美緒と心海の手が感激で震えるとマナがすぐにその震える手を優しく包む。
「……それにこの石ってびっくりするくらいすごく綺麗だね。」
美緒と心海がネックレスの石を見ながらつぶやく。
「詳しくはないけど、青空に頼んでトリプルA(宝石のグレード)より上のダイヤとサファイアを集約する石にしたからな。美緒がダイヤで心海がサファイアだよ。」
美緒は、
「……信じられないぐらいとても嬉しいんだけど…それにとても聞きにくいんだけど、いくらしたの?大丈夫?」
美緒が聞くと心海も緊張する。二人の耳元で麻王が囁く。
「えぇぇぇぇぇ~!?」
二人が卒倒しそうになるのを麻王が両手で受け止めながら笑う。




