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結構引っ張るよな…

●ダウンジング 34話●


麻王の治療も終え、白桜に戻る麻王と美緒の二人。

1000M決勝の表彰も終えダンスの準備を皆がしている。

美緒は表彰のメダルを慌てて受け取りに行く。



心海、結衣と神子そして香織も心配して走って来る。

「麻王兄~!」


スラックスにウインドブレーカー姿の麻王は、

「銀メダル用意してあったんだ。」


結衣は、

「もう大丈夫ですか?」


「少し深く切っただけだから、ありがとうな。」


ジッと麻王を見つめる香織は、

「……チームワークの勝利ですよね?」


「ああ。神子が皆の身体をベストコンディションに導き…それぐらいか?」


結衣は、

「そんな事ないですよ~!」


神子はもじもじと、

「…あの…麻王君、一緒にダンス踊ってくれる?」


「名もなき風紀委員メンバーだろ?ダンス中の学校外の見回りは俺一人で十分だから行って来るよ。」


ガックリと神子は、

「えぇぇぇぇぇ~!」


「白桜高校のダンスでペアを組むとその二人は生涯永遠に結ばれるとかか?」


心海は笑いながら、

「そんなのは白桜にないよ~!ダンスに行こうよ~ハーレム王、いや麻王兄~!」


麻王はグラウンド中央のキャンプファイアをしている方を見ると、

「ハーレム王とはあいつのことだと思うけど?」


青空が先輩後輩関係なく何百の女性たちに囲まれてダンスを申し込まれている。芯やユウヤ、碧、ハルトも駿も。


「上杉君いないね、麻王兄?」


「あいつは、ダンスの先約があるんじゃないかな。じゃあ失敬。」


心海が麻王のウインドブレーカーを引っ張りながら、

「”じゃあ失敬”じゃないって、麻王兄!」



心海に引っ張られながら麻王はジッと空を見上げている

「……結衣、香織、もうすぐダンスだ。一緒に学校外に見回りに行かないか?」


俯きがちな神子は、

「……あの…麻王君?……その二人を誘ってるの…?」


麻王は笑顔で、

「まだ何も始まってないよ、神子。」


「えっ?……だ、だよね?」


「甲子園後にやっと自分の時間も少し持てるようになったし…。」


麻王の言葉に元気になると神子は、

「だよね!麻王君はこれまでずっと忙しかったもんね。」


「じゃあ少し夜風に当たって来るよ、行くぞ、結衣、香織?」


気まずそうに結衣と香織は、

「……はい…」




学校外の人気の少なくなった道路で麻王は止まると、

「衛星がずっとこっちを観察している。俺が空を見上げ続けている時、表情が変わったのは結衣と香織お前たち二人だけだった。今更だが一体何者だ?」


結衣と香織は、

「……衛星って。」


「何度も言わせるな。36万キロ上空にある衛星のことだよ。」


結衣と香織は信じられない様子で麻王を見ている。



結衣が話し始める、

「……私の父が警察官僚はご存知ですね。香織の祖父は確かにソフト会社の経営者ですが彼女の父も警察官僚です。」


結衣に続いて香織も話し始める、

「アメリカから日本に小型の核を持った者が侵入したとの情報が入りました。きっとその探索の為に衛星を使っているんだと思います。」


上空を見つめたままの麻王は、

「違うな。今、監視している衛星はロシア製だ。ロシアは大金さえ払えば民間、個人にも衛星を貸す。しかも今、監視しているのは俺たちだよ。」



その言葉に結衣と香織の二人は完全に言葉を失う。


結衣の携帯のコール音が鳴る。



体操服のポケットからスマホを取ると結衣は、

「…………お父さん?うん、…………それが…………うん、分かったから切るね………すみません、父が近くの捜査本部に来て欲しいと言っています。お願い致します、麻王先輩。」


麻王は、

「俺の役割は学校外の見回りだよ。それに……心海、かくれんぼは、終わりだ。出て来い。」


電柱で気配を消していた心海はヒョコと顔を出すと、

「……バレた?」


ポケットから懐中電灯を出すと麻王は愛想もなくダウンジングをしながら歩き始める。


心海は、

「ほら~!結衣と香織のせいで麻王兄が機嫌悪くなったじゃん!それは警察の仕事でしょ。」


香織は、

「待ってください、麻王先輩!私たちも監視されているんですよね。でも、もう時間がないんです!」


そう言うと香織と結衣の二人は道路に土下座する。


「麻王兄、結衣と香織を放って行くの?」


心海の言葉に麻王は後ろ姿のまま立ち止まる。


心海は二人の下に行き結衣と香織を連れて来ると、

「……アンタたちさ、何でふつうに相談しなかったの?」


「…………すみませんでした。」



振り返ると麻王は、

「火急の事態なのに政府が動きにくい案件。日本と親しい国の高官ってとこか?それに火急とは言え娘たちに頼むのか?何故、本人から連絡してこない?」


結衣は、

「……すごく忙しいみたいで…」


懐中時計をポケットにしまうと、

「なら、そのテロリストの身体温度の上昇度からもうあんまり時間がないと伝えてやれ。頑張れよ。」


麻王はそのまま歩いて行ってしまうと結衣と香織は激しく肩を落としトボトボと歩いて行く。


「……麻王兄…結衣!香織!」




5分後

結衣と香織の父親の二人が白桜高等部のグラウンドにヘリコプターで来ると、すぐにヘリコプターはそのまま西に飛んで行く。


麻王は、衛星が西を監視し始めた事を確認すると、

「心海、俺の代わりに学校外の見回り頼めるか?」


麻王はそう言うと顔にタオルを巻き、近くの大型バイクに針金を差し、エンジンを掛ける。


「私も一緒に行くよ、麻王兄!」


心海が心配そうに麻王を見つめる。


麻王は少し考えた後に何も言わずに心海に手を伸ばす。



心海は大型バイクに乗っている麻王の手を握ると、

「……ハーレム王、いえいえ、麻―王……何か似ているね?」


「………結構引っ張るよな?」


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