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美緒と心海の気持ち 生駒山

●美緒と心海の気持ち 30話●


麻王は美緒や心海と同じマンションで三人一緒に暮らしている。


麻王は二人に美緒と心海自身が名義の貯金通帳を渡す。


LRプログラミング会社のシナリオライターやプログラマーとして得た収入から美緒と心海の二人に割り当てたものだ。

美緒は通帳を見て切ない顔をする。



新宿区

マンション


リビングで心海は、

「麻王が作ったソフトでしょ?麻王は社長じゃないの?」


心海の素直な疑問をぶつける。


リビング、テーブルでラップトップを打っている麻王は、

「いつかアルトメニアに帰れる日が来た時に魔法だけじゃなく技術を持って帰れば医療による貧富の差も、エルシオン全土もそうなるんじゃないかと思ってな。」


美緒がかなり怒りながら話し始める、

「さっきから心海は何で”麻王”と呼んでいるの、心海?」


「麻王が許してくれたからだよ!」


「どういう経緯(いきさつ)か説明してよ、心海!」



五分後

美緒は、

「……ふ~ん、心海ってやっぱガキだよね?」


「な、何でよ?」


「最初から麻王はアンタと血が繋がっていないって知っていた訳でしょう?そこまでゴリ押して意味があるとは思えないけど?」


「……まあ。」


麻王はプログラムを打ち終えるとやれやれと、

「終わったか?俺が目の前にいるのにすごいなお前たち。」


美緒と心海はしょんぼりと、

「…ごめんなさい。」


麻王は、

「それより心海、その記憶はいつからだ?」


心海は記憶を辿るように、

「……今は聞こえないけど仲間たちの声が聴こえて……それから最初はぼやけた記憶で夢の中で見るようになって…」



「…じゃあ、元々、心海が実の妹と違う事を知っていた麻王は心海を選ぶんだ…。もういい!」


美緒がそのまま台風の激しい雨の中、走ってマンションを出て行く。



心海は、

「……何なの…」


「心海、お前はここにいろ。」


「……でも、ごめんね、麻王?」


「すぐに帰って来るよ。それに連絡役も必要だろ?」


「うん、待っているから。」


「そうそう、せっかくの休みだから隣の樹さんに言うなよ。」


「うん、麻王、傘は?」


「暴風雨に傘って意味あるか?それに無性に雨に濡れたい時ってあるしな。心海は心配しなくていいから海外ドラマでも観ておけ。行って来るよ!」


「……麻王。」




麻王は激しい雨の中立ち止まると、

「歌舞伎町方向に行ったのか?……激しい雨と風の中を裸足で出ていったしな…」


雨と風が酷くなる中、麻王は目を閉じしばらくジッとしている


「…………向こうか。」




近くの総合病院のベンチで一人ずぶ濡れで泣いている美緒の横から傘を渡す心海がいる。



顔を上げると美緒は、

「……心海…?」


「……最初に地球に来て麻王が帰って来なくなった時も美緒姉はここで泣いていたね?…でも麻王はこの世界に来る前からも、そしてこの世界に来てからもずっと私たち二人を大切にしてくれていた。」


心海はポケットからビニール袋に入っている特例特待生の用紙を出す。



美緒は心海からビニール袋の中の用紙を取り出すと、

「…………これって。」


麻王の名前の横に美緒と心海の名前も記載してある。


「……美緒姉と私じゃあこの成績は取れないでしょ?だから麻王は、成績、部活に生徒会の手伝いも……あれだけ忙しい中で頑張っていたんだよ?……この世界に来てからも麻王の闘いは変わらず続いている。私たちを守り戦い続けている。ずっとこんな事していたら死んじゃうよ。」


心海は話しながらも涙が止まらない。



美緒はうつむきながら、

「……ごめんね、麻王、いつも考えてくれているのに……本当にごめんね。」


心海は、

「私は麻王を愛しているから。今度は私が麻王を助けたい、美緒姉は?」


「……私は。」



麻王が前方から歩いて来ると、

「………やっと見つけた。台風で傘は意味ないぞ。」



裸足で血が出ている美緒を麻王は黙っておんぶすると美緒は、

「…………ごめんね、麻王。ちゃんと分かっていたんだよ。もう麻王には無理して欲しくなくて。私も麻王に幸せだと思って欲しくて。その時、心海の気持ちを聞いて。ごめんね、本当にごめんね。」


美緒をおんぶして歩き始めると麻王は、

「心海も行くぞ?」


「……うん。」


「……ごめんね、麻王?」


美緒の言葉に麻王は何処かのマンションの玄関先で歩を止めると、

「……美緒と心海は家族の大切さを教えてくれた。感謝しているよ。」


「……麻王。」


「お前たちが喜ぶならどんなものでも与えたくてな。」


おんぶをされている美緒は麻王を強く抱きしめると、

「……麻王はまるでお父さんみたいだね?」


「早くに親がいないお前たちも周りより早く大人にならざるを得なかった。でもこの世界で少しでも長く美緒と心海の時間を取り戻せるならとな……いい機会だ。日曜日に久しぶりに三人で出掛けようか?」


美緒と心海は、

「うん!」





日曜日に飛行機で伊丹空港に着き、タクシーで生駒山にまで行く。


綺麗な大阪平野の夜景が見える。


ワンピース姿の美緒と心海は、

「気持ちいい~!アルトメニアじゃあ信じられないほどの綺麗な夜景だね!」


「兄さんがいつか惚れた女を連れて来てここで口説けってな。」


美緒は、

「……そ、それってもしかして私たち?」


「二人ともこの世界は好きか?」


「え、もちろん大好きだよね、心海?」


「美緒姉と違って運動神経抜群の私には天国!私は陸上選手になってスポンサーをバンバンつけて麻王に恩返しをする!」


「……私は…そう!会社の秘書!麻王が疲れている時は、私が麻王の代わりに働いてね?」


「幾つもの次元を渡り歩くことができる頭脳を持つ麻王兄の代わりなんてできるはずないじゃん!」


「うるさいわね、私なりに考えているの!」


美緒と心海の姿を穏やかな目で見る麻王は、

「そっか……与えられるだけが幸せじゃない。そう思えるのは二人はもう大人なんだろうな…。」


「……麻王兄。」


寂しそうな顔で話す麻王に心海は涙が溢れだす。


「へ-、心海は麻王を諦めるんだ?」


少し意地悪く言う美緒に心海は、

「呼び方1つで麻王兄の私への見方は変わらないもん。」


「これからは二人の進みたい道の時にこのお金を役立てて欲しい。」


麻王は二人にあらためて通帳を手渡す。


美緒は、

「……本当にいいの?」


「俺たちは家族だろ?」


「うん!」


「タクシーの運転手さんに帰ってもらったから下山は歩きな。」


麻王は真っ暗闇の山の中を歩いて行く。


美緒と心海は、

「ええぇぇ~ムリムリ~絶対にムリ~!」


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