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神薙総合医大 夏葉麻王とは何者?

●神薙総合医大 24話●


青空たちが甲子園の三回戦涼宮第一と戦っている、その時。青空の父が経営する病院の一つである神薙総合病院に駿と碧は入院していた。志の高い医師を集めた病院で最先端医療を誇っている。



新宿区

神薙総合病院


集中治療室に今も駿と碧はいる。外科医師の寺本と救急医師の横田が相談している。


白衣姿の寺本は、

「……今も入院中の不良グループの一人から駿君と碧君は30分以上交代で殴られ続けたと聞いています。」


駿の妹の香織は、

「…………そんな…………酷すぎるよ…………お兄ちゃん、ようやく帰って来て……笑顔で高校に通うようになったのに……。」


「…正直なところいつ病変が変わるか分かりません。」


結衣は、

「何で?何でそんなヤツらも同じ病院で入院しているんです!」


横田は、

「君たちの後ろのお父さんたちに聞けば?日本最先端の医療技術を走るこの神薙総合病院を出たら直ぐに彼らも死ぬし、そもそも受け入れる病院ないでしょ?」


寺本は、

「こら、横田!…皆さん、すみません、私の後輩で口は悪いですが救急救命センターを任されており、腕は確かです。正直、駿君も碧君も予後は良くありません…ご家族やご友人の方々もそれなりの覚悟はされてください。」


呆然と結衣は、

「………何で…?」


愛枝やリサ、碧の妹の橘結衣。結衣と同級生の駿の妹の名古屋香織が交代で様子を看ていた。

繰り返しの手術の後の二日後、駿の容態が悪くなる。

医師たちからは今夜が山だと告げられる。

駿の家族や愛枝、全員が激しくむせび泣く。




三時間後 

再び医師の寺本と横田が歩いて来ると寺本は、

「駿君と碧君をICU(集中治療室)から別室に移動させます。」


香織は、

「……どうしてですか?」


医師の寺本は、

「打撲による脳の中の腫れが収まりません。現代医学では苦しいかと…」


駿の父親の名古屋は、

「……じゃあなぜ移動させるんです?」


前面に出ると横田は淡々と、

「駿君と碧君のお父さん方二人は警視庁の偉いさんでしょ?」


横田の言葉に橘は、

「……ええ、一応。」


神薙総合医大の救命救急センターで数多くの死を見て来た横田は淡々と、

「更に上から今回の件を大事にしないように圧力が掛かっているんじゃないですか?」


橘と名古屋は、

「……何故、それを?」


横田は、

「この神薙総合病院の経営者、神薙財閥会長の力ですよ。僕や先輩の寺本先生も我々の意志に関係なく強引に引っ張られましたしね。」

「…………。」


橘は、

「……横田先生でした?娘たちもいるこんな廊下で不謹慎ではないんですか?」


橘の言葉に横田は、

「こんな話を誰が信じるんです?でもその会長から直々に駿君と碧君を海外医療派遣室に移動させろとね。もうイミフですよ。」


橘は、

「え、じゃあ息子たちは海外からの先生が?」


橘の言葉に寺本は、

「……それが誰も来ていないんですよ。」


涙が溢れる名古屋は、

「……来てないって…バカ息子だけど、”友達と会社をしたいんだって”…僕の前で土下座までしたんですよ…ぅぅぅ…」


横田は、

「もう闇っしょ?」


橘は、

「…闇?」


「脳幹の1つの橋を知っています、橘さん?」


「…いえ。」


「ここが出血すると医者は手当をしません。何故か分かります?」


橘は、

「……手当てをしない?」


横田は、

「まぁ、中脳、橋、延髄の橋がダメになるとほぼ助からないと付け加えておきますが、医術の”い”も知らない患者の家族が医療ミスがどうこうのと訴えるからですよ。医者はリスクを背負うのを辞めて行く……安楽死を患者に懇願され、手伝った医師の刑罰の重さをご存知では?こういう事が医療現場では多々ある。どちらも闇しょ?」



橘の妻と名古屋の妻が泣き崩れると橘と名古屋は、

「……お、おい……」


横田は、

「まあ、そう言う倫理をスッ飛ばしたのが神薙総合病院であり、その上を行くのが外医療派遣室ですよ。」


「………………。」



いつの間にかいなくなった寺本が戻って来ると、

「横田、駿君と碧君の移動は30分以上前に他の医師が済ませたよ。」


呆然と名古屋は、

「…………え?寺本先生…………え?」


横田はやれやれと、

「だ・か・ら医療倫理をすっ飛ばしたと言ったでしょ?ICU(集中治療室)には別の通路があります。僕は貴方たち”い”も知らない家族が騒ぐのを防ぐ時間稼ぎ要員!」


「………………。」


寺本は、

「はっきり言って駿君と碧君はもう時間の問題でした。未来ある若者が死ぬのは僕たちも辛い…橘さん、名古屋さん、ここは賭けてけてみませんか?」


「…お、お願いします。」


寺本は、

「ハハッ、こいつの話した事は噓ですからね?で、何を話したんだ、横田?」


寺本の言葉の途中で看護師が走って来ると寺本と横田に耳打ちする。



愛枝、リサ、橘父、結衣、名古屋父、香織や橘と名古屋の妻たちも呆然とその様子を見ている。


寺本は、

「…………そう?有難う。皆さん、駿と碧が意識を取り戻しましたよ。神薙総合病院の中庭に二人はいます。会いに行かれては?」


橘は、

「名古屋はここに残れ。荒木先生や愛枝ちゃん、お前たちは中庭に行ってくれないか?」


橘の言葉に頷くと愛枝やリサ、結衣、香織たちは中庭に走って行く。



横田は、

「いや、僕たちもヒマじゃあないんですけど?」


橘は、

「寺本先生、横田先生、息子たちに治療をして下さったのは誰です?」


横田は、

「一警察官の一人に過ぎない貴方たちが聞いてどうするんです?」


橘は、

「私たちは誰がこんな大事件にまで介入しているのか憶測でしか知りませんでした。」


寺本は、

「……橘さん、残念ながら私たちもはっきりとは分かっていません。ただ…」


「……ただ?」


寺本は、

「会長のご子息が幼少の頃から所謂、神童と呼ばれていたんですが……一年ぐらい前か、横田?」


「えっと…一年前で坊ちゃんは……中学三年……それぐらいですね。」


「何の話です?」


橘の言葉に、


横田は、

「神薙財閥稀代の天才である現会長をご子息が超えたという話ですよ。今、甲子園に出ていると思いますよ。野球を始めたのもそれぐらいでしたよね、寺本先生?」


「……息子たちと同じ白桜の?……前首相の普門院先生を操っていたという噂の神薙財閥会長を?」


寺本は橘をジッと見ると小さな声で、

「………橘さん、それ以上は言わない方がいいですよ。そして超リベラルな普門院先生も復活します。」


橘は、

「……そんな…」


名古屋は、

「で、ですよね~!」


横田は、

「そんなことより、さ、早くご子息の下へ。」


「私は暴きますよ……いえ、本当に有難うございました、先生方。行くぞ、名古屋!」


橘の言葉に名古屋は、

「す、すみません、警察官の性ってやつで。有難うございます。……先輩、チョット待って~!」


橘と名古屋が走り去るのを見ながら横田は、

「……夏葉麻王か。」


寺本は、

「すごい技術を持っている無免許医な……いつか俺たちの上司になるかもな。」


「マ、マジですか~!まだ高校生のガキっすよ?」


「あ~言っちゃったよ、横田は。……青空坊ちゃんより天才らしいぞ?」


「ホ、ホントに?先輩、今のはナイショで。」


「……光学顕微鏡を見ながら血流方向を確認し、凄まじい速さで毛細血管を次から次へと繋いでいく……本当の神だよ。海外医師たちも呆然と口を開けたまま。」


横田は、

「……それもそうなんですが、事前にほんの少量のオレンジジュースみたいなモノも飲ませていて…」


「オレンジジュースを飲ませるハズがないだろ?」


「いやいや、僕に”ブラックジャックにヨロシク”ってね。ヤンキー言葉じゃないですよ?」


「ハァ~…」


「ホントなんですって!それにあんなに話してよかったんですか?」


寺本は、

「俺の診断書ミスを検察官が脅して来ただろ?」


「あれは絶対に事故でした!それに俺が言いだしたんですよ!」


「俺もそう確信してるよ。それを救ってくれたのが青空坊ちゃん…」


「……まぁ、お陰様でブラック病院ですからね。ああ、”ブラックジャックにヨロシク”ってそういう意味か…」


「どういう意味だ?」

両手を広げると横田は、

「さぁ?」


「……………。」





15分後

神薙総合医大 三階 テラス付き中庭


パジャマ姿の駿と碧が意識を取り戻し家族と抱き合っている。

「イテテ!」


という二人だが傷がほとんど回復している。


看護師の一人水の瀬は、

「本当に良かったですね!碧君、駿君、ケンカはダメだよ!」


碧は、

「そんなんじゃねえよ……看護婦さん、美人だよなあ~。」


水の瀬は、

「キャッ!!! 何するの!」


駿は、

「じゃあ、俺も!」


「キャッー!!! 橘さん、名古屋さん、お子様にどんな教育をしているんです!」


橘と名古屋は、

「……すみません。」


「神薙総合病院ではセクハラ患者は即退院させますからね!」


碧は、

「もう一日も入院する気はねえよ。看護師さんよ、オペ中に麻王がいただろ?」


水の瀬は、

「……私たち看護師は席を外せって言われたから…」


愛枝は、

「身長180cmぐらいのスタイリッシュな美少年を見ませんでしたか?」


愛枝の言葉に水の瀬は、

「…そうそう、病院の屋上に行った子のこと?悲しげな表情でキュンキュンしちゃたよ!」


看護師の言葉に碧と駿はパジャマ姿に裸足のまま走って行く。



「ちょっと待って!」


愛枝とリサも碧と駿を追いかけて行く。



橘は、

「俺たちも行くぞ、名古屋!」


「いい加減にしてください!退院の手続きをしますよ。」


橘の妻は、

「あなた、お願いだからこんな所でまで警察官はヤメて!」


結衣は、

「お父さん、今は素直にお兄ちゃんたちが元気になったことを喜ぼうよ。」


「……う~ん…。」





神薙総合病院 屋上

柵越しにワイシャツ姿の麻王は遠くを見ている。


包帯を頭に巻いたままパジャマ姿の駿と碧が屋上にやって来ると、

「麻王!甲子園に行こうぜ!みんなが待っているぞ!」


麻王は振り返らず、

「……元気になったのか?」


駿は、

「祖父の会社のプログラマーの人たちも麻王は人間じゃないって言っていたよ。」


駿の言葉にも無言のまま遠くを見つめる麻王に、


駿は、

「い、いや、すごいヤツって意味な!…………すまん。」


麻王は振り返ると、

「よかったな。」


碧は、

「……親父の部下の人たちが半グレ300人の事情聴取をしに来ていてよ…」


「だから何だ、碧?」


駿は碧の頭を殴ると碧は、

「いや、イテ!何すんだよ、駿!」


「もう何も聞かねえよ、麻王。助けてくれたんだろ?本当にありがとう、麻王。」


碧は、

「ソッコー聞いてんじゃねえか……妹の結衣が悲しむ所だった……本当にありがとう、麻王。」


麻王はポケットから懐中時計を取り出すと、

「30分以上殴られ続けたおぞましい記憶は消せる。どうする?」


麻王の言葉に碧と駿が顔を合わせると碧は、

「要らねえよ、麻王!男は戦ってナンボだろ?」


麻王はクスッと笑うと、

「そっか、なら必要ないな。それと駿、後三日はあんまり頭を叩くなよ。」


「……ああ。」


愛枝とリサが屋上に上がって来ると愛枝は息を切らしながら、

「……ハァハァ……麻王は何者なの?」


麻王は再び遠くを見ると、

「……それにしてもこの世界で死ぬはずだった人間を助ける罪は大きいな。」


「え、罪?何で罪なの?何の話?」


駿は、

「麻王、頼み事ばかりですまないがその懐中時計で愛枝と荒木先生のあのおぞましい記憶を消せるのか?」


麻王は後ろ姿のまま、

「残り二人分ぐらいだしな、いいよ。」


「何の話?何でこっちを向かないの、麻王?」


愛枝の言葉にリサは愛枝の肩を持つと、

「赤瀬さん、麻王ってすごい力を持っているよ?」


「知っているよ、そんな事!一時間のゴルフ指導でトッププロ以上に慣れる人間がいるはずがないでしょ!」


「選べ。」


麻王の言葉に愛枝とリサは、

「……え?」


麻王は振り返ると、

「人生は選択の連続だろ?おまえたちが聞けば、噓偽りなく全てを答える。但し、俺は妹二人を守るためにお前たちの前から永遠に消える。」


駿は、

「……麻王なら俺たちの記憶を消すのも容易にできるんじゃないのか?」


「もう二人分の記憶を消す力しか残ってないと言ったが?」


碧は、

「真実を伝えて愛枝と荒木先生の記憶を消すのか?」


「消すよ。お前たちにも何があっても守りたいものはあるだろ?」


碧は、

「………だよな。麻王に助けてもらってばかりで何を言っているんだってな。」


リサは、

「…………お願いだから記憶は消さないでください。」


リサの言葉に愛枝もうなづくと、


麻王は愛枝の額に指を優しく添える。


「イヤだよ!絶対にイヤ!」


愛枝とリサは涙を流しながら麻王を見つめる。


麻王は笑顔を見せ、リサの額にも触れると、

「恐怖に対する耐性を強くしておいただけだよ。頑張ったな、四人とも。駿と碧もこっちに来い。」


「…………麻王は本当に一体、何……?」


愛枝が再び尋ねようとすると駿が愛枝の肩にそっと手をおいて首を振る。


麻王は、

「愛枝、今も甲子園でみんなが待っているんだ。」


「……うん、今はそれで十分だよ、麻王!」


リサは、

「赤瀬さん、人は三食美味しいものが食べられたらそれでオールオーケーなのよ!」


「え?何、言ってるの、この先生?」


碧は笑いながら、

「しかし女ってうるさいよな~。そう言えば荒木先生って理事長の娘でコネっしょ?」


碧が茶化す。


駿は、

「愛枝、麻王は俺たちを助けてくれた。それで十分だろ?」


碧は、

「すぐに甲子園に行こうぜ、麻王!」


碧の言葉に駿は、、

「役立たずのお前は要らないって。」


「何でだよ~!」


駿は、

「この恩は絶対に忘れないよ、麻王。」


「もし俺に何かあったら妹たちを頼むよ。」


穏やかな麻王の表情と言葉に”麻王もまた人”と知る愛枝は涙が溢れる。


駿は、

「お、おう、嫁にもらえってことだよな?」


碧は、

「違えよ、バカ!麻王、そん時は俺が麻王の盾になって死んでやんよ!1秒あれば麻王なら何とかできるんだろ?」


駿は、

「それでまた俺たちは復活ってか!」


目を閉じると麻王は、

「……ああ、…」


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