六月二番目のイベントは?① 夏葉心海
●六月二番目のイベントは?① 13話●
六月、二番目の大きな行事は白桜中等部三年、約500の名の生徒たちを白桜高等部に招待し、中等部球技大会のサポートを高等部の生徒たちがすることだ。
これが新生生徒会の初仕事にもなる。最も盛り上がるのがバスケットボールとバレーボール。
中等部普通科A~Gの7クラス+中等部スポーツ科1クラスの計8クラスのトーナメント戦。全ての競技に得点が与えられクラス間でその得点数を競う。
麻王は珍しく屋上で寝ている。
朝刊配達員の一人が休み200軒が増え、800軒を配って来たからだ。
いつもは一時間ほど仮眠を取って朝練をするが仮眠時間がなく少し疲れ気味だった。そう、麻王は超人的な強さを持っていても身体はさほど丈夫ではない。
中等部三年生の普通科Eクラスの生徒が屋上で寝ている麻王の下に歩いて来る。
少し緊張しながら挨拶するのは先日の誘拐事件の身長144、38kgの小柄な橘結衣だ。
周や芯にもあらためて挨拶をして来たらしい。
麻王は起き上がり、
「元気ないな。どうした。」
結衣は、
「あ、あの…、夏葉先輩…」
彼女は下を向いたまま上手く話しだせない。
「麻王でいいよ。」
「あの、じゃあ麻王先輩、今日のEクラスのバスケットボールに助っ人で参加して頂けないですか?」
結衣の言葉に麻王は少し考える……昨年の九月以降の転入から高等部に上がるまで麻王は風紀委員の彼女を見かける事は多かった。
理由は、彼女がいつも孤立していたからだ。
中等部の学生はふつう隣のこの中高等部共有の食堂までは先ず来ない。
が、橘結衣はいつも独りで来る。
兄の橘碧が妹を気遣って妹と食事をしている。しかし今後は兄の碧も生徒会の仕事もあるから難しいだろうな…と麻王は考えていた。
麻王は理由を聞かず、
「いいよ。ただし、シュートは結衣や結衣たち3Eの生徒たちが自分で決める。全て外してもいい。約束できるか?」
結衣は笑顔で、
「は、はい!」
そして、今、二人の試合が始まる。
青空は開会式の挨拶を終え、麻王が中等部3Eクラスの助っ人に入ると聞くと、
芯とユウヤにも話し、それぞれが別のクラスに別れて参加しようと提案した。
この話に高等部の生徒たちはバレーボールや他の試合の者もバスケットボールに参加観戦する側に回り、実質バスケットボールの大会に変わった。体育館で観戦する生徒や教師も含めると2000人近くになっている。
白桜高校 総合体育館
【バスケットボール 一回戦】
第一試合、
橘結衣のいる中等部普通科Eが3Aに辛うじて勝利。
【一回戦第三試合】
中等部普通科3F三明優也
vs
中等部普通科3C夏葉心海+高等部助っ人10人
優也と心海の今や100M11秒切る、超高次元のスピード勝負に体育館は地響きが鳴るほどの盛り上がりを見せる。
優也の速さは高等部に上がってから格段に上がっているがそのスピードに楽について来る女子が夏葉心海だ。
ピタリと優也につくと心海は、
「まだまだだね、優也君。」
マークを外そうとする優也は、
「お正月にお年玉やっただろうが、心海!」
「バレンタインデーにチョコあげたでしょ?」
「オレ様を惑わす作戦か?次こそ負けねえからな!」
中学生4人+三明優也1人に普通科3Fに対して普通科3Cはタイムアウト毎に高校生も次に次に入れ替わる。
ただ普通科3Cには交代しない息も乱していない心海がいる。
だが三明優也は三条北山では実質NO.3の存在だったプレイヤー。第4クオータまでに優也は心海の弱点を見破る。心海にスリーはない。加えて44kg、細身の彼女はディフェンスも弱い。
第3クオータ終了 中等部普通科3F86vs中等部普通科3C86
優也は中等部普通科3Fの生徒たちに、
「俺が得点すれば心海がすぐに返す。このまま競り続けて残り30秒までほぼ同点でオレ様が攻めるターンに入れば楽にとどめを刺せる。今のオレにはそれだけの体力がある。」
元気なく体育座りをしている3Fの生徒たちは、
「わかりました…」
立ったままの優也は、
「どうした?」
3Fの男子生徒は、
「なんか優也先輩しか戦えてないっていうか…心海は元々、天才だし…」
「……確かに心海は天才だな。だが小学生の頃の俺はおまえたちより100倍、身体が弱かった。」
女子生徒は、
「……ホントに?」
「おう、親は淡路島っうところで玉ネギ畑をしていてな。俺なんかは半月は病院通いだろ?俺のせいで家は貧乏でよ…このままじゃいけねえって全寮制の三条北山にな…」
3Fの中等部女子バスケ部の生徒は、
「……中等部でバスケ日本一の?」
「そうよ、アップが体育館の端から端までダッシュ100本だぜ。ハハッ、毎日、吐きっぱなしよ!」
「……すごい…」
「残念ながら俺たちは夏葉心海になれねえ…だがおまえたち全員がオレ様には慣れる!その代わり絶対に腐るな!俺たち凡人にそんな時間はねえ!」
3Fの生徒たちは、
「……白桜にいるだけ恵まれているもんな…」
高笑いをすると優也は、
「そうだ!俺なんか三条北山の時に青空や芯に小学生のドリルばっかさせれてたんだぜ!」
「……優也君は何で笑うの?」
「それはな、上を目指せば目指すほどすごいヤツばっかになって来るからだよ。」
3Fの生徒たちは、
「……?」
「貧乏人のオレ様が今やおまえたち白桜生徒と対等に話せてる。貧乏人のオレ様がおまえたちより遥か高見の神薙総合財閥の坊ちゃんと対等に話してる。努力バンザイじゃねえか!」
3Fの中等部女子バスケ部の生徒は、
「……でも、お父さんは神薙さんは怒らすと怖いから近寄るなって…」
女子生徒の言葉に全員が静まり返ると優也は、
「青空は怠慢なヤツには厳しいが、努力するヤツはヘボでも見捨てないぜ!」
3Fの中等部女子バスケ部の生徒は、
「…うん、今日、高等部に来てよかった!最後まで頑張る!」
一人の女子生徒は、
「優也君、右足首が痛いんだ…」
「純子だったな?試合が終わったら保健室におんぶして行ってやるから休んでおけ。」
「……なんで私の名前を…」
純子の3Fのビブスを着ると優也は、
「仲間の名前を知らないで戦えるはずがねえだろうが。3F、行くぞ!」
「おう!」
第4クオーター、残り30秒、普通科3Cの心海が得点する。
優也は、
「今だ!」
3Fの女子生徒は、ソッコーでボールを優也に投げると
優也は最後にトップスピードで4人を一瞬で抜いたと思った瞬間、心海が優也のボールを容易にカットして3Fゴールに向かって走る。
優也は心海を追いかけると、
「ギリ追いつける!」
確信を持って追いかけて行く。
心海にスリーはない。
「捕らえたぜ、心海!」
優也がそう思った瞬間3ポイントライン手前で心海は左脚踵でフルブレーキを掛け身体が左に流れた結果、心海はゴール正面になりそのまま右脚で高く跳躍しボールを投げる。
ブザービーターが鳴る。
優也は汗を拭うと、
「負けたよ、心海。最後までスリーとディフェンスの心理トリックを入れていただろ?」
「伊藤ちゃんと一緒に練習したからね!シューズの踵、ダメになったから買ってね、優也君?」
「人の話を聞けよ。ま、試合前の約束だからな。」
髪をボサボサ搔きながらも”しゃーねーな”と答えると3Fの生徒たちとワイワイする優也に心海は笑顔を見せる。
【午前中 バスケットボール 一回戦 第一試合 結果】
3Avs3Eは井上ハルトvs夏葉麻王の勝負はパスを回し続ける麻王によって辛うじて3E◎
3Fvs3Cは優也vs心海の勝負は心海率いる3C◎
3Bvs3Gは芯と碧vs青空の勝負は助っ人の青空によって3G◎
3Dvs3年スポーツ科は伊藤先輩vs上杉周の勝負は3D◎
【昼休憩後 バスケットボール 二回戦 第二試合 予定】
第一試合
普通科3G助っ人の牧野芯、上杉周、橘碧、井上ハルトvs普通科橘結衣がいる3E+麻王
第二試合
普通科3D助っ人の神薙青空vs普通科3C夏葉心海
決勝
第一試合勝者vs第二試合
井上ハルトは前の前高校の入学式当日に暴力事件で白桜に編入して来た。
双子の姉の井上愛の親友である赤瀬愛枝が色々と手をまわしたと芯たちは周囲の生徒たちから聞いている。
芯が一人イライラしていると周は、
「どうしたんだ、芯?」
「さっき理事長からよ、出席単位の足らない井上ハルトと一昼から一緒に出るようにと指示されてよ~!何で俺が会話もした事ないヤツと?」
碧は、
「俺たちの居合道部と剣道部の廃止か、芯?」
「……ああ。でもよ、何で理事長は井上の弟を贔屓するんだよ?」
芯の言葉に碧は、
「やっぱり手を回したのは赤瀬の祖父だろ?」
「ま、愛枝と愛は特別仲がいいからな。」
芯の言葉に周は、
「正義感が強く芯の友人である碧も当然、気に食わないよな?でもさ、いくら井上さんの友人でもあの赤瀬がそんなに色々とハルトに手を貸すのは理由があるんじゃないのか?」
芯は、
「それだけじゃあねえよ、周!俺は麻王とのチームメイトを誇りにしているけどよ、麻王と敵としての闘いはもう叶わないと思っていた。それが何で井上ハルトが同じチームなんだよ?」
周は、
「……まあ、芯にとっては麻王との夢の対決が邪魔されて怒りが収まらないよな。」
碧は、
「俺も麻王と直接的な友人ではないけどよ、過去に妹を助けてもらい。生徒会演説ではおれの名前を出してくれたお陰で神薙会長に投票数25人のおれを生徒会役員にしてもらった恩があるんだよ!」
「………………。」
「そして今また中等部で孤独な我が妹、結衣と麻王は一緒にいてくれている。勿論、妹が来年16になっても嫁にはやらん。それとは別だ!」
芯は、
「いやいや、麻王はそんな事は思ってねえよ。むしろお前の妹がほぼストーカーじゃね?」
碧は、
「ムチムチの妹がストーカーだと?」
芯は、
「人は皆恋するストーカーだ、碧。」
碧は、
「んな訳ねえだろ、クソ芯!」
冷静な周は、
「お前たちも強いのは理解しているけどあのハルトは空手、日本拳法の高位段者だぞ。」
碧は、
「だったら何だよ、周?俺も芯も柔道クソ強えよ!…ところで麻王ってスポーツは抜群だけど強いのかよ?」
芯と周は、
「……おまえ、妹の結衣からどうやって麻王に救ってもらったか聞いてないのか?」
碧は、
「オヤジがめちゃくちゃ捜査しているけど、何も聞いてねえよ。おまえたちは聞いたのかよ?」
芯は、
「う~ん、結衣は田中先生には話してるみたいだけど、田中先生は口が固いしなぁ…」
碧は、
「んだよ。愛する妹が麻王の毒牙に…クソッ!」
周は、
「なかなかキモいな碧。でも女子生徒に冷たく当たる青空よりも麻王は圧倒的に人気がある。この前の生徒会選挙も含めて全校女子生徒は麻王にメロメロ。麻王を敵に回すか、碧?」
碧は、
「……クソッ、麻王って最強かよ~!」
「…………。」




