野球体育祭➁
●野球体育祭➁ 110話●
観衆は事前に今年の白桜の体育祭は野球と知っている。甲子園優勝チームとバスケインターハイ優勝チームのメンバーが全員出る事も分かり観客は三万を超えた為、白桜の広いグラウンド一枚に同時四試合で試合は進行して行く事になった。
一方、
伊藤が同じクラスの久保を連れて来る。
「芯、久保を連れて来たぞ?」
芯は、
「ありがとうございます、伊藤先輩!千条、坂季、藤原、全力投球でいいぞ!」
坂季は、
「……いや、その先輩は素人でしょう?軟式でも絶対に無理ですよ。」
周が歩いて来ると、
「俺も麻王と戦いたくてな。キャッチャーは任せろ。」
碧は、
「なら、久保先輩は要らなくなるだろ?」
久保は、
「俺、帰ってゲームするって!」
伊藤は、
「久保、文音が応援に来ているぞ?男を見せるチャンスだぞ?」
久保は、
「……マジかよ、伊藤?」
伊藤は、
「いずれ海外に行く文音に連絡先一つ聞けないならもうおまえの人生で文音に会うことはないだろうな。」
久保は、
「……や、やるよ、俺」
「頑張れよ。それと千条、坂季、藤原、素人草野球チームには軽い球速で十分だろ?」
藤原は、
「久保先輩がキャッチャーですか…絶対に敵チームにバットを振られたらパスボールのオンパレードですよ。」
芯は、
「久保先輩は剣道でクソほど鍛え上げているから目を閉じないぞ?」
碧は、
「周には対麻王戦に備えてバッティングのみに集中してもらって久保先輩には試合でレベルアップしてもらう!」
千条は、
「……周先輩に神谷と三好か。それでも麻王先輩には無理でしょう?」
ハルトは、
「麻王のつくるチームにキャッチャーはいないだろ?」
駿は、
「でもそれって青空が来たら俺たちは終わりっぽいエンディングじゃね?」
伊藤は、
「ま、後はお前たちで決めろよ。」
芯は、
「………え?伊藤先輩は?」
「俺はお前たちと違って麻王の三番目のファンだから心海チームを助けに行くよ。」そう言うと伊藤は歩いて行く。
「ええぇぇぇ~!」
赤羽は、
「……じゃあ僕たち一年も正々堂々、麻王先輩と戦いたいんで失礼します。」
神谷、坂季、椿たち一年グループも歩いて行く。
優也と碧は、
「オイオイ、マジかよ~……あれ?久保先輩がいないぞ?」
駿は、
「……久保の野郎……心海チームに逃げたな。麻王は行方不明だけど文音先輩は心海たちと暮らしているんだろ?なら絶対に心海チームに合流するしな。」
碧は「あんの~、スペルマ久保の野郎~!」
ハルトは、
「赤羽たちの正々堂々が俺たちにも合っているだろ?それに愛たちも合流するだろうしな。」
駿は、
「で、その麻王がこの体育祭に来なかったら?」
「……………………。」
白桜体育館、壇上に愛枝、愛に心海、神子、結衣、香織、弓、ひかり、滝、楠葉、杏も連れて来られている。
顔を腫らし、ジャージもボロボロになった滝は意識を失っている。
コンバットナイフを持った京悟は、
「メス共、声を出せば即この糞ガキの胸をこのまま刺し貫くからな。雷太、タツキ、全員をワイヤーで縛れ!」
「おう!」
ルミは、
「私が連絡するまでは手を出すなって言ったでしょ!」
京悟は、
「生徒も客もグラウンドの試合に夢中で誰一人来ねえよ、ルミ。それにこれはテメーの私怨だろうが!手伝ってやってんだよ!!!!……レイプでヒイヒイ言いやがって…フヒ…」
ルミは、
「…………何で…そのことを?京悟、アンタ…もしかして…あの時の覆面男…?」
続けて京梧は、
「ヒュー、ようやくかよ~!ああ、テメーを犯した時もテメーの弟ちゃんが邪魔して刺し殺したな。」
ガクガクと震え焦点が合わないルミは、
「………………。」
ワイヤーで愛枝たちの手足を縛り終えると雷太は、
「全員、縛ったぞ、京悟?バカみてえに人生転がり堕ちやがって、バカ女。おい、井上愛だったか?」
縛られている愛は、
「…………え?」
タツキは、
「そうそう、私のパパはアンタが二度と子供の産めない身体にしたヤブ医者だもんね~って!あれ?言っちゃったもんね~メンゴ、ルミ!」
「…………。」
壊された体育館の扉から麻王が懐中時計をダウジングして歩いて来る。
壇上5M手前まで全く気付かなかった京悟、雷太、タツキ、ルミたちが呆然としていると立ち止まった麻王はポケットに懐中時計をしまう。
京悟は、
「誰だ、テメー!この糞ガキの胸を刺し貫くぞ!!!!」
眠っている愛枝たちを見るとタツキは、
「…………け、京悟、全員、眠っているぞ!」
京梧は、
「クソッ!!!!!!」
京梧は自ら愛を刺し殺しに行こうとする。麻王は上着の中の左ショルダーホルスターからサイレンサー付きのグロックを抜くと既に京悟が首から血を吹いて倒れ壇上でビクンビクンと痙攣している。
麻王はショルダーホルスターにグロックをしまうと、
「銃音が全く聞こえなかっただろ?特殊サイレンサーでな。」
雷太は、
「…………テ、テメー、そ、それはモノホンの銃か?」
「マッチョ軍曹と猫タトゥーにチャンスをやるよ。まだ生きたいだろ?」
そう言うと麻王はグロックを体育館の床に静かに置く。
雷太とタツキは、
「…………。」
「戦え、万が一、俺に勝てば少なくともこの場からは逃げられるな。足首に隠しているナイフを使ってもいいぞ?」
杏の後ろにいた雷太と反対方向端の愛枝の後ろにいたタツキはそのまま足首のナイフで杏と愛枝を同時に突き刺そうとするとそのまま脳天から血を吹いて倒れる。
麻王はアンクルホルスターのコルトパイソンをしまうと、
「ルミだったか?」
京梧、雷太、タツキの光景にその場にへたり込み失禁しているルミは、
「…………。」
「弟さんの分まで身体を治して生きないか?」
「……治して?…………これまでに……わ、私は……」
「地獄はある。天国は知らないけどな。再び利用され堕ち惨めに死に地獄に逝くか生を拾うかは自身で選べ。10秒やるよ。」
「…………10。」
麻王はグロックを拾うと、
「こんな簡単な答えに時間いらないだろ?」
保健室
滝、楠葉、杏が三つのベッドに寝ている。
心海は目を覚ます
「…………麻王兄…………トオルは?」
椅子に座っている麻王は、
「隣でスースー寝ているよ。」
起き上がると心海は、
「医者に見せないと…」
「治療はしたよ。おまえを慕って集まってくれたチームだ。トオルや楠葉、杏の為にも最後まで闘え。」
「うん……愛枝姉が執事の人に連絡しようとしたら襲われて……グローブないよ。」
「ほら、これな。俺のグローブを使え。」
ベッドの上でグローブの中に手を入れると心海は、
「……自在に動くね?生きているみたい。アイツらは…?」
「その記憶は耐性の強い心海しか覚えてないよ。」
「……殺したの?」
「俺をなんだと思っているんだ?」
「えっと…闇医者に闇の仕事人に…外れエルフの妹を大切に救ってくれたお兄ちゃん。」
心海の隣のベッドのすっかり腫れが引いた滝は、
「……RPGの話ですか…?」
隣のベッドの滝に三角絞めをすると心海は、
「せっかくいい雰囲気だったのに~!」
「イテテテ、タップ!タップ、心海先輩!」
「外野ぐらいなら出てやるよ。」
「ホントに~!?」
(白桜&新宿東合同チーム)
一番センター 夏葉麻王
二番セカンド 井上愛
三番キャッチャー伊藤聡
四番ピッチャー 夏葉心海
五番サード 滝トオル
六番ファースト 篠原杏
七番ショート 九条弓
八番レフト 久保豪気
九番ライト 東神子
控え、一条文音、大川楠葉、赤瀬愛枝、夏葉美緒、橘結衣、名古屋香織、木村棗、上杉ひかり
心海は第一試合から110km/h前後のストレートを投げる。
楠葉、ひかり、トオルの内野手は驚くほど上手く捌く。
バッティングは滝、楠葉、杏が草野球チームの100km/h程の球を軽々と打つ。
キャッチャーの伊藤が連続本塁打を打つ。
ライトに高く飛んだ打球にセンターの麻王はライトで屈んでいる横を通り過ぎてスライディングキャッチをする。
セカンドの愛は、
「……やっぱりうまいなぁ…」
チェンジでベンチに戻って来ると麻王は、
「伊藤先輩、昨年の秋季大会はありがとうございました。野球も本当にうまいですね。」
プロテクターを付けたままベンチ椅子に座ると伊藤は、
「あの東中三人組はリトル経験者らしい。俺は三年、最後のウインターカップに備えて切り込む体幹の訓練をしていてな。それに麻王と一緒に将来、草野球をしてみたくてな。」
楠葉は、
「やっぱり参加してくる他校生も上手いですね?」
神子は、
「楠葉ちゃん、代わって~!」
杏は、
「ミスしてもいいんですよ。勝つだけの野球はつまらない、ね、夏葉先輩?」
「美緒も結衣たちも一試合で全員出るぞ。」
「えぇぇぇぇぇ~!」
大きなフライに結衣や神子は心臓が止まりそうになるが麻王と交代した弓もスライディングキャッチをすると大歓声が起こる。
神子も結衣も、
「さすが上手いね、弓ちゃん!」
弓は土埃りを払いながら、
「ダイビングキャッチならもっと盛り上がるんですけどね~。麻王先輩から頚を傷めるから絶対にダメってね。」
二回戦が終わって休憩。美緒や神子たちが弁当を用意している。
麻王は、
「じゃあ、一口ずつもらうから他の皆にも分けていいか?」
美緒は、
「いいよ、麻王。久保先輩も頑張っているもんね!」
「麻王兄、私の弁当だけ久保が食べてるんだけど?」
「久保先輩の好プレーを見たら独占できないだろ?」
久保は、
「ウェ、………生ぽくって吐きそう…。」
心海は、
「食えー、食うんだ、久保豪気ー!」
「……フルネーム?……丸々、生のシャケ…何か酸っぱいし…オェ~。」
神谷たちが歩いて来る。
「麻王先輩、夏までの僕たちじゃあないんで絶対に勝ちます!」
神谷の言葉にも麻王は弁当を食べている。
神谷、赤羽、神戸、千条、榊はそれぞれ、
「僕が勝ったら心海をもらいます。僕(赤羽)は美緒先輩。僕(神戸)は神子先輩。僕(千条)は赤瀬先輩。僕(榊)は愛先輩。」
手を止めると麻王は、
「もらってくれるのか?年下彼氏ブームだしな、どうぞ、どうぞ。」
心海、美緒、神子、愛枝、愛は、
「ホントにコラ~!」
一年メンバーは帰って行く。
楠葉は、
「夏葉先輩!私のパパは玩具メーカーなんです!結婚したら先輩は社長ですよ!それに先輩の好きなトランプにもどんな細工できますよ!」
「ハズレクジを引くぞ?」
「…え?」
「結婚にまで親の七光りを使っているようじゃあ100%不幸になるぞ。それに大川とは友人のままでいたいしな。」
「……夏葉先輩…」
杏は、
「ですよねー、先輩!?」
「でもトランプの細工は魅力的だな。ま、プロはほぼ細工しないけどな。」
「…………。」
野球部更衣室横
愛は、
「……麻王君、さっきのルミって女性は?」
「患者の個人情報は話せないな。」
「……患者。」
「ただ当時のカルテは欲しいから愛のお父さんにお願いするよ。」
「うん、迷惑をかけてごめんね。」
「医者自体の知識や技術、経験値の差……患者側の理解度の差……医療問題は一口で言えないほど難しくてな。」
「……お父さんからそういう話は聞いたことなくて…」
「彼女は新しい人生を一日も早く歩きたいと希望している。裁判にはならないよ。」
「……卑怯だよ。」
「お前たち家族が前向きに捉えるか後ろ向きに捉えるかは彼女にはどうでもいい事だしな。」
麻王は歩いて行ってしまう。
「……だよね…」
【白桜&新宿東合同チーム】
一番センター 九条弓
二番キャッチャー伊藤聡
三番ショートー 夏葉麻王
四番ピッチャー 夏葉心海
五番ライト 滝トオル
六番ファースト 篠原杏
七番セカンド 上杉ひかり
八番レフト 木村棗
九番サード 大川楠葉
控え、一条文音、東神子、久保豪気、赤瀬愛枝、井上愛、夏葉美緒、橘結衣、名古屋香織
視聴覚室
伊藤は、
「…全64チームで決勝まで六回戦か。心海一人でキツくないか、麻王?」
予定表を見ながら麻王は、
「後期高齢者チームか……応援したいなぁ。奥多摩千田高校野球部ってふつうに野球部だな。」
美緒と愛枝は、
「麻王!」
「ああ、厳しくなるのは五回から九回に変わる五回戦残り4チームからですね。スポーツは参加することに……心海、五回戦からはチームの要のショートを任せられるか?」
「……麻王兄、いいの?」
「トオル、楠葉、杏、それに他校の人たちや何よりも白桜自体を応援してくれている観客に応えるのも大切だしな。」
神子は、
「……でも順当に行くと明日、日曜午後の四回戦で赤羽君たち一年チームに当たるよ?」
麻王は、
「心海のMAXが120km/h……ストレートにカーブのみか。神谷、三好、坂季の三人にはかなり厳しいな。」
棗は、
「麻王が出てあげたら?」
「野球が力勝負のみならしていないよ。伊藤先輩、明日はキャッチャーを代わってもらえますか?」
「………………。」




