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生息環境

二話入っています(笑)

●生息環境 107話●


二年スポーツ科クラス 六限目

生物の授業。中間考査も近く教室は緊張感に包まれている。

麻王はペンを置いて目を閉じている。

後ろの席の優也が声を掛けるが麻王は全く反応しない。


突然、麻王が立ち上がると教壇のリサは、

「ど、どうしたの、夏葉君?」


リサの横に行くと麻王は、

「トイレですよ、先生。」


リサは、

「ホーアーウェルカム…」


ドアを蹴破って麻王は走って行く。


「…………。」


呆然とリサは、

「……ドアを蹴破るほど猛烈にうんこしたかったんだ…」


クラスメートの田中好子は笑いながら、

「荒木先生、夏葉君は神子と同じ風紀委員ですよ~。」


リサは真剣に、

「だからドアを蹴破るほど猛烈にうんこしたかったんだよ。」


好子は、

「…………。」


麻王の席の右隣、愛枝の席、さらに右隣の愛の席を見るとハルトは、

「……愛と愛枝は見たか、芯?」


麻王の左隣の席の芯は、

「…そう言えば五限目終了後以降見てないな。」


ハルトと芯の会話を聞いていた駿は、

「先生、行って来ます!」


優也は、

「俺も行くぜ!」


ハルトは、

「俺も!」


碧は、

「よっしゃ!俺も!」


駿、優也、ハルト、碧の四人は走って行く。


リサは、

「…………みんな、猛烈にうんこしたかったんだ。」


「…………。」



白桜高校 総合体育館

麻王が体育館倉庫のドアを蹴破ると愛枝と愛が口、手、足を縛られている。スーツ姿の男はそのままドアの下で気絶している。


麻王は男の容態を診た後、身元を調べている。

「……会社員か。」


愛枝と愛が麻王を見て声を出そうと、

「んー、んー。」


「ああ、忘れていたな。」


愛枝と愛は、

「麻王(君)!」


麻王はため息交じりに、

「教師っぽいこの男に用事があると言われてこの体育館倉庫まで女二人なら安心とついて来たって所か?」


愛は、

「……な、何で?」


「気絶している男の海綿体がな。まあ、単独犯だろうな。」


愛枝と愛は、

「へ?……キャッー!!!!」



「二人のアクセサリーが反応してないな…」


愛枝は、

「ハハ、先日の予知占いで使ったからじゃないかな…」



麻王の下に来た駿たちの後ろに教師たちが走って来る。

「さすが夏葉だな。後は任せて赤瀬と井上を保健室に連れて行ってくれ。パトカーもすぐに来る。」


立ち上がると麻王は、

「そうですね。スリ傷もあるし二人とも保健室に行くか?」


愛は、

「……うん…」




二年スポーツ科クラス


リサは、

「あら、赤瀬さんに井上さんも………夏葉君、ウンコは終わったの?」


自身の席に座ると麻王は、

「先生、大人はウンコなんて言いませんよ。」


「……言わないの?じゃあ何て言うの?」


優也は、

「……カラむと火傷(やけど)するぞ、麻王?」

麻王は、

「いいよ。先生、排泄物の成分は?」


リサは、

「え?先生の質問に麻王君の質問?う~ん……昨日、食べたプリン?」


麻王は、

「食べカスだけでは腸内を移動できませんよ。80%が水分で残る20%のうち1/3が食べカス、残り1/3が腸内細菌、1/3がはがれ落ちた腸粘膜。つまり食べカス、腸内細菌、腸粘膜の三つが排泄物ということになりますね。」


リサは、

「私はプリンだって~!」


隣の席の芯は、

「ほら、結局、火傷しただろ、麻王?」


保健室から帰って来た愛は、

「あのね、夏葉君、放課後に話があるんだ。」


クラス委員の成美は、

「愛、鬼の愛枝が保健室にいる間に?積極的~!」


「ち、違うから!」


麻王は、

「後、三分で六限目が終わったら即帰るけど?」


愛は、

「………………。」


好美は、

「麻王君~今、愛の心は”夏葉君、待って~!”だよ?」


リサは、

「授業中ですが?」





放課後 

白桜高校屋上 


「誰もいないね。」


「ああ、愛と二人は久しぶりか。」


「そ、そうだね。麻王君って呼んでもいい?」


「いいよ。で、話は?」


「……夢のことでね?……夢が具現化するんだ。」


屋上の柵近くに行くと麻王は、

「夢の中での具現化?」


愛は照れながら、

「よく分からないけど、アクセサリーの前で強く願うと夢の中で麻王君が現れるんだよ。」


「それで?」


「……それでね……その時々だけど色々な夢を見られるんだよ…デートしたり、一緒に暮らしていたり…」


「単なる夢じゃないのか?」


「ホントに夢じゃないんだよ。夢ってちぐはぐでしょう?現実そのものなんだよ。」


「問題があるのか?」


愛は赤面しながら、

「ないよ。文化祭の後に麻王君がアクセサリーをくれたでしょ?それが原因かなって。」


屋上からグラウンドを見ると麻王は、

「……もう高校二年だしな…愛ぐらい気立(きだ)ても()かったら好きな男もいて、キスの1つもしてるか…」


「………麻王君。」


「で、その現実そのものの夢を他に知っているのは?」


愛は下を向いてもじもじしながら、


「昨年のクリスマスに麻王君からアクセサリーをもらった……全員だよ。」


「性の話は医学の世界でも専門の科以外からはあまり聞かないし言わないな。」


「……ま、麻王君はない……の?」


「あるよ。7年に一度ぐらい?」

「7年に一度?……(せみ)?」


「現実に土の中で7年も過ごすセミはいないな。種にもよるけど1年~最長で5年か。でも理由は地中の生息環境だと思うけど。」


「生息環境?」


「地中は比較的環境が安定していて種を残しやすいがゆえに交配も少ないのかもな。だから蝉は地上には一週間程しか出ないのか又は地上が嫌いなのかもな。」


「身近な(せみ)も不思議な生き物なんだね?」


振り返ると麻王は、

「生きものはすべて生まれ育った地がいいんじゃないか。」


「……帰るの?」


愛の予想に反してあっさりと麻王は、

「いつか美緒と心海が自立したら帰るよ。」


「……そこの生息環境は?」


「地獄と同じぐらいかな。いや、もっと酷いな…」


「…………そんな場所に?」


「それでも故郷だからな。」


「………麻王君はいつも悲しいなぁ。………でも一緒に行きたいなぁ。お風呂は?」


「ないけど。」


「じ、じゃあ、我慢して二日に一回は?」


涙を拭う愛に麻王は、

「ほら、来い。」


愛は麻王の胸で泣き続けると、

「……麻王君は優しくてみんなの幸せを考えるけどホントは一途だもんね。私も強く慣れたら行きたい。」


「約束するよ。」


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