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夏の甲子園 準決勝と決勝

●麻王たち二年、夏の甲子園 一回戦 102話●


20時

白桜高校 校門


陸上部の片付けで遅くなった白桜ブレザー姿の心海が一人校門から出て来る。


大型バイクのシートで器用に腕を組んだまま仰向けに寝ている麻王がいる。


クスッと笑うと心海は、

「麻王兄!」


眠ったまま右手に持ったヘッドマイクを心海に渡すと麻王は、

「本日のドライバーをさせていただきます、夏葉麻王です。」


クスクスと心海は、

「バイクの白タク~!しかも寝たまま渡すかなぁ。」


起き上がると麻王はバイクボックスからフルフェイスのヘルメットを心海に渡す。


「そう言えばヘッドマイク内蔵型だったな。安心しろ、ヘルメットは心海用に一つ購入したよ。」


心海は、

「うん、自転車は?」


エンジンを掛けると麻王は、

「合法的に二人乗りする方法がこれしか思いつかなくてな。お腹も空いただろ?帰るぞ。」


「うん!」




後部シートの心海は、

「……もう身体の方は大丈夫なの?」


運転席の麻王は、

「意識が飛んで倒れる時に走馬灯の中に心海が見えた。まだ死ねないって強く思ったよ。」


「……麻王兄…」



10分後

「ちょいちょい、麻王兄、さっき通りすぎたファミレスがソフトクリーム食べ放題で2000円だって!」


心海の“だって!”と同時に後方50Mからサイレンが鳴る。


後部シートの心海は、

「えっ?なんでなんで!」


サイドミラーを見ると麻王は、

「心海が横向きに座っているからな。」


「だって、スカートでがに股はムリだよ~!」


アクセルを回すと麻王は、

「逃げるからしっかりつかまっていろよ。」


「えぇぇぇぇ~カメラに撮られるよ~!」


「大使館の青ナンバーなんだけどな。」


「パクってるじゃん!」


「あいつら交通違反しまくっても捕まらないんだから少しぐらい借りてもいいだろ?」


クスクスと笑う心海は、

「全然理屈になってないよ~!」


麻王の大型バイクに並ぶと女性白バイ隊員は、

「無視するなぁ~!ってなんで青ナンバーなの~!」


ハーフヘルメットにゴーグルの麻王は、

「またな、優里。」


「……えっ」


片側四車線の幹線道路から大型バイクの後輪を滑らせ、バイクの右ステップの火花を散らしながら反対車線に入ると麻王のバイクは猛スピードで元来た道を走って行く。


優里は赤色灯とサイレンを鳴らしたまま幹線道路の高架の下で停まる。


「……ボリジョイサーカス?…“またな優里”…またな優里…ああ…誰?」





ファミレス

ソフトクリームを頬張る心海は、

「…さっきの誰、麻王兄?」


「昨年のウインターカップで白桜ロッカーを探している時に絡まれたバスケ大好きお姉さんだよ。」


「……麻王兄ではなくバスケ大好きなの?ってよくわかったね?」


「指紋、声紋、耳紋…人には歩幅や動きにもクセがあるからな。」


「麻王兄は警察向きだと思うんだけどなぁ~。」


「橘さんは陰で俺を調べているからな。そう遠くない内に合いまみえるんじゃないか。」


「原発事故を防いでやったのに酷くない?」


「あの人も家族を養うために必死なんだよ。」


「……そうかなぁ…」

店員を呼び止めると麻王は、

「すみません、焼肉定食四人前と三人前はテイクアウトにしてもらえます?」


「そんなに食べないよぉ~!」


「食べるだろ。後、美緒と文音にも三人前な。ああ、お弁当おいしかったぞ。」


「また作ってあげるね!」




バスケインターハイ優勝をした青空が野球部メンバーに甲子園の宿舎で合流する。

バスケ部のメンバーの芯や優也たちに一年の赤羽や神戸たち五人も合流する。



三塁側白桜ベンチ


その壮大な球場と観客席に野球部ユニフォーム姿の赤羽と神戸は、

「……ハ~これが甲子園グラウンド~!バスケ人生だけの俺たちが甲子園のベンチに入れるって俺たち白桜高校に来てマジ良かったよな。」


神谷、坂季たちは、

「俺たちも周先輩たちのようにウインターカップには出るからな!」


青空はニコリと笑うと、

「期末考査の成績で出すと思っているのかな?」


青空の言葉に千条は隠れる。


芯は冷静にグラウンドを見ながら、

「シードの俺たちには一回戦はないから二回戦からだな。神谷たち頼もしい一年も加入した!もう悔しい思いはしない。今度こそ絶対に勝つ!」



【二回戦 道後第一高校vs白桜高校】


1番ショート 神谷智

2番サード 牧野芯

3番センター 夏葉麻王

4番セカンド 神薙青空

5番キャッチャー上杉周

6番ファースト  名古屋駿

7番レフト  三好哲也

8番ライト    三明優也

9番ピッチャー 千条司


道後第一高校は、一回戦でキレのあるフォークを武器に甲子園初出場初完封を達成した身長1M96cmの一年生本格左腕の河内(かわち)明瀬(あかせ)、左投げ左打ち MAX152km/h を主軸に白桜高校に挑む。



一回の裏、いきなりピンチの千条の下に白桜内野手が集まっている。


ショートの神谷は、

「こいつ、全然、球が走っていませんよ?坂季か藤原の方がいいんじゃないですか?」


千条は初の甲子園に緊張し過ぎてかなり弱気になっている。


セカンドに入っている青空は、

「周の配球やキャッチングは高校生キャッチャーでもトップ3に入る。それにセンターには麻王がいるよ。千条、麻王を見なよ。」


青空の言葉に緊張で震えが止まらない千条は麻王を見る。



センター浅くで守っている麻王を見ると千条は、

「麻王先輩…………あのー…いつも通りですけど?」



周は、

「いつも変わらない麻王はすごいと思わないか?それに麻王は、いつでもレフト、ライトに走れる準備をしている。だから優也や三好はライン際のファールもアウトにしやすい。」


千条は、

「そこまで考えて……テレビで甲子園を観ていて…麻王先輩がホームランを打ってそのまま歩いて行く姿がカッコよくて…。」


ファーストの駿は、

「ここまで戦って甲子園に来た相手チームや相手ピッチャーに敬意を払う……だから麻王は喜怒哀楽を見せないんだよ。」


青空は、

「甲子園常連になった白桜高校の余裕だよ。香明学園とあやと高校、そしてウチを除けば千条がどこに行ってもエースか候補だと思うよ。」


千条はセンターの麻王を見ながら、

「とにかく思いっきり投げます!後はお願いします!」


「おうよ!」




一回裏

河内のストレートに一番バッターの神谷は苦しくカットを続ける。それ程に制球力のあるボールが来る。


最後は河内のフォークで神谷はあっさり三振。


静岡開催のインターハイに参加していた芯だが一日2000本の素振りをして来た。その芯がシャープなスイングでライト前にツーベースを打つ。


麻王が左バッターボックスに入る。


白桜ベンチの駿は、

「……左対左かよ…」


敬遠気味の一球目。

麻王は左肩のユニフォームを握り直すと二球目の外角へ河内が逃げた緩いボールの瞬間にすかさず芯が三盗する。

三球目は低めのフォークでボール。

四球目は頭へのブラッシュボールに麻王は身体をそらす。

五球目のキレのいいど真ん中のフォークを軽く振ると麻王は一塁ベースに歩いて行く。



レフトスタンド上段を見る白桜ベンチの神谷は、

「……木製バットなのによく飛ぶなぁ~。」


藤原は、

「……あれをレフトスタンドに持って行かれたら左ピッチャーはもう投げる場所はないな。」


坂季は、

「早い目に追い込まないと千条の借金返済があるからな。」


神戸は、

「あっさりと打てるのがすごいけどな。」


ホームに戻って来ると、

「いいストレートを持っているのにな…。」


そう言うと四番バッターの青空とハイタッチをする。


続く青空が香明学園の上山を超える甲子園九本目の本塁打。


続く碧のホームランで勝負ありかと思われたが千条はフォアボールに毎回連続ヒットを打たれ続ける。


終盤まで道後第一高校8対白桜高校9と(もつ)れる。


7回にセンターの麻王がピッチャーマウンドに上がる。麻王は全球高目か低目のストレートのみでゲームセット。



落ち込んでいる千条に青空は背を叩くと、

「香明なら二回目はなかっただろうけど白桜はとことん使うから落ち込む暇なんてないよ?」


「……は、はい!」


一言だけ言うと宿舎に戻る。


三回戦、四回戦は、坂季、藤原、千条に麻王のストッパーで勝ち続ける。


準決勝五回戦、航空高校とあやと高校は激戦に思えたが、あやと高校四番の弥生律が三打席連続三振であっさりゲームセット。


宿舎

芯と碧は

「速水の投球が凄過ぎたな。春より更に成長しているな。」


ぼやくようにつぶやく。



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