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私は首をもたげて、死んでしまったアビゲイルの身体をまじまじと見つめました。流石にこのままにしておくのは目覚めが悪いです。
確か遺体を修復できる再生魔法があったはずです。私が意識を集中すると、遺体が光に包まれて徐々に生きていた時の状態に戻りました。
でも魂は失われています。そう考えた私はなんだか悲しくなってきました。アビゲイルとしての意識はありますが、私はもう死んでいるのです。自分で言っていて訳がわかりませんね。
グヴォォォォォォォォ!!
エンシェントドラゴンの習性でしょうか、無性に叫びたくなってしまい、咆哮を上げてしまいました。
大泣きするのと同じ感じでしょうか、なんだかスッキリしました。
意識はここにあるし生命なんて再び輪廻転生することを今の私は知っています。肉体の死など大した問題ではありません。
遺体はこのままにしておけませんが、自分の身体が燃やされたり埋められたり骨になったりするのは気分が悪いです。
丁度良い魔法がありました。私が集中するとアビゲイルの身体が宙に浮かび、永久氷土の中に閉じ込められました。氷の棺桶というわけです。
神は死んだ肉体を甦らせる魔法だけは私に授けてくれませんでした。ここまでが私がアビゲイルの身体にできる最大限のことです。
さて、これからどうしましょうか。
遺体の状態から、先程大穴に落ちてからたいして時間は経過していません。
今一番気になるのは私を攻撃してきたフードの人物です。まだ現場には痕跡など残っているのではないでしょうか。あそこに戻りたいですね。
この翼があれば地上まで舞い上がることは造作もないことですが、平穏な時代にエンシェントドラゴンの姿を見せるのはあまり良いことではありません。滅ぼした文明の末裔などに伝承として残っていたりするのです。
変化の魔法を使いましょうか。今ならアビゲイルの姿で試練の洞窟から出てきても辻褄は合うはずです。元の姿に変化していろいろ調べてみましょう。
私が意識を集中すると、視界がどんどん低くなっていきます。巨大なエンシェントドラゴンの肉体がアビゲイルの姿まで縮んでいるのです。
完全に肉体が固定されたところで、氷の棺に反射する姿を見て、自分が何も着ていない事に気がつきました。人間は不便なものですね。
私は魔法で元から着ていたものと似せた衣服を創造して身につけると、浮遊魔法で天井から上に伸びている大穴に向かって飛翔しました。
同時に投稿させていただいている、
何度も死に戻りで助けてあげたのに、全く気付かない姉にパーティーを追い出された 〜いろいろ勘違いしていますけど、後悔した時にはもう手遅れです〜
こちらもよろしくお願いします。




