8話
「しっかし、まぁ……。凄まじいの一言ですねぇ。そこそこ強いんですよ、こいつら。強くなるコツとかあるんでしたら教えていただけると嬉しんですがね」
「我はお前と話す言を持たん。これと話せ」
「これ言うでないわ。えっちゃんと親愛を込めて呼ぶのじゃ、えっちゃんと。そして貢げ」
「……」
なんか無視されたんじゃけどー。妾かなし。
「こちらのお嬢さんは……。娘さんか、何かで?」
「え、妾これと似とる? のうのう、これと似とる? もう一度聞くがこれと似とる? のうのう、のうのう」
『爆笑不可避』
妾、想像を絶する心理的負荷により、涙目になりながら男の裾を何度も引っ張る。これと親子に見えるのか。許さん許さんぞ。末代まで呪い尽くすぞ。むしろ末代にするぞ。あと笏よ、薪にして焚べるぞ。何、小刻みに振動しとるんじゃ。無駄に器用なことをするでないわ。
「あー……。似ちゃあいませんね。旦那さんは大変逞しいですが、お嬢ちゃんは愛くるしい。こりゃ将来は美人さんになりまさぁ」
「じゃっろー? 妾、可愛いじゃろ。妾、ぷりてぃじゃろ。もっと褒めよ、もっともっと褒めよ、讃えよ」
「流れるような黒髪がお美しい。……後十年か、十五年遅く出会いたかったですねぇ」
「じゃっろ、じゃっろー。じゃが、後半しみじみ言うのやめよ」
さらっと心底残念そうな顔をするなし。お主らみたいなのが猿とそう変わらんかったときは、もっとバインバインじゃったんじゃぞ。じゃがあれって女子ウケが良くないのよねぇ。ほら、妾って万人に愛されたい系妾じゃし。この姿なら老若男女みんなかわいいって言ってくれるのじゃよ。
「あ~、もしよろしかったらなんですがね。一つお聞きしてもよろしいですかねぇ?」
「なんじゃ、良いぞ。妾は褒められて機嫌が良いからの。もっと褒めよ」
「旦那さん達はどこから来なさったんで? 控えめにいって、そうですねぇ……。なかなか個性的な格好をしていらっしゃるでしょ?」
「確かにのぅ。でも似合っとるし、妾かわいいじゃろ?」
羅睺はぼろっぼろの黒染めの道着じゃし、妾は……一般的な閻魔っぽい格好よね。ぱっとみてわかりやすい格好って大事じゃし。正直、あんまり可愛くないから好きじゃないのよねぇ、この格好。ま、妾自身が可愛いから何着てもぷりてぃなんじゃけど!
「大変可愛らしいと思いますねぇ」
「じゃっろー。もっと褒めよ、もっと褒めよ」
再度、裾を引っ張りながら正直で嘘偽りない真理を述べるように男に催促する。
「ははは、褒める……。いえいえ、胸の内を、思ったことを、見たままを正直に言うのは構いやせんが、質問にもお応えただけると嬉しいんですが、どうですかねぇ?」
「ま、いいじゃろ。妾達はのぅ。別世界から来たのじゃ! ちなみに羅睺は亡者な。信じがたいが一回死んどる。あとこの笏は……笏子じゃ。今名付けた」
『いーやー!!!!』
「はぁ……、えぇっと、どういうことで?」
まぁ、最初からちゃんと説明しないとわからんよね。閻魔の概念なさそうじゃし、適当にかいつまんで説明したろ。