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7話

 射出速度的に一秒かからずに妾にあたっちゃうんですけどぉ? くっ、可愛さが罪ならばこれは妾に対する罰なのか。だいたい妾みたいなプリティな子に一瞬でも矢を向けるのが間違いなのよね。


この珠のようなお肌に傷がついたらどうしてくれるのか。もうあれよ、人類の美の基準がお肌に傷がある乙女に変わってしまうんじゃよ?


 妾に傷がつくとそれが『ぐろーばるすたんだーど』になっちゃうんじゃよ? その責任が取れるのか。その細腕に世界を担えるのかのぅ……。


 そんな事を考えている間も矢は刻一刻と迫ってくる。あ、美少女の頭に矢が刺さっとるのもなかなかパンクでいいんじゃないかの。なんか最近世の流行りってよくわからんところに向かったりしておるし、矢が頭からとかそれも一つの個性?的なものと解釈もできんかの。


う~ん、どう思うかの笏よ、と問い掛けようとするも妾の思考速度に追いついてないのか、文字表示が間に合っとらんし。


 横線一本半じゃ何言っとるのか全然わからんのじゃけどぉ! 全く役に立たない笏よね!


 しかし、小奴ら皆構えが同じじゃし、師は一人と見たほうが良さそうじゃな。多分少し離れたところからこちらを伺っとるのが、それっぽいの。羅睺じゃなければ誘いこまれた時点で死んどるじゃろうし、なかなか優秀なのかのう。


 ま、どうするかは会ってから考えればいいじゃろう。妾としては『どう転ぼうと』構わんしの。さて、程よく思考が横道にそれたところで改めて今、一番の問題について考えようかの。ずばり、頭に矢が刺さった美少女は可愛いか否かじゃ!


 妾的には良いと思うのよね。ほら、一発で只者じゃないって思うじゃろ、矢に頭が刺さっとったら……、あ、逆じゃ逆、頭に矢が刺さっとったら。ノーメイクでお化け屋敷のレギュラーにもなれるし、死者も一発で只者じゃあ二と思ってくれるじゃろうし。


 これはもう受ける方向で満場一致かなと? と妾の中の全閻魔が合意を示しかけたその瞬間、電流走る! 


 真正面から矢が刺さったらグロいんじゃと……。 いかんいかん、ついうっかり右から左に横から矢が貫通している姿でイメージしとったけど、今のコースだと妾の額に『くりーんひっと』してしまう。それはだめじゃ、それは嫌じゃ。流石に真正面からはのーさんきゅーじゃ! 


 首を動かして横に受けようと画策するも矢がもう額から数ミリ程度しかなくどう考えても間に合わぬ。むー、せっかく妾が新たな境地に一歩踏み出そうとしておったのに水を刺された気分じゃ。


 全くもう全くもう! とぷりぷりと可愛く怒る仕草を脳内で演出する。ほら、こういうのって大事じゃろ。好感度をあげる機会を妾は逃さないのじゃ。


 と、いうわけで矢が刺さるのは『止めておく』ことにした。


「へ?」


 ストンと妾の頭上に突き刺さった矢とともになんかすっごく気の抜けた声が妾のかわゆいお耳に届く。まぁ、驚く気持ちはわからんでもないんじゃけどぉ……、後ろ『羅睺』がおるぞ? 


 背後から握りしめられた頭部は木の幹にしたたかに打ち付けられて、妾は痛そーじゃのーとぼんやり思った。痛さを感じるまでもなく気を失っとるじゃろうけど。


 さてと、そろそろ隠れとるのを呼び出そうかと考えているとパチ、パチとやや疎らに拍手の音が草むらの向こうからこちらに近づいてくる。


 こっちが気づいとることは知らんじゃろうし、殺されないと高を括ったか、それとも妾の行いから仲間を殺されるのは許容できんと飛び出したか。どちらにしろ、そのまま逃げるよりかは胆力があるの。密かに評価を上げつつ音の方へと視線を向ける。


 するとそこにはボサボサの灰色の髪をした二十半ばの男がいた。いやー、まいったまいったといった風に薄ら笑いを浮かべる姿は普通、軽薄そうに映るものじゃが、不思議と嫌らしくは感じぬの。むしろ愛嬌があると言っていいかもしれん。持って生まれた性分か。なかなかに得難いの。


 男はそのまま怯えを感じさせぬ足取りでこちらに近づき羅睺と妾の眼の前で恭しく、少々芝居がかった風にお辞儀をしてこう述べた。


「いやぁ、すいやせんねぇ。あっしは灰色髪のアージェンと申しまして。仲間内では『灰被り』と呼ばれてまさぁ。不肖ながらここらの……。いやいや、こいつらのまとめ役の真似事をしておりやす。以後お見知りおきを、旦那さん方」


 とりあえず喋り方が胡散臭いとか、そういうのは置いといて。妾の心のなかで此奴のあだ名が『シンデレラ』に決定した瞬間じゃった。




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