表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界探偵  作者: 黒助
1/3

序話

この小説はいわゆる「探偵もの」ではありません。推理シーンの欠片もありません。基本的に異世界でファンタジーのつもりなので、剣や魔法があっても許せる方のみお読みください。

「あ〜、ヒマだ〜」


 俺は事務所のソファーにだらしなくねっ転がっていた。もともとくびれたスーツがさらにシワになる。まあどうせたいして変わらないので問題はない。


 俺の名前は狢沢恭一(むじなざわきょういち)、一応探偵だ。

 探偵というのは恐ろしく地味な商売だ。漫画や小説のように行く先々で事件が起こるなんてありえないし、あったとしても解決するのは警察だ。科学捜査を前に探偵の出る幕なんてのはありはしない。


「ヒマすぎて死ぬな…トランプでタワーでも作ろうかな」


 机の上に無造作に置かれたトランプの束を一瞥する。手垢のついた、きれいな絵が描かれているトランプは俺のお気に入りだ。なんとなく古めかしいところが探偵っぽくていいと思う。


 探偵である俺が何をして日々食いつないでいるかというと、もっぱら人探しだ。たまに浮気調査なんかも依頼される。

 もっとも依頼そのものが少ないので、常にカツカツだが。


「動いたらカロリー消費するよな…うんやっぱり寝よう」


 パラパラとめくったトランプを再び机の上に置き、俺は本格的に寝る体勢になった。すぐに睡魔がやってきて、意識が混濁する。いつどこでも寝れる体質は暇つぶしに最適だ。遊ぶよりなにより、俺は寝るのが好きだからな。


 正直、普通は探偵だけで生活していくのは無理だろう。だが俺はこうして生きている。その秘密は俺が行う『人探し』にある。


 この世には警察がどれだけ人手を動員しようと、時間をかけて綿密に手がかりを探そうと、決して見つけることができない行方不明者というものが存在する。


 トゥルルルッ トゥルルルッ トゥルルルッ


 心地よく意識を手放そうとした俺の耳に、無粋な電話の音が鳴り響く。安眠を妨害するものには容赦しないと心の中で誓っている俺だが、仕事用の電話に出ないわけにはいかない。あとひと月もすれば真剣に永眠の危機が来てしまう。


「はいもしもし・・・黒須さんですか、何の用ですか〜?え、寝てませんよ。失礼ですね。」


 寝てはいない。寝ようとしていただけだ。

 俺を担当する『目付役』の黒須からの電話だった。俺にしかできない仕事の連絡は、いつも黒須から来る。


「・・・はい、『神隠し』がでたんですね?はいどうもーすぐいきます。」


俺は全国でも数少ない、『神隠し』にあった人を見つけて連れてくることのできる人間なのだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ