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Save! Load! Continue?  作者: とっしぃ
学園編
97/300

97 249回と6回

何度も戦いノワールの動きにも慣れてきた

攻撃を防ぎ、躱し

数分くらいなら持ち堪えられるようになってきた

だがやはりそれだけだった


ノワールには隙が無い

攻撃しても躱され、痛いカウンターを貰ってしまう


もう何回やり直したかわからない

Continueもまた1回増えてしまった


Continueの上限回数はいったい何回なのだろうか

もしかしたら次が最後かもしれないという恐怖が常に付きまとう


Continueを恐れるあまり意識がLoadすることにばかりいき

ここぞというとき上手く動けない

カウンターで死ぬことを恐れあと一歩が踏み込めない


肉体的な疲労やダメージはLoadすることで回復できる

しかし精神的な疲労はどんどん蓄積されていく


何度やり直しても攻撃の防ぎ方が上手くなるだけで

一向に勝ち筋が見えてこない



俺の精神は限界を迎えそうになっていた





何百回目かのノワールとの戦い


(ここでわざと攻撃を受けて・・・くっ、よし、取った)


ノワールの攻撃で懐に入り込み腹を刺しに来るパターンを誘い

わざと刺され、ノワールの腕を掴む

そのまま腕を折ろうとした

しかしノワールは自分で肘の関節を外して防ぐ

手ごたえのなさに一瞬戸惑ってしまった、その隙をノワールは逃さない


顔面に頭突きをくらいノワールの腕を放してしまう

そしてノワールは反対の手で俺の腹に刺さったナイフを横に切り裂くように抜く

さらに肘をはめ直し俺の目をつぶしに来る


「ぅぐっ・・がああ!」


目を潰されたあたりでようやくLoadできた

腕を折ったと思ったら手ごたえがなくて戸惑い、隙ができ

そこからの一連の流れが速すぎてLoadするのが遅れてしまい、結果フルコースをくらってしまった


今回のは特別痛かった

最初の腹を刺されるのは覚悟の上なのでまだいい

しかし次の頭突きで鼻を折られたのだけでも痛いのに

さらに腹を裂かれ、あげく目つぶしだ


こういった肉を切らせて骨を断つ作戦は何度も試していた

最初はわざと攻撃を受けることに抵抗があったが今では気持ちの準備さえできれば耐えることができるようになってしまった

しかし結局今のを含め全て上手くいかなかった


(頭突きがくるならそれにカウンターを合わせて・・・)


そう思い同じパターンを試す

腹を刺され、ノワールの腕をとり、折るふりをして右手に持った短剣を頭突きに合わせるように突き刺す


しかし俺の右手はノワールの左手で抑えられ

まともに頭突きを受けてしまう


(これも駄目か・・・やばっ)


頭突きを受け顔面に衝撃が走ったかと思ったら

次の瞬間、腹から喉元にかけて痛みが走った

そして急速に意識が途切れる


______

Continue?

Yes/No

______


(これで5回目か・・・)


ノワールが腹に刺さったナイフをそのまま縦に切り上げたのかもしれない

腹から頭までを縦に真っ二つにされたんだろう


______

Continue?

►Yes/NO

______



淡々とやり直し、そしてまたLoadする

Load、Load、Load、Load、Load、Load、Load、Load、Load、Load

最早作業になっていた


ノワールの動きを覚え、痛みに耐えるだけの作業


光明は一切見えてこない


終わりは来るのだろうか


終わらせることは簡単にできるが




倒すことも、逃げることも、助けを呼ぶことも

どれも上手くいかない


二人を見捨てて俺一人だけ逃げることならなんとかできる

だがそんなこと論外だ

何のためにこんな苦労をしてきたのか





あぁ、そういえば一つ試していないことがあった




「あなたみたいに強い人がどうしてセルドロに協力しているのかは知りません・・・でもお願いします、俺たちのこと見逃してください。今回のことはもちろん口外しません。三人で王都から出て二度と姿は見せないと誓います・・・だから・・・」


俺はみすぼらしくその場に土下座した




______

Continue?

Yes/No

______



そして『命乞いも駄目』が追加された


「ははっ・・・・・・・くぅっ・・・・・うぅ・・・・うわあああああああああああああ!!!!!」


わかってはいたが、藁にも縋りたい状態だった


「どうすりゃいいんだよ!あんな奴に!・・・うぅ・・・どうやって・・・ああああああああ!!!」


これまで耐えてきた気持ちが一気に崩壊してしまった

一度壊れるととめどなく感情が溢れてくる


真っ暗な空間で一人ただただ泣き喚いた



どのくらい喚いただろうか

ここでは時間の感覚が無い



「くっ・・・ぐすっ・・・うぅ・・・」



目の前に浮かぶContinue?の文字


Noを選ぶと楽になれる


ただマルクとアリスも死ぬことになる


それもいいか・・・死んだ後のことなんて知ったこっちゃない






「・・・・・・・・いいわけないだろ」


俺が助けに来た時の二人の顔が脳裏に浮かぶ


「何のために、何回も、何回も、何回も・・・」


俺がいなければ二人はあっさりノワールに殺されてしまう


「俺がやらないと・・・いけないんだ・・・」


俺のことを慕ってくれる可愛い弟と妹


「二人を見捨てるなんてこと・・・できるわけがない」


それに待ってくれている人もいる


「アリシアとディルクにも会いたいしバーナードにも会いたいな。ウィル、リリー、セレナ、アルベドとだってまだまだ学園で一緒にやりたいことが沢山あるんだ。・・・・それに、マヤだって・・・まだまだこれからいっぱい幸せにしてあげなきゃいけないんだ・・・」


何より自分自身も当然幸せになりたい


「楽になるのはまだ早いよな・・・俺まだ14歳だし」


前世とこの世界でやり直した時間も全て加算するともう半世紀くらい生きている気もするが

そんなことどうでもいい



さんざん泣き喚いたからか少しスッキリした


幸いアーケードゲームのようにContinueに時間制限はないのか、この空間に来てから大分経つのに

死神に急かされることも目の前のContinue?の文字が消えることもなかった




「ノワールに勝つには初見殺しの技が必要だ」


だがノワールを倒せるほどの技を俺は使えない


「だったら使えるようになるしかないよな・・・」


何度も繰り返した中でそのことを考えることは当然あった

しかし何も思いつかず、Loadしてはすぐノワールと対峙しての繰り返しで

落ち着いて考える暇なんてなかった



「切り札になりえる魔法の案はいくつかある・・・ただ問題はレジストされるかもしれないことと、実戦の中で使えるようになれるかだな」


考えの一つは学園に入ってからずっと研究している魔法だ


「やるしかないか」


______

Continue?

►Yes/No

______



「マルク!アリス!援護してくれ!」

「わ、わかった」「うん!」


マルクとアリスの魔法を同時にノワールにレジストさせる

その隙にイメージする


(自分の足元に転移魔法陣をイメージするんだ・・・転移先はノワールの背後、あそこに転移魔法陣をイメージ・・・)


転移魔法陣の研究は学園に入ってから早5年

その間ずっと続けてきた


何十回、何百回と描いてきた魔法陣

それをイメージすることは容易い


ただ今まで上手くいったことは一度もなかった




今回も上手くいかない、だが何度も挑戦する

そのせいでまたマルクとアリスが犠牲になったりもした

しかしもうこの方法しか思いつかなかった


二人を死なせたくない一心から集中力が高まる





そしてついに通算249回目の挑戦




ノワールとの戦闘中という気の抜けない状態で

細部まで転移魔法陣をイメージする


(これで・・・ん?)


イメージの中の転移魔法陣が光った気がした


次の瞬間目の前からノワールが姿を消す

素早く移動したのではなく、一瞬で消えた


(消えた!?違う!!)


とっさに理解した


(消えたのは俺の方だ!)


右手に持った短剣を逆手に持ち替え

確認もせずそのまま背後に突き出す



「ぐふぅ!」


短剣はノワールの背中に突き刺さり胸から突き出ていた

レッドドラゴライトでできた鮮やかに赤い短剣がどす黒い赤みを帯びる


「ぐっ・・・貴様・・・今のは・・・」


(で、できた・・・)


初めてノワールに一撃くらわすことができた

それも致命的な一撃を


そのままやられたことをお返しするように、頭まで真っ二つにしてやろうと思い

上に思いっきり切り上げた


「くぅ・・・」

「くそっ」


しかしノワールは前に踏み込み短剣から逃れる

体を貫かれたというのに相変わらずの素早さだ

しかしマルクとアリスを狙う余裕はないようで胸を押さえながら俺の方を睨んでくる


(もう一度、さっきのイメージだ・・・)


先ほどの感覚を忘れないうちにもう一度試す


するとこんどはマルクとアリスが目の前に一瞬で現れた


(ってことは!)


背後にノワールがいるということだ

こんどは水平に短剣を走らせた


「くっ」

「チッ」


ナイフと短剣がぶつかり『キンッ』と金属音が響く

背後をとったのに攻撃を防がれた


「マルク!アリス!少し下がって援護してくれ!」


(もう一度だ)


今度はノワールの真後ろではなく斜め後ろ辺りに転移魔法陣をイメージする


目の前のノワールが一瞬で消える


(右後ろ!)


イメージした転移先からノワールと俺の位置関係を考え短剣を突き出す


(うおっ!?危ね!)


しかし今度は躱されカウンターを受けそうになる

何百回もやり直しノワールの動きに慣れていなければまともにくらっていたと思う


(もう対応してくるのか・・・)


ノワールは完全に俺の位置を分かっていたようにも思える

その理由は見当がついていた


(俺の視線か・・・)


イメージするとき転移先をチラッと見た

その俺の目の動きをノワールは見逃さなかったのだろう


(だったらやりようはまだある)


「どうした?随分動きが鈍くなったみたいだけど」

「・・・・」


明らかにノワールの速度が落ちている、それだけの致命傷を与えられたということか


そしてチラッとノワールの左後ろを見る

しかしイメージした転移先は全く違うところだった


転移した瞬間浮遊感に襲われる

転移した先は遥か上空だった

上空ならいちいち目で見なくても簡単にイメージできる


(思ったより上まで飛んだな)


落下しながら下を見るとノワールは俺が視線を送った自分の左後ろを振り返っていた

しかしそこに俺はいない

あのノワールがキョロキョロと戸惑っているようだった


しかし早くしないと注意を引いてくれている二人が危ない


自由落下に身を任せながら大きな氷塊をつくる


(頼む、気付かないでくれ)


そのままノワール目掛け氷塊を高速で放つ


(終われ!)


「ドゴーーーーーン」と大きな音が響き

氷塊が高速で地面に落下した衝撃で小さなクレーターができた


地面に落ちる直前風魔法で落下速度を軽減して着地する




辺りにノワールの姿は無い


「マルク!アリス!無事か?」

「だ、大丈夫だよ!」「アリスも、大丈夫」

「よかった・・・まだ油断するなよ」


二人を森に避難させてから落とした氷塊を消す


クレーターの真ん中には黒い布切れと血だまりがあった

そしてところどころ人の皮膚だろうか、肉片のようなものが散らばっていた


「終わった・・・のか・・・」


長かった



_______

Saveしますか?

►はい/いいえ

_______


もうやり直すのは御免だとすぐにSaveした



「マルク、アリス」

「兄さん?」

「やっつけたの?」

「ああ」

「「兄さん!」」


二人が泣きながら駆け寄ってくる

三人で抱きしめあった


「うわぁ~ん・・怖かったぁ~・・・」

「兄さん、ありがとう・・・アリス達だけじゃ何にもできなかった・・・」

「俺の方こそごめんな・・・」

「「?」」


二人は泣きながらも、どうして俺が謝るのかと不思議な顔をしていた


何度も二人を死なせてしまった

あげく自分が楽になるためにほんの一瞬だけだが、見捨ててしまおうとさえ思ってしまった


「ごめん、ごめんな・・・」


二人を強く抱きしめる

ノワールを倒し二人を助けられた安堵で涙が溢れて止まらなかった


「なんで兄さんが謝るの?」

「泣かないで兄さん」


二人が俺の頭を撫でてくれる


「・・・・ぐすっ・・うん。二人が無事でよかった」

「えへへ」「んふふ~」


そしてまた三人で抱き合う



「そういえば」


まだ終わりではない

面倒だがまだやらなければいけないことは残っている


「教会で何があったんだ?」

「突然みんな寝ちゃって」

「アリス達は治癒魔法で眠らなかったけど」

「うん、そしたらね・・・」


二人が事の顛末を話してくれた


まず教会に行き、割と早い段階でアリスが隠し通路に気付いた

しかしアリスは別に興味も持たずそのまま掃除を手伝っていた

するとみんなが一斉に倒れるように眠りだす

マルクとアリスも眠気に襲われたがギリギリのところで治癒魔法を使うと解除できることに気付き眠らずに済んだ

まあ今回の場合そのまま眠っていた方が面倒なことにならずに済んだのだが


「シスターさんが一人いなくなってた」

「シスターが?」

「うん、みんな眠ってたのにその人だけいなくなってた」

「よく気付いたなマルク」

「えと・・・綺麗なシスターさんだったから」

「ほう・・・」


(マルクも色を知り始める歳か・・・そんなことより、そいつが魔法でみんなを眠らせたのか?)


その後教会内を見回ったがみんな眠ってしまっていてどうするか悩んだ

そこでアリスが隠し通路のことをマルクに話すと「行ってみよう」ということになり

その先でセルドロと司教が揉めている場面に遭遇した

二人の言う『太ったおじさん』というのはおそらくセルドロのことだろう

そしてセルドロは司教を刺し殺し、それを二人に目撃されてしまう

マルクが小さな悲鳴を上げてしまったところをノワールに気付かれてしまったようだ

そして地下通路を逃げ回り、王都の東側から外に出た


「関所までは行ったんだろ?どうして王都の中に、というか俺のところに来なかったんだ?」

「それは・・・」

「アリスが悪いの・・・『兄さんは今日大事な試験があるから二人だけでなんとかしよう』ってマルクに言ったから・・・」

「あぁ・・・・なんだ、そんなことで・・・」


どうやら今日は全てが間の悪い日だったようだ


俺の試験が別の日だったら

教会の大掃除が別の日だったら

セルドロと司教が揉めなければ

アリスが治癒魔法を使えなければ

アーロンがおとなしくカミリアの言うことを聞いていれば

たらればはいくらでもでてくる


「あのな・・・試験なんてどうでもいいんだよ。そんなものまた別の日にだって受けられるし、そもそも受けなくても大した問題じゃないんだ・・・二人の命と比べるほどのものじゃないんだから」

「「ごめんなさい・・・」」

「まぁ気持ちは嬉しいけどな。今度からは何かあったら兄ちゃんを頼ってくれていいからな?」

「「うん!」」


なんにせよ二人が無事で良かった


まだセルドロともう一人の黒ずくめが残っているが

今は無事を祝いたい


ようやくノワールからも解放されるのだから


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