96 91回と3回
ノワールの動きを覚えるため何度も何度も戦った
そのたび斬られて、刺されて
時には殺されて
何十回もやり直し
更に2回Continueをして
着実に俺の精神は蝕まれていっていた
「こう動けばこう来る・・・これを防げばこうなって・・・」
ぶつぶつと独り言を言いながら淡々と覚えた動きを繰り返す
何十回もやっていればいい加減ノワールの速さにも目が慣れてきた
だが慣れるだけだ
目で追えても体がノワールの速さを捉えられない
何度もやり直しノワールの攻撃を防ぐことができるようになっても
こちらの攻撃が当たらない
「ぐぅ・・・」
何回か前にやった失敗を繰り返し右腕を切り落とされる
そして激痛から逃れるために急いでLoadする
ここ何回かは同じような失敗の繰り返しだった
痛みには慣れてきた
それでも痛いものは痛い
何度も繰り返す激痛と攻撃を当てられない焦りでおかしくなりそうだった
関所からならここが見えるだろうと思い
派手な魔法を使って見つけてもらおうとも考えた
しかし魔法はことごとくレジストされる
なので戦い方の幅が広がらない
ただただノワールの攻撃を体験して覚え
防ぎ、躱し
そして結局攻撃を当てられず、ノワールの攻撃を防ぎきれなくなる
その繰り返し
攻撃を防ぎ時間を稼ぐくらいはできるようになったが
何十回もの痛みの代償はそれだけだった
(もう嫌だ・・・作戦を変えよう)
「マルク、アリス、援護してくれ」
「わ、わかった」「うん!」
二人を守りながらノワールと戦うことはハッキリ言って無理だ
しかしノワールと距離をとらせて後衛から援護してもらうくらいなら大丈夫かと思い二人にも協力してもらうことにした
「好きなように魔法をぶち込め!手加減するとこっちが殺されるぞ」
「う、うぅ・・・」「わかった」
マルクとアリスが同時に魔法で攻撃しようとしたのだろう
しかしレジストされて魔法が発動しない
「三つ同時ならどうだ!」
俺も魔法で攻撃する
するとようやく魔法が発動した
二つまでしか同時にレジストできないのかもしれない
俺の放つ『プロミネンス』がノワールを襲う
(いける!)
三人で息を合わせれば魔法を使うこともできる
これならどうにかやりようがあるかもしれない
そう思った
しかしノワールは『プロミネンス』を左に躱しながらこちらに突っ込んでくる
その動きは今まで見た動きよりさらに速かった
(まさか今までは本気じゃなかったのか・・・)
俺の左側に迫ってきたというのはなんとなく見えた
とっさに左手で首をガードする
しかし衝撃も痛みも何もなかった
「え゛ぅ・・・」
「がひゅっ・・・に゛ぃはん・・・」
呻くような二人の声に振り返ると
マルクは首を切られ、アリスは首を刺されていた
ノワールは俺じゃなく二人を狙ってきた
二人は首から下を血で真っ赤に濡らし倒れる
「あぁ・・・」
(やっぱり駄目だ・・・二人は逃がさないと・・・ごめんマルク、アリス)
やり直して二人を今まで通り森に避難させる
そしてまたノワールと一対一で戦う
しかしこれでノワールはまだ本気ではないことを知ってしまった
ノワールはさらに速度を上げることができる
今の速度でさえ攻撃を当てることができないのに
どうせ俺の攻撃は当てられない
この繰り返しが無駄なように思えてきた
それからも何度も同じような戦いを繰り返す
戦いの途中一つ閃いたことがある
すっかり忘れていたが今日は訓練場で試験を受ける日だ
訓練場にはクラウスがいる
訓練場は王都の外、北北東にある
王都の城壁をここから北に沿っていくとたどり着くことができる
(悪い、もう一度だけ試させてくれ)
「マルク、アリス、魔法で援護してくれ」
俺の期待通り二人同時に魔法を使ってくれる、それをノワールにレジストされる
そのタイミングでノワールを氷漬けにしようとする
しかしノワールは素早く魔法の範囲から逃げ出しこちらに向かってくる
(ノワールの動きを防ぐのはやっぱり無理か)
二人が殺される前に急いでLoadし直す
そしてまた同じように二人に協力してもらう
先ほどと同じように俺の魔法をノワールはレジストすることができない
こんどは土魔法でノワールでなく二人を囲う
マルクとアリスは土のドームの中にすっぽり収まった
簡単には壊されないように分厚く、硬くつくった
(よし!これで・・・)
クラウスに協力してもらうため
二人をそのままに北の訓練場を目指し全力で走る
これで少しは時間を稼げるはずだ
ノワールが俺を追ってくるならそれでも良い
後ろを振り返る余裕はない
今は少しでも早くクラウスの元に行きたい
(くそ・・・追っては来ないか)
ノワールの速さで追われると俺なんかすぐに追いつかれるだろう
しかし一向にその気配はない
全力で走り五分もかからず訓練場へ辿り着く
(居た!)
遠くにクラウスの姿を見つけた
「クラウスさん!助けて下さい!」
クラウスの元までは行かず、声が届くであろう距離から叫ぶ
そして踵を返し元の場所へと走る
声が聞こえていればクラウスならおそらく俺に追いつくことができるだろう
「何があったんだ?ルシオ君」
予想通りクラウスはあっという間に追いついてきた
「手を貸してください!俺だけじゃどうやっても勝てない・・・」
「何と戦ってる?」
「ノワール」
「ノワールだと!?」
クラウスの反応を見るにノワールのことを知っているようだ
でも今はそんなことどうでもいい
残してきた二人が心配だ
俺がつくった土のドームまで戻ってきたがノワールの姿がない
(嫌な予感しかしない・・・)
ドームに異変がないか見て回ると反対側に小さな穴が開いていた
そして中からはうっすら煙が漏れて激しい熱を感じた
中を覗くと真っ暗で見にくいが白い灰が積もっているようだ
「これも・・・駄目か・・・」
ノワールはドームに穴を開けて火魔法で中の二人を焼き殺したのだろう
膝から崩れ落ちる
「何があった、説明してくれないか?」
「・・・ノワールを倒すにはどうしたらいいんですか?」
「・・・ノワールは凄腕の殺し屋だ、どうしてそんな奴と君が?」
「俺じゃありません・・・弟と妹が事件に巻き込まれて」
「・・・・・すまない。私はノワールの噂を聞いたことがあるだけで実際に会ったことも戦ったこともないんだ、私にもわからない」
「・・・・・そうですか」
クラウスを頼ることもできない
どうすればいいのかわからないまま
何も考えることができず、その後もただLoadを繰り返した




