92 捜索
目を開けると寮の部屋へと戻っていた
Loadして、昼過ぎの試験を受けに行く直前へと戻る
「ふぅ~~・・・さて、まずは・・・」
教会へ行ってみよう
この時点でまだ集団睡眠が起こっていないならマルクとアリスを助けることができるはずだ
司教が死ぬことについては正直どうでもいい
マルクとアリスの無事が最優先だ
「よし!」
教会へと走る
クラウスには申し訳ないが試験を受けている場合ではなくなった
ドタキャンすることになってしまったのでクラウスからの信用はなくなるかもしれない
今回の件が無事解決したら謝りに行こう
道行く人が「何事か!?」と振り返るほど速く街を走る
あっという間に教会へと到着した
教会は大掃除をしているはずなのに驚くほど静かだった
「すでに手遅れなのでは?」という嫌な考えが頭をよぎる
ゆっくり扉を開けると、ふわりと甘い香りが漂ってきた
(・・・なんだ、この臭い?)
中に入ると床や椅子に倒れるように眠っている人々が目に入った
(最悪だ・・・Saveの時点でこれかよ・・・)
Loadしてからほとんど間を置かず教会まで走ってきたのに、すでに皆眠っている
眠っている人達の中にマルクとアリスがいないか探したが見つからなかった
やはり二人は解毒魔法を使い、眠らずにどこかへ移動したようだ
(う・・・この臭いが眠りの原因か?)
充満する甘い香りを嗅いでるうちに俺までクラクラしてきた
解毒魔法を自分にかけると眠気はスッキリとなくなった
(なるべく吸わない方がいいか)
火事のときのように服を口にあてなるべく直接吸わないよう注意する
(やっぱり怪しいのはあの隠し通路か)
縦長に五枚あるステンドグラスの一番左
見た目は豪華なステンドグラスに見えるが幻覚魔法が施されている
目を魔力で強化して見ると通路の入り口だけうっすら魔力が漂っておりその存在に気付ける
数年前この存在に気付いたときは、いきなり司教に声を掛けられ中に入ることはできなかった
そして隠し通路の内部へと入ってみる
すぐに地下へと続く階段が現れた
階段を降りると、中は高さ2メートル弱で幅は7~80センチくらいだろうか
大人が一人通ることができるほどの、レンガで固められた通路が続いていた
明かりは一切なく真っ暗だ
小さな火を熾すだけの魔法『トーチ』を使い奥へと進んでいく
すると歩き始めてすぐ道が分かれていた
道は三方向に分かれていて、交差点のようになっている
(とりあえず左から行ってみるか)
分かれ道を左に進み歩き出す
先ほどと違い、今度はしばらく歩いても何もない
ただ同じような通路が延々続いていた
すでに10分は歩いただろうか
走るほどではないがかなり早歩きで進んでいる
その間変わることのない景色を見続けているせいで、無限ループに陥ったという気がしてくる
途中不安になり、壁に土魔法で通路を半分ほど塞ぐように出っ張りを作った
もしこの通路が仮に侵入者対策のために魔法でループしているのなら俺が作った出っ張りが進行方向に現れるはずだ
しかしさらに歩き続けても何も変わらない通路が続いているだけだった
(ループはしていないのか・・・これって方角的に王都の西側の外まで続いてるのかな?)
早歩きで歩き続け一時間は経っただろうか?景色が同じなため時間の感覚が狂う
途中一つだけT字路の分かれ道があり、直進か右に曲がるかの選択でそのまま直進を選んだ
右の道を覗くと、レンガで固められた今までの道とは違い岩肌がむき出しで道幅もまちまちの雑な造りになっていた
直進して少し歩くと下水道につながった
その下水道を少し進むと王都の城壁の外へと繋がる道があった
(この辺少し見覚えがあるな・・・赤竜倒しに西の山脈目指したときに近くを通ったんだっけ)
先ほどの通路は予想通り王都の外へと繋がっていたようだ
教会の位置は王都の東南東
そこから西側の城壁の外まで歩いたことになる
下水道に出たあたりから足跡など二人の痕跡を探してみたが何もない
王都の外はしばらく平原が広がっており見通しがいい
しかし人間をはじめ、生き物の姿は見当たらなかった
(こっちは外れか・・・)
途中のT字路も気になるが
まずはもう一度Loadし直して教会からスタートしよう
(もっと急げば間に合う可能性もあるしな・・・)
_______
Loadしますか?
►はい/いいえ
_______
Loadしてすぐ寮を出る
教会へと全力で走った
「はぁ・・はぁ・・」
一回目よりかなり急いだというのに教会の雰囲気は一緒で静寂に包まれていた
扉を開けると先ほどと同じように甘い香りが漂っていて
すでに中の人は眠っていた
(くそ・・・頼むから無事でいてくれ・・・)
俺がSaveした地点より早く集団睡眠は起こっていたみたいだ
急いで隠し通路を進み、分かれ道へと到着する
(今度は真ん中だ)
進行方向をそのままに直進する
今度は先ほどと違い5分程で地上へと続いているであろう階段が現れた
階段を上ると、何処かの物置だろうか?
樽や石像、武器や防具、他にも農具などといった統一性のない物置のような所へと出た
そしてそこから隣の部屋へと続く扉が少し空いていた
(あれは!?司教?)
扉の隙間から覗くとそこには血を流して倒れている司教の姿があった
司教の他には誰も居ないようなので部屋に入る
(駄目だ・・・死んでる)
脈があるかみてみたがすでに亡くなっているようだ
しかしまだ体温が残っている
(殺されてからあまり経っていない?二人はこれを見つけて誰かに助けを求めにいったのか?)
セルドロは「司教は焼き殺されていた」と言っていた
しかし司教は刃物か何かで刺され死亡しているようだ
(まぁそりゃそうだよな・・・二人が人を殺すなんて)
おそらくこの事件の黒幕はセルドロだろう
そうでないにしてもセルドロがかかわっているのは間違いない
そうでなければ死因を偽り、9歳の子供を犯人に仕立て上げる理由がわからない
(どうせ自分が殺して死体の処理に困ってたところを二人に見つかって濡れ衣を着せようってところだろう)
そこまで考えて一つ重大なことに気が付いた
(マルクとアリスが、あのノワールとかいうやつに狙われていたらマズい・・・)
あいつの強さはまだ底が知れない
油断していたとはいえ、あっさり背後をとられ関節を固められたほどだ
(いや、あの時一応警戒はしていた)
セルドロは見た目に性格の悪さがにじみ出ているような奴だ
それに黒ずくめで顔もよくわからない奴が二人も居た
だからあの時、いち早く不穏な空気を察知し警戒はしていた
それなのに一瞬で抑え込まれた
それにもう一人の黒ずくめも同じくらい強いかもしれない
(・・・・考えても仕方ない。今できることをやらないと・・・)
何か行動していないと不安ばかりが押し寄せてくる
司教の遺体があるこの部屋の別の扉へと近づき少し開ける
大きな屋敷のエントランスのようなところへ繋がっているようだ
耳を澄ませ小さな物音すら逃さぬよう警戒していたが辺りは静寂に包まれていた
足音を殺してエントランスから玄関へと歩く
少しだけ玄関を開け外の様子を窺うと見知った景色が見えた
(あ!ここってあの屋敷か!)
王都の東側に大きな屋敷がある
何度か前を通ったことがあったので覚えていた
どんな貴族が住んでいるのかと思っていたが司教の家だったのだろうか
外の様子を窺っていたが平穏な日常といった感じだった
(二人はここから外に逃げ出した訳じゃないのか?)
別に俺じゃなくても、近くにいる大人に助けを求めればいい
アーロンと違いマルクとアリスは大人を下に見るようなことはしないはずだ
仮にここから出て助けを求めたとすればもう少し騒がしくなっているだろう
玄関の扉を閉め、一応まずはこの屋敷内を探索することにした
物音ひとつしないが、もしかしたら二人が何処かで息を殺して隠れているかもしれない
「マルク・・・アリス・・・いないのか?」
扉を開けて部屋の中を窺っては小さな声で呼びかけて回った
しかし結局すべての部屋から返事が返ってくることはなかった
(どうする・・・ここで待っていればセルドロは戻ってくるかもしれないけど・・・)
司教の遺体が転がる部屋へと戻り考える
セルドロは司教が焼き殺されたと言っていたので、司教の遺体を燃やしにここに戻ってくるかもしれない
(いや、でもあれは俺が憲兵に二人が戻ってこないことを伝えてもらってからセルドロが閃いた偽装という可能性もあるか・・・)
それにただここで待っているのは落ち着かない
(もう一つの分かれ道を先に見ておくか)
そう思い物置から地下への道へと戻る
分かれ道まではそう遠くないのでLoadせず直接向かうことにした
そして5分程で分かれ道へとたどり着く
先ほどとは反対を向いているので左の道へと進む
その道は最初に進んだ道と同じようにただ通路が続いているだけだった
ただ最初に選んだ道とは明らかに違うものもあった
(これ・・・土魔法のあとか?)
通路を塞ぐようにできた壁を砕いたような跡が足元と頭上にあった
もしかしたらマルクとアリスが逃げながら追っ手を撒くために塞いだのかもしれない
ほとんど走るように通路を進む
同じような土魔法の痕跡はいくつもあった
そして数十分進んだ頃、西側と同じように下水道へと繋がった
また西側と同じようにすぐ近くに王都の外へ繋がる道があった
(子供の足跡だ・・・二つ・・・マルク!アリス!)
下水を抜けてすぐのぬかるんだ地面に小さな足跡が二つあった
マルクとアリスのものかもしれない
(ここから外に逃げたのか?)
しかし周りを見渡しても人間の姿は無い
足跡を追ってみると東の関所の方へと続いているようだった
確かに人気のない王都の外を逃げ回るよりも人通りの多い王都の中の方が、身を隠すにしても助けをもとめるにしても容易だろう
足跡を追うように関所へと向かう
「おじさん!少し前ここに男の子と女の子の二人組が来なかった?」
「おう、来たぞ?でも話をしてたら急に外に向かって走って行っちまったけど」
「どれくらい前?」
「う~ん・・・1・2時間くらい前だったかな・・・」
「そんなに・・・」
関所で働くおじさんに話を聞いてみるとやはり二人はここに来たようだった
時間的に俺が試験の前Saveをした時にはもうここまで来ていたのかもしれない
(でもなんでさらに引き返して外に行ったんだ?)
「わかった・・・ありがとう」
「すまねえ、引き留めた方がよかったか?」
「うん・・・でも仕方ないよ」
「なんか知らねえが、二人はあっちの方向に走って行ったぞ?最近の子供ってのは足が速いんだな、あっという間に見えなくなっちまった」
「あっちに?」
おじさんの指さす方角を見ると森があった
整備された街道ではなく、わざわざ森の方へと逃げ込んだようだ
(ますますわからない・・・)
しかし十中八九証言の二人はマルクとアリスだろう
二人を探すために森の中へと入っていった




