84 十四歳の大会 弐
大会四日目
今日のアリスの相手は同じ特待生のようだ
準決勝にもなれば特待生しか残っていない状況になる
「昨日魔力切れギリギリまで消耗してたけど大丈夫か?」
「うん、大分戻った」
「一応油断はするなよ?」
「わかってる」
観客席でアリスと並んで座り試合の時間を待つ
昨日約束した通り今日はアリスと二人だ
といっても三席離れたくらいのところにマヤとマルクもいるのだが
アリスはよっぽど嬉しいのか、朝再会してからずっと俺の腕にしがみついて離れない
(可愛いなぁ~。でもアリスとマルクならいつでも甘えてくれていいのに・・・やっぱ双子だからって一緒に相手してたからなのかな?確かにマルクかアリスのどっちかだけと長く一緒にいることってほとんど無かったもんな~)
アリスは小さな頃から俺にくっついていることが多かった
しかし二人に魔法を見せてみたあたりからマルクも俺にくっついてくることが増えた
その頃から二人セットで面倒をみるようになったので、マルクもアリスも俺と二人きりでいるなんてことはほぼ無かった
アリスの試合までの間二人で何気ない会話が続いた
アリスは俺に話したいことが沢山あったのか、普段からは考えられないくらいの勢いで喋っていた
普段はクールで物静かなアリスとのギャップが可愛い
「お、そろそろ試合じゃないか?」
「むぅ・・・行ってくる。すぐ戻ってくるから」
「頑張れ」
「うん!」
そして準決勝が始まる
アリスの相手はティミーという女の子で、凄く緊張しているというか
アリスに対して怯えているような様子だった
(昨日の試合見てたんだろうな・・・)
それで自分では敵いっこないと弱腰になっているのだろう
特待生ならある程度の戦闘技術があってもおかしくない
しかしだからこそアリスの力量を見て、自分では敵わないと思ってもおかしくない
試合が始まりアリスが仕掛ける
ティミーも無詠唱の『アースウォール』で攻撃を防いだりとなかなか善戦している
やはりティミーは年少の中ではかなりできる子みたいだ
アリスは元居た場所を動かずに
俺が教えた魔法を操作する方法を使って、壁をすり抜けるようにティミーを攻撃する
「わっ!?きゃっ!」
突然左右から飛んできた『ウォーターボール』に対応できず、ティミーは何発もの水球をもろに受ける
『ウォーターボール』を選ぶあたりアリスはちゃんと手加減できているようだ
アリスが一方からの攻撃に集中すると
たまらず反対側へとティミーが押し出される
そこへアリスが『ハイドロスネーク』でティミーを場外へと押し出し勝負は決まった
「ちょっとしつこかった」
「ティミーって子も特待生だからな、でも上手な戦い方だったと思うよ」
「えへへ~」
相手になるべく怪我をさせないように戦っていた
「アリスが優しい子に育ってくれて兄ちゃんも嬉しいよ」
「んふふ」
もちろんマルクも良い子に育っている
もっともアリシアとディルクが両親なので、そんな間違った成長の仕方はしないと思っていたが
その後アーロンの試合も見てみたのだが
相手を速攻で場外に落としてしまったのでいまいち力量が測れない
わかったことは当然のように無詠唱を使えること
動きを見るからに強化魔法も使えること
まぁシンプルに強そうだった
自称最強はあながち大嘘ではないかもしれない
「アリスは明日あいつに勝てるかな?」
「どうでもいい・・・」
アリスは心底面倒くさそうにしている
優勝にはまったく興味がなさそうだ
「ははっ、それじゃこの後どうする?何かやりたいことでもあるか?」
「おなか減った」
そうしてその後は
昼食を食べて王都をブラブラ散歩したりして
一日中アリスと一緒に居た
アリスは終始ご機嫌なようで俺も満足だ
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大会五日目
今日は年少の部の決勝戦
「アリス、多分アーロンはかなり強い。油断するなよ」
「うん」
特に緊張した様子もなくアリスはいつも通りだ
念のため朝Saveをしているが
アリス本人が優勝にこだわりがないようなので負けてもやり直すことはないかもしれない
そして決勝が始まる
開始早々動いたのはアリスだった
無数の氷の飛礫をアーロンへと放つ
「ふんっ」
アーロンは手を横に払った
『ブラスト』を横向きに使ったのだろう、アリスの放った氷の飛礫はアーロンに届く手前で進路を変え
舞台を包む結界にあたる
「弱っちいな」
「・・・・・」
アリスは無表情だが、内心アーロンの挑発にムッときているのかもしれない
さっきよりも大きな氷の飛礫をいくつもつくりアーロンへ放つ
アーロンも先ほどと同じように『ブラスト』で吹き飛ばそうとする
「っ!?」
しかし一度逸れたはずの氷の飛礫はアーロン目掛けて進路を変える
アリスが操作しているのだろう
「チッ」
アーロンは足元から細い『ロックピラー』を伸ばし氷を打ち落とす
複数の氷の飛礫を操作したアリスも凄いが
同時に発動した『ロックピラー』で別々の動きをする氷を全て打ち落としたアーロンも凄い
ここまでで二人とも元居た場所を一歩も動いていない
攻撃しかしていないアリスはともかく
アーロンは避けなくてもアリスの攻撃を防ぐ自身があるのだろう
(凄いな・・・最近の子供って)
他の観客同様に俺も見入ってしまう
アリスがどうやって攻めようか考えているのか少し手が止まる
その隙にアーロンが動いた
「上級魔法も使えないのか?こうやるんだよ!」
アーロンは『プロミネンス』を使う
舞台上を巨大な炎の大蛇が暴れまわる
アリスはたまらず魔法障壁で結界をつくりその中に籠る
(上級魔法も当然のように無詠唱か・・・ただこんな試合で使う魔法じゃないぞ)
アーロンが上級魔法を使うところを初めて見るので、あれで加減をしているのかどうかわからない
しかし威力的に加減をしているかどうかかなり怪しい
ただ自分の力を誇示しているだけに見える
マルクとアリスにはまだ上級をほとんど教えていない
だが教えるとすぐに使えるようになるだろう
しかし二人なら上級魔法の危険性には気付いてくれるはずだ
アーロンの使う『プロミネンス』で、舞台上はアーロンの周辺以外が火の海になった
今だ暴れまわる炎の大蛇から身を守るようにアリスは魔法障壁を維持し続けている
(いや、このままいけば先にアーロンが根を上げるかも)
魔法障壁を維持するより上級魔法を使い続ける方が魔力の消費は多いはずだ
アーロンの魔力総量がどれほどかはわからないが、もしアリスと同じくらいならアーロンの方が先にガス欠になるだろう
アーロンが手を緩めない以上、魔法障壁を解くとアリスは一瞬で焼かれてしまう
アリスは何もできずただ堪えている
膠着状態がしばらく続いた
「チッ・・・鬱陶しいんだよ!!!」
先にしびれを切らしたのはアーロンだった
アーロンは『プロミネンス』を消すと同時に巨大な『ロックピラー』でアリスを攻撃する
アリスもろとも魔法障壁を破壊するつもりなんだろう
「マズい!アリス避けろ!」
たまらず大声で叫んでしまった
魔法障壁を破壊するほどの威力の『ロックピラー』を強化魔法も使っていない状態で受けるとひとたまりもない
トラックに衝突されるようなものだ
俺の声が届いていないのか、もしくはもっと膠着状態が続くと思っていたのかアリスはろくに動けないでいた
そしてアーロンの魔法がアリスもろとも魔法障壁を砕く
アリスは隣の年長の部の舞台の方まで吹っ飛ばされた
「アリス!!!」
たまらず観客席から会場に飛び降りアリスに駆け寄る
アリスは気を失っているようだった
アリスはとっさに防御しようとしたのか両腕とも骨折していた
右手は肘から骨が突き出るほどの大怪我だ
(このまま治癒魔法かけてもいいのか?骨が変な感じにくっついたりしないか?まず腕以外に治癒魔法をかければ?)
俺はこんな時どうすればいいのかわからずパニックになりかけた
しかし駆け付けた教師のおかげで骨をもとに戻しながら治癒魔法をかけることができ
今だ気を失ってはいるが、アリスを元通り回復することができた
「お前の妹なんだろ?大した事なかったな」
「・・・・」
治療が終わるころアーロンが歩いてきてそう言い放つ
この場で殺してやろうかと思うほど激しい怒りに襲われた
「無差別の部でお前を妹と同じようにボコボコにしてやるよ」
「・・・・・・・ああ・・・楽しみだよ」
(楽しみだ・・・)
別の意味でアーロンと戦うのが楽しみになった




