80 マヤの卒業
マヤと一緒にテッドに挨拶にいった後日
頼んでいた武器を受け取りに武器屋に行った
「おじさん、できてる?」
「ん?おう坊主。ちょっと待ってな」
武器屋のおじさんが店の奥から持ってきた短剣は
刃渡り40センチ程の大きさで刀身が真っ赤だった
「おおーー!かっこいい!」
「だろ?なかなかの自信作ができたぞ」
「ありがとう」
短剣なのでまだ成長期に入ったばかりの俺には扱いやすい大きさだと思う
体が成長して大人になっても、少し大きいがナイフとしてこれから先長く使えそうだ
「あ、でもホルダーが必要か・・・何か良いのない?」
「あるぜ、このホルダーがちょうどいい。こっちは金取るけどな」
おじさんが用意してくれたものはぎりぎり俺のお小遣いで買えるものだった
ちょっと痛い出費だが、そもそも学園の寮で生活しているとお金を使うこと自体あまりないので別に問題はないだろう
ホルダーを腰に巻き、そこに真紅の短剣を収める
腰の後ろ側にあるので、素早く右手で逆手に抜くことができる
「うん、いい感じ!ありがとうおじさん!また何か手に入れたら持ってくるよ!」
「あいよ!」
学園に戻りウィルに自慢しよう
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「うわぁー!いいなぁー、かっこいいなぁ」
「だろ~?苦労した甲斐があったよ」
「たしかに綺麗ですけど・・・短剣なら武器屋に売っている物でいいんじゃないですか?」
「だって高いもん」
「だからって命がけで赤竜を相手にすることもないと思いますけど・・・」
「はぁ!?命がけってどういうこと!?」
「あれ?ルシオ君から聞いていないんですか?実は・・・」
リリーのお説教がまた始まるかと思ったら、事情を詳しく説明していなかったマヤが食いついてきた
「なにそれ!?アタシにはちょっと危ないだけって言ったわよね?」
「いや・・・本当に危ないことだったらやらないよ?」
(結構マジで危ない瞬間も何度かあったけど・・・)
「だったら行く前に説明できたわよね?本当は赤竜と戦うことが危険だってわかってたから黙って行ったんじゃないの?」
「・・・はい」
「もう!これからは隠し事は禁止!!」
「・・・ワカリマシタ」
「ははっ、マヤさんも二人と同じ反応してる」
「笑い事じゃないよウィル・・・」
婚約早々尻に敷かれる気がしてきた
因みに皆には俺とマヤが婚約したことを少しの間黙っていようと二人で決めた
少しの間というのはマヤが卒業するまで
「きっと婚約したことを話すと皆アタシ達に遠慮すると思うの」とマヤは言い
俺もそれと同意見だった
マヤが卒業するまでのあと少しの間は今まで通り過ごすことにして
マヤが卒業して学園を去るときに初めて皆に話すことにした
それとマヤの進路についてだが、俺が卒業するまでの二年間ウェルクシュタットの実家に帰って家の手伝いをすることにしたようだ
実家に帰るといっても転移魔法陣があるのでいつでも会える
会うときは俺が一旦ローリスに戻りローリスからウェルクシュタットへ行くことにした
寮の部屋から直接ウェルクシュタットに繋いでもいいのだが、マヤが来たとき会話が外に漏れたりして「寮に女を連れ込んでいる」と噂を立てられると学園にいられなくなるかもしれない
それにローリスの住民はウェルクシュタットへ買い物に行く人もいる
そういった人達のためにローリスとウェルクシュタットを繋いでおくのは後々便利だからだ
しかしそういう人達が転移魔法陣を利用するたびに実家の俺の部屋やマヤの部屋に何度も出入りするのは嫌なので、テッドや村の人に事情を説明して転移魔法陣を設置する場所を変えることにするつもりだ
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そしてあっという間にマヤの卒業の日がやってきた
転移魔法陣の移転はすでに完了している
テッドが新しく部屋を用意してくれてそこに魔法陣をつくり、ローリス側は俺の家のすぐ近くに小屋を新しく建てて、そこに魔法陣をつくった
ローリス側の魔法陣の管理はディルクに任せることになり、一応小屋には鍵をつけている
現在鍵を持っているのは、俺・マヤ・ディルクの三人だけだ
その際、ディルクとアリシアに事後報告になってしまったがマヤと婚約したことを話した
しかしどうやら二人ともそうなると思っていたようで、転移魔法を繋ぎなおした後テッド達を呼んで宴会が開かれた
それと、結局マヤの部屋の魔法陣はリリーの家と繋いでそのまま利用するようだ
これならリリーやセレナも会おうと思えばいつでもマヤと会うことができる
「皆に話しておくことがあるの」
「ん?」「なんですか?」「なんですの?あらたまって」
「実は俺たち婚約したんだ」
「「「・・・・・」」」
「まぁ驚くよな」
「ちょっと前にアタシが告白して婚約することになったんだけど、黙っててごめんなさい」
「・・・そうなんだ。ボク、いつかはそうなるかなって思ってたけど。おめでとう!」
「ありがとうウィル君」
「ありがとうウィル。俺たちの卒業後の予定に変わりはないから安心して」
「あ、よかった~。じゃあマヤさんも一緒に三人で行くの?」
「マヤを連れて行くかはまだわからないけど、俺とウィルで旅はするつもりだよ」
「え!?アタシも行くわよ!」
「危険なところじゃなければね」
「むぅ~・・・」
「まあそれもこれからゆっくり決めていこう。まだあと二年あるんだし」
「そうね」「わかった」
ウィルは予想通りというか
思っていたとおりの反応で、驚いてはいたが祝福してくれた
「えっと、おめでとうございます。お似合いだと思います。そういえば私がルシオ君と初めて会ったときから二人は一緒にいましたね、あの頃は付き合っているのかと思ってましたけど」
「ううん、その頃は普通に友達だった。学園に知ってる人がマヤしかいなかったからね」
「そうですか。・・・・えっと、なんて言えばいいのか・・・まだ驚いているので」
「いきなりでごめんねリリー。でも卒業するまでにはアタシ達のこと話しておこうと思って」
「いえ、マヤさんがルシオ君を好きなのは皆知ってましたから。卒業するまでに何か行動するとは思ってましたので」
「あぅ・・・えっと・・・うん、リリーの思っている通りよ。卒業までにはどうにかしないとって思って」
「上手くいってよかったですね」
「うん、ありがとう」
リリーも驚いているようだが祝福してくれた
「・・・・・」
「・・・セレナ?」
「ルシオ様はいつからマヤさんのこと好きだったんですの?」
「う~ん・・・いつからだろう?はっきり自覚したのはつい最近だけど、マヤと一緒にいると楽しいし最初から好きだったのかも」
「・・・そうですか」
セレナは目に涙を浮かべている
セレナが俺のことを好きだということにはもちろん気づいている、あれだけ普段からアピールされていたら誰でも気づくだろう
だからこそマヤに告白されたとき悩んだのもある
「セレナ!悪いけどアタシの勝ちね」
「ちょっ、マヤ」
俺がセレナになんて声をかければいいのか悩んでいると、突然マヤがそんなことを言い出した
「・・・・フンッ、まだ負けたわけじゃありませんわ。ルシオ様、マヤさんに飽きたらいつでも私に声をかけてくださいませ」
「アタシがいない間ルシオにちょっかい出さないでよ」
「さぁ?約束はできませんわ」
喧嘩になるかと思ったが、いつもの二人だった
いやこれも一応喧嘩ではあるのか
普段からこの二人はこんな感じだから
喧嘩するほど仲がいいというか、やっぱりなんだかんだ仲がいいなと思った
「ルシオ様、おめでとうございます」
「うん、ありがとうセレナ」
「因みにルシオ様もご存知だと思いますが、貴族の間では重婚は当たり前なんですのよ?」
「ん?」
「あぁ、そういえばそうですね」
「リリー?」
「わ~、ルシオハーレムだね」
「ちょっと!ルシオ!!」
「ないない!ないから!」
セレナが少し開き直った気もするが
なんだかんだいつもの騒がしい感じに戻った気がする
こうして最後に嵐を巻き起こして
マヤは学園を巣立っていった




