77 お説教
「はい、これで剣つくって」
「・・・・坊主、これどこから盗んできた?」
「言うに事欠いて盗む!?」
「いや、それしかないだろ・・・それかもしかしてお前貴族の子か?」
「どっちも違うよ!西の山行って取って来たの!!」
「取って来たって、レッドドラゴライトが落っこちてる訳ねえだろ!」
「だから!赤竜倒して剥ぎ取って来たんだって!」
「嘘つくんじゃねえ!」
「嘘じゃないって!」
「お前なあ・・・このサイズのドラゴライトだと50年は生きてる竜だぞ?お前なんかに倒せるわけないだろうが」
「それで50年なんだ・・・やっぱ長物は無理かな?」
「レイピアみたいな細いやつなら作れるだろうけどよ・・・て、話を変えんな」
「もう嘘でもなんでもいいからつくってよ、それでつくれるサイズの短剣でいいからさ。材料もってきたんだからつくってくれるんでしょ?」
「はぁ・・・・・短剣か、三日待ってな」
「っ!?わかった!」
「ホントに盗んだりしたもんじゃねえんだな!?」
「当然!」
「あとで揉め事に巻き込まれるのはごめんだぞ!」
「何にもないって!大丈夫!」
「わーった、つくってやるよ!」
「ありがと!おじさん」
今日は赤竜を倒してから二日後
昨日は魔力が回復するのを待ってから転移魔法陣をつくり、寮に戻った頃にはすでに夕暮れ時だった
疲れていたのもあって昨日は帰ってすぐ休むことにして、今日朝一番で武器屋にもってきたのだ
結果、長物は無理だったが自分専用の剣をつくってもらえることになった
赤竜からレッドドラゴライトを剥ぎ取ったとき少しサイズに不安があったが、やはり剣をつくるには少し小さかったみたいだ
(しかしあの赤竜で50歳くらいなんだ。100年以上生きてる竜ってどれだけデカいんだろ?人間と違って生きてる間ずっと成長し続けるのかな?それともドラゴライトだけが大きくなっていくのかな?)
ドラゴライトは竜種が成長の過程で自分の魔力が徐々に結晶化していったものらしい
結晶が大きい竜ほどそれだけ魔力が有り余っているということになり、強力な個体を見分ける材料にもなるようだ
その後完成まで三日かかるみたいなので、特にやることもなかったし図書館に行くことにした
図書館にはウィル・リリー・セレナの三人が居た
「ただいま」
「あ、おかえりルシオ」
「おかえりなさいルシオ君」
「この数日どこへ行ってたんですの?ルシオ様」
「西の山、ちょっと山籠もりしてた」
「「「山籠もり?」」」
「うん」
「修行?」
「他の目的で行ったんだけど、結果的に修行にもなったな」
「目的って?」
「それはもうちょっとしたら教えてあげる」
「あの山の奥には赤竜とか危険な生物もいるんですよ?まったく、行先を聞いてたら止めたのに・・・」
「ありがとうリリー。まぁ目的ってその赤竜のことなんだけどね」
「はぁ!?なんでそんな危険なことするんですか!?」
「え、え~っと・・・」
「竜種がどれだけ危険な生物か分かって行ったんですか?国が十数人の部隊を編成してようやく竜を一体討伐できるようなものなんですよ!?」
「らしいね、確かにめちゃくちゃ強かった」
「・・・戦ったんですか?」
「うん、なんとか勝てたよ?」
「・・・・・」
「リリー?」
「・・・腕試しのつもりか何なのか理由は知りませんが、あまり無茶なことしないでください」
リリーは少し涙目になっていた
まさかここまで心配をかけるとは思っていなかった
「・・・ごめん、心配してくれてありがとうリリー。でも俺はできないと思ったことはやらないよ?その辺はリリーも分かってくれてると思うけど」
リリーには天啓の話をしているので俺が上手く立ち回れることを知っているはずだ
だからここまで心配をかけるとは思っていなかったのだが
「それはわかってますけど・・・竜種の討伐では毎回のように犠牲者も出るほど竜との戦いは危険なんです。いくらルシオ君でも、心配するのは当然です・・・」
「竜種の討伐のことに詳しいみたいだけど?」
「・・・・赤竜に限らず竜種は基本的に群れをつくりません。そのうえ一匹一匹の縄張りが広いので、西の山脈がいくら広大とはいえ縄張り争いに負けた赤竜が王都の近くまでやってくることがあるんです。なので定期的に赤竜の数を減らすため討伐隊が組まれるんですが・・・お姉ちゃんもいずれ討伐隊に編成されるかもしれないので」
「あ、それで・・・」
「お姉ちゃんは兵士としてお城で働いているので、いつ討伐隊のメンバーに選ばれてもおかしくないんです。だから心配で、自分でも赤竜について調べてみたんです」
「そっか・・・俺も気づいたことレイラさんに話しておくよ」
「それは、ありがとうございます。というか一人で倒したんですか?赤竜を」
「うん」
「はぁ~~、なんというか・・・本当に・・・」
「・・・何さ?」
「・・・なんでもないです」
「俺が戦った奴はそんな何百年も生きてるような奴じゃなかったよ?50年くらいだって言ってたし」
「誰がですか?」
「・・・・武器屋のおっちゃん」
「まさかドラゴライトが目的だったんですか!?」
「お、さすが。詳しいねリリー」
「まったく・・・もう・・・どうしてそんなもののために、男の子っていうのは・・・」
「どういうこと?」「私もさっぱりですわ」
「えっと・・・」
ウィルとセレナに竜種が持つドラゴライトのことを話す
それが上質な武器をつくる素材になるということ
それを手に入れるために山に籠もったこと
「ボクにも言ってくれたら手伝ったのに」
「そうですわ!一人でそんな危険なことをなさって、もし赤竜に食べられたりしたらどうするんですの!?行先も言わず出て行って、山奥でルシオ様が死んでたなんてことになったら私・・・」
「そうだよ!今度からはちゃんと目的と行先を教えてよ!」
「えー、そんな子供じゃないのに~」
「駄目です!今度からは必ず誰かにはちゃんと説明してください!それから危険かどうか私が判断します!」
「なんかリリーお母さんみたい」
「なんですか?」
「なんでもありません・・・」
「約束ですよ?」
「ちゃんと守ってよルシオ!」
「誰にも気づかれないようなところで一人寂しくルシオ様が死んじゃうなんて絶対に嫌ですからね?」
「・・・わかったよ。・・・ありがと、みんな」
行く前に「赤竜を倒しに山に行く」と正直に言っていたら
危険だからと引き留められただろう
でもこんなにも俺のことを心配してくれる友達がいる
そのことが凄く嬉しかった
心配かけるのも悪いのでこれからはもう少し皆に話しておくことを心がけよう
「ところでマヤは?」
「マヤさんは昨日からウェルクシュタットに帰ってますよ。ルシオ君に挨拶できなかったことを悔やんでました」
「ウェルクシュタットに?何かあったの?」
「いえ、卒業後のことで両親と話があるそうです」
「あぁ」
マヤは俺の二つ年上なのでもう15歳だ
あと数ヶ月で学園を卒業しなければいけない
卒業後について少し話をしたことはあるが、マヤ自身決めかねているようだった
「あ!どうやって帰ったの?転移魔法陣は?」
「私の家から繋ぎましたよ」
「そうなんだ、ありがとうリリー」
「いえ、どのみちルシオ君がいても男子寮から繋ぐわけにはいきませんから」
「そうだね」
(そうか、もうすぐマヤと学園で会うことは無くなるんだ・・・)
マヤが卒業したらどうするつもりなのかはまだわからない
王都で働くのか、それともウェルクシュタットに帰るのか
とはいえ転移魔法陣もあるし、会えなくなるわけではない
と、この時の俺はそこまで深く考えていなかった




