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Save! Load! Continue?  作者: とっしぃ
学園編
72/300

72 セレナ

私は生まれつき魔力が人よりも遥かに多いらしく

物心ついたころには強化魔法を当たり前のように使うことができていた


有り余る魔力を使った強化魔法はシンプルが故に最強だった


自覚したのは四歳の時

両親と一緒にネーベへ向かっているときのこと

その年は寒波が過ぎるのが例年より遅く、ネーベへ向かうのも春が来る直前になってしまった

そして道中早めに冬眠から覚めた魔獣に馬車が襲われてしまう


ちょうど休憩中に馬車が大きな狼に襲われてしまい

そのため馬が暴走して馬車は護衛兼使用人とお父様を乗せたまま走り去ってしまった

馬車の外に居た私とお母様は、馬を取り逃がした狼の標的になってしまった

お母様は私をかばうように狼の前に立ち塞がってくれた

でもその体は恐怖に震えていたのを覚えている

それも当然だ、お母様は戦い方を何も知らない

貴族として生まれ、親の紹介でお父様と知り合いそのまま結婚した生粋の温室育ち

そんな人が身を挺して私を守ろうとしてくれた


私はお母様を死なせたくないと無我夢中で襲い掛かる狼を思いっきり突き飛ばした

すると狼は突風にさらされた紙切れのように宙を舞い何十メートルも吹っ飛んでしまった


お母様は最初ポカンとしていたが、すぐ私を抱きしめて無事を喜んでくれた

その後馬車から飛び降りてボロボロのお父様が駆け付け私達を抱きしめてくれた

三人で抱き合い、泣きながら無事を喜んだのを覚えている


その日を境に自分の力を自覚した

そして両親に勧められ5歳で王立学園の特待生になった

因みに史上最年少の特待生だったらしい



強化魔法を強くすればするほど私は強くなれる

私に敵はいなかった


体が大きいというだけですぐに威張る男の子やいじめっ子をやっつけたりした

大人ですら大抵の人は私に敵わない

九歳以下の部の大会では私に敵う子なんて当然居るわけもなく

6歳の時に無差別の部にも出場した


今でも覚えている

その時は三回戦でフールという14歳の生徒に負けたのだ

フールは不思議な魔法を使う相手で、私は五感を封じられた

目も見えず、音も聞こえず、自分が立っているのかどうかすらわからないような状態で

気が付いたら場外に倒れていた


初めての負けだった

その悔しさは今でも覚えている

なにより卑怯な手を使われ負けたことが一番腹立たしい

やはり戦いというものは英雄物語に出てくるような正々堂々真正面からのぶつかり合いが至高だ

だからフールに負けたのは今も認めていない


それからは卑怯な奴を相手にするのも嫌なので無差別の部には出なくなったが

やはり九歳以下の部ではまともにやり合える相手がおらず退屈だった


そんな時ルシオ様に出会った

九歳の時はブロックが違い、しかもリリアーナさんに負けたらしいので対戦することは無かったが

十歳の年の決勝で戦うことになった


その時言われた言葉は「全力で行くからあっさり負けないでね」だった


去年私があっさり勝ったリリアーナさんに負けた男の子が私に対してそんな大口をたたいてきた

それなのに不思議と、ただの虚言だとは思わなかった

なので言われた通り開幕からかなり全力で相手をし、そして負けた

武器も強化魔法以外の魔法も使わない、正面からのぶつかり合いで

私の全力で最速の攻撃はほとんど避けられ手も足も出なかった


ぐうの音も出ないほどの完敗だった


しかし悔しさは微塵もなく

あるのは正面からぶつかってくれたことに対する嬉しさと

目標を見つけた喜びと

初めて感じた胸の高鳴り


それからというものルシオ様のことが頭から離れなくなってしまった






ルシオ様と仲良くなってから友達も増えた

マヤさんにリリアーナさんにウィルフレッド君

私と同じで皆ルシオ様のことが大好きみたい


もっとルシオ様のことを知りたい

そう思っているだけなのにマヤさんたら私のことをストーカー呼ばわりしてきて

「それを言ったら自分だってストーカーじゃありませんこと!?」と言ったら喧嘩になってしまった


だってしょうがないじゃない

マヤさんとリリアーナさんの二人と比べると私がルシオ様と仲良くなったのはつい最近なのに

三人で話をすると二人は私の知らないルシオ様をたくさん知っているので劣等感を感じてしまう


なので意を決してルシオ様をネーベの雪祭りに誘った


ルシオ様だけを誘うつもりだった


あの景色をルシオ様と二人っきりで見たい

だからもしマヤさんたちも誘おうとルシオ様が言い出したら断るつもりだった

そしたらまさかの弟と妹を連れていきたいという予想外の言葉が飛び出してきて

「セレナに紹介したいんだ」なんて言われたら断れるはずもなく・・・

それならいっそのこと皆で行きましょうと自分から提案する羽目になってしまった


別に私は皆と一緒にいるのが嫌な訳ではない

ただ私だけのルシオ様との思い出が欲しかっただけ




ネーベへ向かう旅の途中

ルシオ様が魔法で馬車を余裕で囲えるほどの小屋を造ってくれた

そのおかげで魔獣に襲われる心配もなく

冷たい風に馬車がさらされることもないので凍えることもなかった


それからお父様とお母様はルシオ様のことを気に入ったようで

無口なお父様はともかく、お母様はことあるごとにルシオ様とお喋りしていた

お母様には以前から「学園にこんな素晴らしい人がいますの!」と、ルシオ様のことを話していたのでお母様自身ルシオ様のことが気になっていたみたい

聞き耳を立てているとお母様はルシオ様の生まれや家庭事情、さらには人生設計まで聞いていて

既に私よりルシオ様のことに詳しいかもしれない



その後ネーベで目的を果たすためルシオ様を誘った

皆が居るのにルシオ様だけを誘うという私の行動について、ルシオ様は追求してこなかった

異性として意識されていないのか

それとも全てお見通しなのか


マヤさんもリリアーナさんもルシオ様は大人だと言っていた

なので私もルシオ様の手のひらの上で転がされているだけなのかも

でもそれで悪い気がしないあたり私も重症なのかもしれない




目的の場所まではかなり歩かなければいけなかった

それなのにルシオ様は何一つ文句を言うこともなく

それどころか道中色々な話で私を楽しませてくれた


目的の場所に到着したので、より一層驚いてもらおうと目を瞑ってもらった

ルシオ様は私のお願いに対し何のためらいもなく目を瞑ってくれた

信頼してくれている気がして嬉しくなった

それと同時に無防備なルシオ様を見て『今ならルシオ様にキスできる・・・』なんて邪な考えが頭をよぎってしまった

邪な考えを振り払い誘導するためにルシオ様の手を握る


キスというもっと大胆なことを考えてしまったが、ルシオ様と手を繋ぐのはこれが初めてだ

胸の鼓動がうるさい、ルシオ様に聞こえてしまっていないだろうか?

ルシオ様の手が暖かい、手に汗をかいているの気づかれてないだろうか?


ルシオ様が転ぶと危険だからと自分に言い訳をして、ゆっくりゆっくり歩いた




道中一つだけ不安なことがあった

それは氷が解けていないか、天候が荒れていないか

要は私が見せたい目的の景色はちゃんとあるかどうか

ここはネーベに住む人なら誰でも知っている絶景スポットだ

しかし毎年見られるわけではない

天候や気温などの条件が揃って初めて見ることのできる景色

もし条件が揃っていなければ無駄足になってしまう

それだけが不安だった


しかし私の願い通り最高の景色がそこにはあった

思わず安堵の声を漏らしてしまった


そしてルシオ様に見てもらう


ルシオ様は、私が初めてお爺様に手を引かれこの景色を見た時と同じ反応だった

それが嬉しくてつい笑ってしまった

近くで見たいとはしゃぐルシオ様が可愛くてまた笑みがこぼれた




夢を語るルシオ様はとても眩しくて

横顔に見惚れていると、突然こちらを見てお礼を言われた

お礼を言われたことと間抜けな顔をしていたかもしれないという羞恥でつい顔を逸らしてしまった


今この場には私とルシオ様の二人だけ

最高の景色でムードも最高なはず



ルシオ様に好きだと言ってしまいたい



これは最大のチャンスなはずだ

いつも邪魔するマヤさんも今は居ない


覚悟を決めてルシオ様を見る

だけど言葉が喉から出てこない

言いたい言葉は単純で、あと少しの勇気さえあれば絞り出せるはずなのに


何も言えずにただルシオ様を見つめていると

私の視線に気づいたのかルシオ様と目が合った

そしてルシオ様は私に対して、ただ微笑んでくれた


その瞬間頭の中が真っ白になり目を合わせることもできなくなってしまった


それからのことはあまり覚えていない



こうして当初の「ルシオ様と二人で景色を見る」という目的は一応果たされた


____

__

_


「皆で雪合戦をしよう!」


翌日ルシオ様の提案で、昼から皆で雪合戦をすることになった


昨日の夜ルシオ様から

「セレナのかっこいいところをマルクとアリスに見せたい」

と、言われ

マルク君とアリスちゃん対私とルシオ様で雪合戦をすることになった


「思いっきり来いよ、二人とも」

「「・・・・わかった」」


どうやら二人はルシオ様と同じチームじゃないことが不服なようだ

可愛そうではあるが、拗ねている二人も可愛い


「俺は基本何もしないからセレナだけで相手してみてくれないかな?できればかっこよく雪玉を防いでくれるとありがたいんだけど」


ルシオ様が私にだけ聞こえるようこっそり耳打ちする


「わかりましたわ!」


なんでも二人に格闘術に興味を持たせたいらしい

その役目に私を選んでくれたことが嬉しい

ルシオ様のお願いとなれば張り切らない訳にはいかない


「さあ!いつでも、どこからでもいいですわよ!」


ルシオ様から二人が魔法で雪玉を作れることは聞いている

さらにそれを自在に操ることができるということも

なので油断はできない


大人気ないかもしれないが強化魔法をしっかり使う


二人が私に向かって魔法で作った雪玉を飛ばしてくる

速さは大したことがない、強化していれば容易に対処できる速度だ


「ハッ!ハッ!」


雪玉を正拳突きで粉砕する

雪玉は木端微塵に砕け散りキラキラと辺りに散らばった


「お~」「わ~キレイ」


マルク君が拍手をして、アリスちゃんが綺麗だと言ってくれた


(綺麗というのは私のことかしら?それとも砕けた雪玉が光に反射してキラキラしていることに対してなのかしら?)


前者だとお姉さん嬉しいな



それからも二人の攻撃を防ぎきった

途中二人の操作で雪玉が上下左右からも飛んできたがなんとか防いだ


「む~・・・アリスおっきいのつくろう」

「わかった」


二人は力を合わせて大きな雪玉をつくり始める

そして直径1メートル程の巨大な雪玉をつくってしまった


(あら・・・さすがに大きいですわね。でも・・・)


二人だけではなくルシオ様にも良いところを見せたい


「いっけー!」「え~い」

「ハァー!」


巨大な雪玉を思いっきり蹴り上げる

雪玉は粉々になり広い範囲に飛び散った

周囲がまるでダイヤモンドダストのようにキラキラ光っている


「お~~」「わ~~」

「よっと」

「えっ!?」「きゃっ」

「はい二人の負け~」


見惚れている二人をルシオ様が雪玉で攻撃した

油断していた二人はあっさり雪玉を受けてしまう

ちょっと卑怯な気もしたが、切りが良いとルシオ様が判断したのだろう


「ありがとうセレナ、かっこよかったよ」

「お役に立てて光栄ですわ、ルシオ様」

「お姉ちゃんすごい!」「かっこよかった」

「まあ!ありがとうございます。二人もとても魔法がお上手ね」

「えへへ~」「兄さんが先生だから」


上手くいって良かった

ルシオ様に褒めてもらうこともできたし


「それじゃ次はマヤ達もやる?」

「無理無理!アタシの知ってる雪合戦じゃない!」

「あら?マヤさんでも逃げることくらいはできるんじゃありませんこと?」

「セ~レ~ナ~」

「ははっ、じゃあ魔法は禁止ね。強化魔法も。普通に雪合戦やろっか」

「そうですわね」

「セレナ覚悟しなさいよ!」

「望むところですわ」

「私は魔法使える方がいいんですけど・・・」

「じゃあリリーは俺が相手してあげようか?」

「私も普通のでいいです・・・」

「よ~し!皆一旦離れて!・・・・よーい、スタート!」



そうして皆でビショビショになるまで雪合戦を楽しんだ

ルシオ様と二人きりも良いけど

やっぱり皆で遊ぶのも楽しいですわね


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