70 雪合戦
「二人とも随分上手くなったな~」
「えへへっ」
「兄さんの居ないときもちゃんと練習してるから」
今日はローリスでマルクとアリスに魔法を教えている
転移魔法陣を使って一瞬で帰って来れるとは言ってもローリスに戻ってくるのはせいぜい五日に一度程度、その数日見ていないだけで格段に腕が上がっていることが多い
アリスが言うように俺の居ない間もちゃんと練習は欠かしていないのだろう、実に教えがいがある
二人ともすっかり言葉や読み書きも覚え舌足らずなところもなくなりハッキリ喋れるようになってきた
それに初級魔法はすでに全て無詠唱で使える、危険なので中級はまだ教えていないがそれも時間の問題だろう
(五歳でこれってやっぱ二人は天才だな!)
今は雪だるまを何体も作って離れた所から魔法で狙う練習をしている
30メートルくらい離れているのに二人とも正確に俺の指定した雪だるまを破壊している
「じゃあこういうのはできるか?」
俺が放った『ファイヤーボール』は雪だるまを並べている所を大きく横に逸れて飛んでいく
「え?どこ狙ってるの?」
「まあ見てな」
『ファイヤーボール』が雪だるまの並んでいる辺りまで飛んで行ったタイミングで魔力を操作して進行方向を曲げる
そして並んでいる雪だるまを横から一斉に破壊した
これは距離が離れるほど、操作する魔法が速ければ速いほど難しくなる
俺が操作できるのは『ファイヤーボール』だとせいぜい今離れている30メートルくらいだ
飛翔する速度の速い『ストーンボール』等は更に難しくなり、『ブレイズカノン』等の中級魔法レベルになると10メートルくらいまでしかまだ操作できない
まあそのレベルになると操作と言えるほどの変化はできず、せいぜい野球の変化球程度になるが
「すごい!」
「どうやるの?兄さん」
「う~ん・・・魔法を放ったあとも魔力を繋いでいるって言えばいいのかな?感覚でやってるから説明が難しいな・・・魔力を使って曲げたい方に引っ張る感じかな」
「ふ~ん・・・」
「やってみる」
マルクよりアリスの方が好奇心旺盛なようで俺が教えるとなんでもまず挑戦してみる感覚派で
それと違ってマルクは理論派で、先ず原理を理解しようとするところから入る
どちらが優れていると言うこともなくアリスが体で慣れてくるころにマルクが原理を理解してあっという間に追いつくといった感じで、結局二人の成長速度は同じくらいになる
「兄さん、雪だるま作らないと」
「そうだな、残ってたのまとめて壊しちゃったし」
といってもすでに何体もの雪だるまをつくったせいでこの辺の雪はほとんどなくなってしまっていた
「場所変えるか・・・あ!そうだ、二人にも氷魔法を教えておくよ」
「「氷魔法?」」
「こういうのだよ」
二人の目の前に氷の柱を造ってみせる
「お~~」
「つめたい・・・」
「雪ってのは氷とほとんど同じなんだ、だから・・・氷魔法が使えるようになるとこんなこともできるようになるぞ!」
そう言いながら雪玉を二個つくりマルクとアリスにぶつける
「わっ!」「きゃっ!」
「今日は兄ちゃんと雪合戦するか!俺対マルク・アリスのチームな、最初は積もってる雪を使ってもいいけど早く魔法で作れるようにならないと雪なくなっちゃうぞ」
「そんなすぐには無理だよ~」
「雪をつくる・・・」
「実際に雪を手に取って感触を覚えるんだ、冷たさを、軟らかさを、硬さを、それを魔法で再現するんだ。他の初級魔法とやり方は一緒だぞ?」
「そんなこと言ったって・・・うわっ!」
「ほらマルク考えながら体も動かせ、突っ立ってると良い的になるぞ。ほらアリスも」
「きゃっ!む~」
三十分程経っただろうか
しばらくは俺の一方的な攻撃が続いていたが、最初は積もっている雪を握って投げていた二人も感覚を覚えてきたのか魔法で再現しようとし始めた
「おっと、今のが氷魔法だアリス。でも雪じゃなくて完全に氷だから当たったら怪我しちゃうぞ」
「あ、ごめんなさい兄さん」
「心配すんな、避けれるから。思いっきりやってみろ」
「うん」
早速アリスが氷の飛礫を作れるようになった
正直ここまで早く氷魔法を使えるようになるとは思わなかった
やはり雪が積もっているというこの状況が氷魔法の感覚を養うのに適しているのだろう
だが雪玉を再現するのは氷をつくるより繊細な魔力の操作が必要になってくる
それから少し遅れてマルクも氷の飛礫を作れるようになった
そうなったらマルクは覚えるのが早く、あっという間に雪の強度を再現して俺との魔法雪合戦に参加してきた
「すごいなマルク!」
「えへへ」
「じゃあ今度は・・・」
雪玉を両手でつくり連射する
まるでガトリングのようにいくつもの雪玉がマルクを襲う
「うわわわわ!!」
「ほらほら避けたり防いだりしないと雪玉でも結構痛いぞ?」
「アリス!助けて!」
「わかった」
アリスがマルクの正面に氷の壁をつくり二人で身を隠す
(アリスはアリスでもう氷魔法使いこなせてるな。いや~、やっぱり二人とも天才だ!)
兄として鼻が高い
「今の位連射できるように頑張れよ」
「無理だよ~」
「できるって、一時間もかからずに氷魔法使えるようになっただろ?俺の時は氷魔法覚えるのに何日もかかったんだから」
「・・・・ホント?」
「ああ、二人とも兄ちゃんより魔法の才能あるかもよ」
「わかった、頑張る!」
「頑張れ!・・・・あと隠れてても無駄だぞ」
先ほど見せたように雪玉を操作して氷の壁を躱す
横から雪玉が飛んできて二人とも慌てて逃げ出した
「うわ~!」
「ほらほら、どうやったら雪玉に当たらずに済むのか考えるんだぞ」
「「無理~!!!」」
それからも雪合戦は更に一時間程続いた
終わるころにはアリスも雪玉を再現できるようになっていたし、二人ともある程度連射できるようになっていた
「もう無理~」
「魔力が・・・」
二人が魔力切れになったので終わることにした
「大分上手になったな二人とも」
「はぁはぁ、疲れた・・・」
「結局兄さんに当てられなかった・・・」
「さっき教えたばかりでこれだけ使えるんだから大したもんだよ」
「そうかな?でもやっぱり兄さんは凄いや」
「あれだけ雪玉作ったのに魔力大丈夫なの?」
「ん?全然、まだまだ残ってるよ」
「うへぇ~」
「兄さん凄い」
「二人も十歳になったら今の俺くらいになってるって」
もしかしたら今の俺以上になっている可能性も有る
「それじゃそろそろ帰るか、汗かいたし着替えないと風邪ひくぞ」
「はーい」
「兄さん全然汗かいてない」
「そうでもないけど・・・今度はもっと汗かかせるくらい上達してろよ?」
「「わかった!」」
(楽しみだな)
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家に帰り風呂や夕飯を済ませてリビングでのんびり一家団欒の時間
「ふふっ、マルクとアリスったらルシオが居なくてもずっと魔法の練習してるのよ?」
「うん、知ってる。会う度上達してるもん」
「二人とも剣術は全くやろうとしてくれないんだよ。アリスはともかくマルクは男の子なんだから少しくらいなぁ・・・」
「やだ!」
「なんでそんなに剣術嫌なんだ?剣術なら俺が居なくても父さんが教えてくれるよ?」
「・・・・アリスの方が魔法上手くなっちゃうし」
「あ~、なるほど。でも代わりに剣術を覚えるなら魔法でアリスに負けてもいいんじゃないか?」
「・・・・やだ」
(男の子のプライドなのかな?)
「なら魔法を頑張りながら少しずつ剣術もやるんだね、俺もそうやってたし」
「兄さんも?」
「うん。朝父さんが居るときは剣術習って、午後からは魔法の練習してたよ」
「・・・・そっか」
「アリスも剣術覚えた方がいい?」
「剣じゃなくても格闘術はある程度使えた方がいいかな。女の子でも自分の身を守るために護身術くらい使えた方が良いし」
「そうね、その方が親としても安心ね」
「どうだ?父さんが教えてやるぞ?二人ともやってみるか?」
「「・・・・・うん」」
「かなり間があったが・・・父さん嬉しいぞ」
なんでもチャレンジしてみたらいいんだ
何が自分に向いているのかなんてやってみないとわからないのだから
(格闘か・・・二人をセレナに合わせてみたらどんな反応するのかな?)
マルクとアリスは魔法ばかり練習している
だがいずれは剣術なども教えるつもりでいた
剣術はディルクに任せるとして、格闘ならセレナの戦い方はシンプルで子供の目にもかっこよく映るはずだ
あれを見たら近接戦闘に興味を持ってくれるかもしれない
(機会があったら会わせてみようかな)




