68 青春
「ルシオー。居るー?まだ寝てるの?」
「・・・・・んぁ?」
部屋の扉を叩く音で目が覚めた
「ん~~・・・ウィル・・・?」
「あ、居た。もうお昼だよ、どれだけ夜更かししたの?」
「えっ!?マジで?」
そんなに夜更かしをした覚えはない
それだけ昨日までのやり直しで疲れていたんだろう
失敗できない状況で初めての幻覚魔法を成功させるほど集中したり
拷問したり
下水道で長時間ジッとしてたり
拷問したり
馬で走り回ったり
それだけじゃなく今回は、数日過ごしてはやり直して、また数日過ごしてはやり直して
その数日間は変に状況を変えないように細心の注意を払ってなるべく同じことを繰り返した
なので実は神経をかなり使っていたのだ
肉体の疲労はLoadすることでLoad地点の状況まで回復できる
だが記憶は引き継がれるので精神的疲労は回復しない
「いや~爆睡してた。ところで何か用事?起こしに来てくれたわけじゃないだろ?」
「さっき授業終わりにアルベド君に会って『ルシオ知らない?』って聞かれたからさ、図書館行ってみたんだけどマヤさん達しかいなかったし、まだ部屋に居るのかと思って」
「アルベドが?なんだろう?学園に顔出すの珍しいな」
「『ここ何日か家に来ないけど幻覚魔法の練習はもういいのか?』だって」
「ああ、ちょっと忙しくて行けなかっただけなんだけどな。それとも俺が来なくて寂しかったのかな?アルベドの奴」
「・・・・・そんなんじゃないよ」
「「うわっ!!」」
「・・・・・そんなに驚く?」
「もしかしてずっと居たの?アルベド君」
「日常的に幻覚魔法使うなよ!びっくりするから。ってかいつの間にかけたんだよ・・・」
「・・・・・気づかない方が悪い」
「でも便利だね幻覚魔法、応用も凄く利きそうだし。ボクにも教えてよ」
「・・・・・まぁ別にいいけど」
「ホント!?やった!」
「おっ、アルベドがデレた」
「・・・・・そんなんじゃない、案内してくれたお礼」
「やっす!俺の時と全然違うじゃん!」
「・・・・・そういえば光魔法の進捗は?」
「・・・・・」
「・・・・・そう・・・」
「いや、だって仕方ないだろ・・・もともと理論だけで実際は雲を掴むような状況なんだから」
「光魔法って?」
「ん?え~っと、そうだな・・・これから訓練場いかない?アルベドに見せたい物もあるし、そこで話してやるよ」
「・・・・・わかった」
「?」
三人で訓練場に向かう
「ルシオ様~~~」
「ん?お、セレナ」
途中図書館の前を通ったらセレナが声をかけてきた
「お揃いでどちらへ行かれるんですの?」
「ちょっと訓練場に」
「訓練場?」
「うん。マヤとリリーは?」
「中に居ますわ。私はルシオ様がいらっしゃらないので先に抜けてきましたの。ささ、早く訓練場へ向かいましょう」
「え?二人も誘わないの?」
「たまには私も抜け駆けしたいですわ」
「なんの話?」
よくわからないがセレナが背中をグイグイ押してくる
一刻も早くここから離れようとしているようだ
「ちょっとセレナ!」
「チッ」
「あ、おはようマヤ、リリー。ってもうお昼か」
図書館からマヤとリリアーナが出てきた
「もしかしてずっと寝てたの?ルシオ」
「うん」
「どうせ夜中まで魔法の研究に没頭してたんじゃないの?」
「いや~・・・」
「マヤさん達出てくるタイミング良かったね。ボクら訓練場に行くとこだったんだ」
「図書館の中までセレナの『ルシオ様~♡』って声が聞こえてきたのよ」
「くっ、私としたことがつい嬉しくて・・・」
「訓練場に何をしに行くんですか?」
「訓練」
「まあそうでしょうけど」
「アルベドに練習の成果を見せるためにね」
「・・・・・へえ、さぼってたわけじゃないんだ」
「あったりまえでしょう!アルベドの家に行けなかったのは遊んでたからじゃないんだよ!」
「・・・・・楽しみだね」
「ボクにも教えてね」
「わかってるって。マヤとリリーも行く?」
「当然!」「もちろんです!」
「はぁ~~~」
結局いつものメンバー+アルベドで訓練場へ向かうことになった
セレナだけが大きな溜息をつきながら
「ルシオ君」
「ん?何?リリー」
道中俺にだけ聞こえるようにリリアーナが話しかけてくる
「もしかして疲れてませんか?」
「半日も寝たから元気だよ?」
「そんなに・・・事件のせいで疲れてるんじゃないですか?」
「ああ、もう大丈夫。多分全部解決したから」
「そうなんですか?」
「うん、それで安心したら爆睡しちゃって」
「そうだったんですか、お疲れさまでした」
「ありがとう。リリーもあの後大丈夫?」
「はい、嫌味を言ってくる人がいなくなって毎日快適です」
「ははっ、たくましいね。リリーは」
きっと俺に心配かけさせないためにわざとそういう言い方をしているのだろう
「ま~たリリアーナさんだけ抜け駆けですの?」
「ひゃっ!し、してません!してません!抜け駆けなんてしてませんよ!」
「あやしい・・・何をコソコソ話してたの?リリー」
「マヤさんまで・・・ただの世間話ですよ!ねっルシオ君」
「ん?うん」
「本当?ルシオ」「本当ですの?ルシオ様」
「うん・・・ってかどうしたの二人とも?図書館で何かあった?」
「別に何も~・・・ルシオのエッチ」
「はい?」
マヤが不機嫌そうにそっぽを向いた
セレナはセレナでさきほど、まるでマヤ達から逃げるように俺達を訓練場へと急かしていた
(抜け駆けがどうのとか言ってるし、エッチ?何のことだ?・・・あっ!)
思い当たることといえば一つしかない
リリアーナの顔を見るとあからさまに目を逸らされた
(そうですか、お泊りの時のことをこの二人に話しちゃいましたかリリーさん・・・)
女の子の方がディープな話を平気ですると言うし、図書館で女の子三人でいるときに話してしまったのだろう
正直リリアーナの背中を撫でまわしたことよりも女物の寝間着を着させられたことの方が俺にとってはダメージがでかい
エッチなのは別に悪いことではない、でも変態扱いは嫌だ
「・・・・・モテるねルシオ」
「・・・・・それほどでも」
(誤解されて変態だと思われたらどうしよう・・・)
そして微妙な空気のまま訓練場へと到着した
それからはアルベドに使えるようになった幻覚魔法をお披露目したり
ウィルと一緒にアルベドに幻覚魔法を教わったり
ウィルに光魔法についての説明をしながら三人で研究してみたり
三人でバトルロイヤル形式で戦ったりした
「ルシオ様~私も仲間に入れてください」
「え~・・・」
戦うのが好きなセレナはバトルロイヤルを始めた時から目を輝かせていた
光魔法についてウィルに説明していたときはリリアーナが聞き耳を立てていたのにも気づいていた
マヤはずっと俺の後ろをチョロチョロしている
でもそれらすべてを気づかないふりをしていた
そう、俺は大人気なくいじけていた
(どうせ女子三人で俺のこと笑い者にしてたんだろ?だったらこっちは男三人で楽しくやりたいのに・・・)
「ルシオ」
「はぁ~」
ウィルが優しく俺に声をかけてくる
(わかってるよ・・・こんなことでいつまでもいがみ合いたくないし)
「わかったよ、じゃあ折角人数もいることだしチーム戦でもしてみる?3対3か、2対2対2でもいいし」
「いいですわね」
「アタシは戦いに自信ないからルシオと同じチームね」
「マヤさんずるいです!」「ずるいですわよ!」
「ずるくないわよ!アタシは皆みたいに戦えないもの。チームのバランスを考えたら一番強いルシオと組むのが妥当でしょ?」
「ボクもルシオと組みたいな、試してみたい技もあるし」
「・・・・・できれば僕も」
(人気者は辛いな~)
これだけで俺の機嫌はすっかり直ってしまった
マヤの言い分は一応筋が通っているし
ウィルの言っている技というのも気になる
アルベドは単にこの中では俺くらいしか親しい相手がいないからだろう、人見知りめ
「全通り試せばいいだろ、時間が足りなければ明日またやればいいんだし」
俺の一言でチーム戦が始まった
____
__
_
楽しかった
ただただ楽しかった
ウィルとは自分でもびっくりするくらい息が合う
マヤが後ろに居ると思うと安心して戦える
リリーと一緒なら魔法で相手が近づくことすらできなくなる
セレナと組むと速攻で勝負が決まる
アルベドとなら相手を惑わし不意をつけるのでこちらは傷一つ負うことは無い
誰と組んでもそれぞれの良さがあった
「あ~楽しかった~、腹減った~」
「そうだね、こういうのもいい稽古になるねルシオ」
「セレナ馬鹿力すぎるのよ!ちょっとは手加減しなさいよ!」
「やってますわよ!もの凄く手加減してあれなんですの!マヤさんの鍛え方が足りないだけですわ」
「女の子なのにあんな馬鹿力なのあんたくらいよ」
「ルシオ様の前であんまり馬鹿馬鹿言わないでくださる!?」
「いや、セレナは馬鹿力だよ。強化魔法馬鹿」
「ルシオ様まで・・・」
「でも俺はセレナの戦い方好きだよ?見てて気持ちいいもん」
「ルシオ様!」
「それにセレナの力が強いのは強化魔法の賜物だから、マヤだって練習すればある程度はできると思うよ。今度一緒に練習しよっか」
「ホントっ!?約束よ!」
「あとセレナは格闘術を覚えた方がいいかな、今のままじゃ攻撃が単調で読まれやすいから。それに燃費も格段に良くなると思うよ、そうなったら俺も勝てないと思う」
「ルシオ様でも・・・ちょっと想像できませんけど」
「私の戦い方はどうでしたか?ルシオ君」
「リリーは凄く強くなったと思う、ただ接近されたら上手く躱したり防御するのが苦手そうだね」
「やっぱりそこですよね、自分でも気にはなっていたんです」
「俺がよく使ってる氷で自分を覆っちゃうのとか便利だよ?」
「簡単に言いますけど、一般的に氷魔法とか雷魔法は応用編でかなり難しいんですよ?ルシオ君は簡単に使ってますけど・・・」
「なら俺が教えてあげるよ、大丈夫コツもちゃんとあるから」
「はい!お願いします」
「アルベドは幻覚魔法に頼りすぎだね、タネがわかっちゃうと意外とモロいよ」
「・・・・・だから気づかれる前に倒すようにしてるよ」
「俺にはもう効かないじゃん」
「・・・・・まだ奥の手だってあるし」
「へ~それは楽しみ」
「ボクは?ボクは?」
「ウィルは・・・教えない」
「え~!なんでボクだけ!?」
「教えたら追いつかれちゃうかもしれないし」
「え?ボクがルシオに?」
「確かにウィル君ってルシオ並みになんでもできちゃうわよね」
「え、そうかな?ルシオをお手本に真似してるからかな?でもルシオはもっと先に行ってるし・・・」
「とーぜん!ウィルにだけは負けたくないもん」
「む~、ボクだって負けっぱなしじゃないぞ」
「そういうのは俺に勝ってから言うんだな」
「う~~」
友達のおかげで俺の毎日は充実している
大人になるまでの掛け替えのない青春の時間
それは大人になっても変わらないかもしれないし、時と共に簡単に無くなってしまうかもしれないし
思うのは今この瞬間を大事にしようと
何度Loadしても完璧には再現できないこの時を




