66 戻ってきた日常
朝目が覚めるとリリアーナが俺の顔を覗き込んでいた
「ひゃっ」
「・・・・おはようリリー」
「お、おはようございます」
「起こしに来てくれたの?」
「はい、そうなんです!いいタイミングで起きましたね」
「リリーは嘘が下手だね」
「う、嘘じゃありませんよ!起こしに来たのは本当です!」
「起こしに来たの“は”?」
「え~っと・・・」
「いたずらでもしようとしてた?」
「まさか!そんなことしませんよ!」
「まぁなんでもいいけど・・・朝から元気だねリリーは」
「誤解してるようですけど本当に起こしに来ただけですからね、朝ごはんの用意ができてますから」
「うん、ありがとう」
「それとルシオ君の服は洗濯してくれているので着替えてから食堂に来てください」
「は~い」
元の服に着替えて顔を洗い食堂へ向かう
レイラとリリアーナが待ってくれていた
「お待たせしました」
「おはようルシオ君。よく眠れた?」
「はい、あんなフカフカなベッドで寝たの初めてです」
「そう、それはよかったわ。それじゃあいただきましょうか」
「はい、いただきます」
朝ごはんにしてはずいぶん豪華だ
貴族なので普段からこうだという可能性もあるが、きっと俺のために奮発してくれたのだろう
何気ない会話をしながらおいしい朝食を堪能する
レイラもリリアーナも一晩しか経っていない割には意外と元気そうな様子だった
「これから大変になりますね・・・何かあったら僕も力になりますよ、力になれるかどうかわかりませんけど・・・」
「ありがとう。でも多分大丈夫よ、蓄えはあるし私も働いているから。家のことはメイドの人達がやってくれるし、私とリリーが暮らしていくくらいの余裕はあるわよ」
「それにルシオ君はもう十分すぎるくらい助けてくれてますよ」
「そうね」
レイラはすでに卒業して城で兵士として働いているそうだ
学園の卒業生の中では城で仕事をするということはかなりエリートの部類に入るらしい
もっとも兵士といっても現在は目立った戦争もなく、いざというときのための戦力でしかないようだが
この世界の国同士の争いは一昔前にあらかた片付いているみたいだった
王都から離れて大陸の端の方まで行けば小国同士の小競り合いはまだあるそうだが
「私と違ってリリーは特待生だから学費もいらないしね」
「特待生なんて名ばかりでお姉ちゃんの方が優秀だけどね」
「そんなことないわよ。リリーはもっと自分に自信を持ちなさい」
「え~・・・別に最近は自信が無い訳じゃないんだけど。ルシオ君のおかげで魔法の腕も上がってるし」
「俺は大したことしてないと思うけど」
「一緒に稽古しているだけで参考になるんですよ」
「そんなものかな」
「そんなものです」
そんなやり取りをレイラがニヤニヤしながら眺めている
「本当に二人とも仲良いわね」
「え!?別に普通だと思うけど。ルシオ君はマヤさんとかウィルフレッド君と話すときもこんな感じだし」
「そうですね、まだまだですよ。リリーはいつまで経っても敬語のままだし・・・」
「それは癖というか、年上の人に対しての礼儀というか・・・」
「でもレイラさんと話すときは敬語使わないでしょ?まあ姉妹だから当然かもしれないけど。いいな~羨ましいな~」
「あら、それじゃあルシオ君も私に対して遠慮しないでいいのよ?私に対しては自分のこと『僕』って言ってたし、タメ口で話してくれた方が私も嬉しいわ」
「え・・・え~っと、善処します」
「ルシオ君がお姉ちゃんにタメ口で話すようになったら私も頑張ってみますよ?」
「あ、ずるいな」
レイラもよく聞いているものだ
確かに年上に対して敬語を使うというのは俺にとっても普通のことで、特にレイラのように絡みも少なかった人物に対して今更急にタメ口になるのは少し抵抗がある
それにリリアーナは「頑張る」としか言ってないのでタメ口になる保証はない
(まあ俺は別に今のままでいいんだけどさ)
そして楽しい食事の時間はあっという間に過ぎていった
「それじゃ行ってきます」
「お邪魔しました」
「は~い、二人とも気を付けてね」
少し早いがリリアーナと二人で学園へ向かうことにした
のんびりと話をしながら朝の街を歩く
「そういえば昨日の夜『どうしてルシオ君がいたのか』ってお姉ちゃんが不思議そうにしてましたよ」
「なんて説明したの?」
「事件現場に用事でたまたま居合わせたって言っときましたけど」
「別にレイラさんになら本当のこと言っても構わないよ?」
「わかりました。でもそれはルシオ君が直接言ってあげてください」
「わかった」
本当はリリアーナにも嘘をついているので、今更村で神子だと呼ばれていることが周りに知られても大した問題にはならないだろう
「それよりリリーとレイラさんは大丈夫?あんな偉そうなこと言っておいて結局俺はなんにもしてないからさ」
「私は大丈夫です。お姉ちゃんは何か気持ちを隠してるかもしれませんけど・・・でもきっと大丈夫だと思います」
二人が笑って暮らせるようにしてみせると偉そうなことを言っておいて、結局今回の件はレイラが殆ど片づけてしまった
「それになにもしてくれてない訳ないじゃないですか。今回のことは全部ルシオ君のおかげで片付いたようなものなんですから」
「う~ん・・・」
「ルシオ君、私もお姉ちゃんも自分の家のことは自分たちで何とかします。家のことまでルシオ君に迷惑をかけるわけにはいきませんから。それに本当に困った時はまたルシオ君に相談するので、今は見守っててくれませんか?」
「・・・・わかった」
確かにこの後のことはリリアーナの家の問題だ、他人が口を出し続けるわけにはいかない
それにこの姉妹ならきっと大丈夫だろう
レイラはもうこの世界では成人していて立派に働いているし
リリアーナもまだ幼いが、俺が思っているよりは強い子なんだろう
それに俺にはまだやることが残っている
数日経てばまた切り裂き魔の被害者が出てしまうだろう
今度はそっちを片づけなければいけない
学園についたので俺は一度寮に戻ることにした
リリアーナは先に図書館に向かう
寮へ戻るとアニーが掃除をしていた
無断外泊となってしまったことを話したが特に怒られることはなかった
一応外泊になる場合は報告するのが義務付けられてはいるが、寮生はとても多い
仮に無断外泊している生徒がいても把握するのは難しいのだろう
正直に話したことでお咎め無しということになった
その後図書館へ向かいいつもの勉強会が開かれる
特に連絡をとっているわけではないのにいつものメンバーが揃う
いつものメンバーといつもの騒がしい日常
(とりあえずリリーの件は一段落ついたと思って大丈夫かな)
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Saveしますか?
►はい/いいえ
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次は切り裂き魔だ




