63 尾行
勉強会の途中
「リリーちょっといいかな?」
「ん?なんですか?」
「ちょっとこっち来て」
「?」
「どうしたのルシオ?」
「ちょっとリリーと内緒の話」
そういうとマヤとセレナとウィルが訝しげな表情でこちらを見てきたが三人には内緒にしておく
危険なことなのでできれば関わってほしくない
図書館の隅の方
人気のないところまで行き、念のため小声で説明する
「・・・・・ってことなんだけど、協力してもらえないかな?」
「はぁ・・・それは別に構いませんが、例の天啓というやつですか?」
「うん。俺がいつもみたいに家まで送っていけばリリーは無事なんだ、でもそうすると他に犠牲者が出ちゃうみたいで・・・どうしても犯人を放っておけないから」
「わかりました、いいですよ」
「ありがとう!ただ油断はしないで、一番危ないのはリリーだから」
「わかってます」
リリアーナに説明したのはこうだ
今日の勉強会の後用事でリリーを家まで送れなかった
そしたら最近起こっている連続殺人の犯人にリリーが狙われてしまう
リリーはなんとか犯人を撃退できたが大怪我を負ってしまった
俺がリリーを家まで送っていくとそれは回避できるが後日別の被害者が出てしまう
なので俺が少し離れた所から見張っているから囮になってくれないか?
といった感じだ
リリアーナが惨い殺され方をすることは言わないでおいた
「本当なら俺を狙ってくれたら手っ取り早いんだけど、なんでか俺は狙われないみたいなんだよ・・・」
「そこまでわかるんですか?天啓って」
「え?あぁ、うん・・・」
(少し話過ぎたかな?まぁリリーならオプションのこと話しても大丈夫だと思うけど・・・一応隠しておくか)
「え~っと、なんていったらいいのかな・・・未来に起こりうる色んな悪い出来事とかが急にパッと頭に浮かぶんだ。こういう行動をとったらこうなるとか、あまり上手く説明できないけど」
「ふ~ん・・・不思議な力ですね。でもルシオ君がそういうならそうなんでしょうね、現に私も助けられてますし」
不思議そうにしながらも結構あっさり信じてくれた
「それじゃ今日の帰りよろしくね」
「はい」
それからみんなの所に戻り普段通り勉強を再開した
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そして夕方
勉強会も終わり帰ることになった
「それじゃ俺は少し離れた所をついていくよ」
「わかりました」
「気を付けてね」
「はい」
周囲に気を配りながらリリアーナの20メートル程後ろを歩く
そろそろ半分くらい歩いただろうか、今だ犯人らしき人物は現れない
太陽もかなり傾き、夕焼けから徐々にうす暗くなっていった
(そろそろ家についちゃうぞ?どこでどうやってリリーは襲われたんだ?それとも俺の存在に気付いてるのか?)
尾行なんて生まれてこの方やったことが無かったので下手なのはしょうがない
しかしリリアーナとの距離は充分離れている
(これ以上離れると見失うかもしれないしな・・・)
結局犯人らしき人物は現れずリリアーナの家についてしまった
「襲われませんでしたね」
「うん・・・おかしいな、俺のことバレてたのかな?」
「それはないと思いますけど、私でさえルシオ君がいなくなったと思った瞬間ありましたし」
「う~ん・・・」
「それによく考えたら普段通っている道はまだ人通りもあるので襲われるようなことはないんじゃないですか?」
「そうだよな・・・ひとりで帰る時別の道通ったりする?」
「いえ、基本いつものこの道ですよ。なるべく人の多い道を通ってますから」
「そっか」
暗いと言っても日が落ちてすぐだ
まだ仕事帰りなどで出歩いている人はちらほらいる
(ならリリーはどこでどうやって襲われたんだ?)
「ありがとうリリー、とりあえず今日はもういいよ」
「でも私が無事なら他の被害者が出てしまうんですよね?」
「すぐにって訳じゃないよ」
「でも・・・」
「俺にとって一番大事なことはリリーの無事なんだ、とりあえずそれは達成できたから後はこっちで調べてみるよ」
「私にできることがあったら言ってください」
「うん、そのつもりだよ」
結局その後俺が寮に帰る時も犯人は現れなかった
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それから数日後また別の被害者がでてしまった
(なんでだ?リリーが一人で帰るのと何がそんなに変わるんだ?)
きっと俺がリリーに囮を頼むことによって何かが変わり、その影響でリリアーナが襲われなくなるんだろう
(リリーには申し訳ないけど黙って尾行するか・・・)
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Loadしますか?
►はい/いいえ
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これで何度目だろうか
また同じ勉強会を繰り返す
マヤとセレナが喧嘩をして、それにウィルが挟まれて
喧嘩の原因でもある当の俺は面倒なので二人にかかわらないようにリリアーナと世界地図を眺める
そんなどこか楽しいはずの風景なのだが
頭の中では事件のことをずっと考えていた
(このままリリーに黙ったままでいくとして、本当にいざというときリリーを守れるのか?それが不安だ。もし犯人が思った以上に強かったら・・・)
女子供ばかりを狙うと言うことは犯人自体はあまり強くないのかもしれない
だがそれは犯人の趣向でしかないのかもしれない
例えば人を切り刻むのが好きなのだとしたら、子供や女性の方が肉が柔らかいから狙うのかもしれない
子供や女性の方が良い顔で嘆いてくれるのかもしれない
そうなってくると犯人の強さはまた別の話になってくる
(う~想像するだけで気が滅入ってくるけどな・・・人を切り刻んで何が楽しいんだろう)
結局考えはまとまらないまま勉強会が終わってしまった
皆と解散したあとこっそりリリアーナを尾行する
(ん?)
リリアーナの歩くペースがかなり速い
(何か用事でもあったのかな?)
走るほどではないが急いでいるようだ
そして今回も襲われることもなく家までたどり着いた
かなり早歩きだったためリリアーナが家についてもまだ空は微かに明るい
一緒に帰る時や囮を頼んだ時の半分くらいの時間で家に着いたようだ
(用事があったんなら前回は悪いことしちゃったかな。でも結局犯人は現れないし・・・どうしよう)
リリアーナが家に入ったのを確認してこれからどうするか考えながら寮に帰ろうと来た道を振り返った時
リリアーナの家から微かに怒鳴り声のようなものが聞こえた
(なんだ?例の義母かな?)
怒鳴り声が収まったあと玄関が開いてリリアーナが出てきた
見つからないよう咄嗟に隠れる
(家出・・・じゃないよな?こんな時間から外出?とりあえず後を・・・おっと)
後をつけようと思った時リリアーナと入れ違うようにレイラが帰って来た
レイラに見つからないようにしてから少し遅れてリリアーナを追う
リリアーナは人気の全くない路地へと入っていった
明かりがほとんどない路地をリリアーナは『トーチ』を使い進んでいく
(こんな道通ったことないな・・・ってかまさか本当に家出か?辛いことがあるならせめて相談してくれよ・・・)
するとリリアーナの前方に人影が見えた
話しかけられたのかリリアーナが足をとめる
耳を強化して聞き耳を立てる
どうやら道を聞かれているようだ
だがどう考えたって怪しい
(こんな時間にこんな人気のない道で子供に道を尋ねるか?)
道がわからないならその辺の民家に尋ねればいい
もっとも明かりもついていない家ばかりなので人が住んでいるかどうかも怪しいが
リリアーナはその変質者相手にも丁寧に道を教えていた
しかしそいつはわかりにくいから途中まで案内してくれと言いだした
リリアーナは急いでいるからと断っている
(出て行った方がいいか?)
そう思っていたがそいつはあっさり諦めたようだった
リリアーナにお礼を言い俺の居る方に向かって歩き出した
それを見てリリアーナも前を向いて再び歩き出した次の瞬間
(!?)
そいつは静かにリリアーナの方へ向き直り音を殺してリリアーナへと近寄った
(まずい!)
「うっ」
そいつが接近した後リリアーナが小さなうめき声をあげた
「その子から離れろ!」
「!?」
俺の声に驚きそいつが振り向いた
おそらくこいつが犯人だろう
犯人はリリアーナを後ろから羽交い絞めにしている
「近づくとこの子が死ぬぞ!」
「くっ・・・」
「ル・・ルシオ君・・・?」
犯人はリリアーナの首にナイフを突きつけている
(くそっ・・・飛び出すのが遅れた。どうする?目いっぱい強化魔法を使って速攻で・・・いや、危険すぎるか・・・)
俺に気付いてからリリアーナを人質に取るまでの動きはかなり速かった
警戒している今なら俺が下手に動いたとたんリリアーナが殺されるかもしれない
(どうする・・・)




