61 小さな変化
意図せず決勝をやり直す羽目になってから十日程経った
まだシェーネには遭遇していない
だが前回と同じならアルベドが用事で練習できなかった今日だ
念のため朝起きて安全を確認してからSaveしておいた
決勝からやり直した今回
アルベドとの関係は相変わらずなのだが、セレナの様子は少しだけ変わった
あまり大きい変化はないのだが、なんというか・・・
「ルシオ様!アルベド先輩にお願いしたら断られました!」
「まあそうだろうね、人見知りっていうか人間関係面倒くさがるタイプだし」
「ルシオ様からもお願いしてみてくださりませんか?」
「ええ~、アルベドが嫌だって言うなら無理だよ・・・」
「ではアルベド先輩の所に行くのを減らしてください!」
「幻覚魔法使えるようになるまでは無理」
「それではルシオ様と一緒にいられる時間があまりにも・・・」
「しょうがないね」
「そんな~・・・」
前よりセレナがグイグイ来るようになった
シェーネに遊ばれてやり直したあとセレナとの三度目の勝負があまりにも面倒に思い、早くケリをつけるため試合開始から全力を出した
セレナに開始前そう宣言していたからか、セレナも律儀に最初からほぼ全力で相手してくれた
しかし全力のセレナを相手にするのも三度目だ
速さや攻め方にも慣れてきたのでほとんど攻撃をもらうことはなかった
あれだけ強いセレナ相手に一方的に戦うことができた
セレナにとっては攻撃はあたらないし回復する暇もなく殴られ続ける嫌な試合だったと思うのだが・・・
試合が終わり『やりすぎたかな・・・』と心配になりながら治癒魔法でセレナを回復すると
「私こんなに強い方に出会ったの初めてですわ!」と目をキラキラさせていた
セレナはドMだったのかもしれない・・・
というのは半分冗談で
もともと自分より強い相手を求めていたらしい
一回目や二回目と違い三回目は圧倒的に俺が勝ったので、よりインパクトが強かったようだ
大会終了後三日目くらいにアルベドのところに向かう途中、俺を探していたセレナに見つかり質問攻めにあった
出身や家族構成、好きな食べ物・色・魔法・本やらなにやら
「ルシオ様のこともっと知りたいんですの!」と言って離してくれなかったのでその日は結局アルベドの所には行けなかった
昨日また捕まってしまったので、俺がアルベドの所で幻覚魔法の練習をしていることを話したら
「私も御一緒してよろしいですか?」というので
「アルベドに聞いてみて」といってみたらやはり駄目だったようだ
「今日もアルベド先輩のところへ?」
「いや、今日はアルベドに用事があるみたいだから行かないよ」
「では今日は御一緒しても?」
「別にいいけど」
「まあ!」
たったそれだけでこんなにも笑顔になってくれるのは悪い気はしない
それにセレナには聞いておきたいこともある
「セレナってシェーネって人と仲いいの?」
「シェーネさんですか?はい、パーティー等でよくお会いしますわ。どうしてそれを?」
「えっと・・・一緒にいるとこを見かけたことあって、どんな人?」
「とても美しくて、それでいてお優しい方ですわよ?」
「ふ~ん・・・」
「・・・ルシオ様はシェーネさんのような女性が好みなのですか?」
「いや、あの人ちょっと苦手」
そういうと一度意外そうな顔をした後あからさまにホッとしていた
「そうですか、でも殿方なら誰もが憧れるような方じゃありませんか?」
「まあ確かに綺麗な人だけど・・・」
「ル、ルシオ様はどういった女性が好みですか?」
「う~ん・・・わかんない」
「わからない?」
「好みのタイプと好きになる人って必ずしも一緒じゃないからな~」
「なるほど・・・」
何か考えてるのかセレナは少し黙り込んでしまった
(傍から見ると10歳のガキが何言ってんだって思われそうだな)
その後図書館でセレナと勉強しているといつものメンバーも合流することになり、またピリピリした空気(主にセレナとマヤ)の中で勉強会が開かれた
その帰りシェーネとの遭遇を避けるためリリアーナを途中まで送るのはやめてさっさと寮に帰ることにした
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次の日はアルベドの所へ行きいつものように幻覚魔法の練習をする
合間で光魔法について説明したり、息抜きに世間話をしたり
同性の友達は今までウィルくらいだったので新鮮な気分だ
秋も大分過ぎて外が暗くなるのも早くなった
完全に暗くなる前に寮へ帰ることにした
すると男子寮の入り口に見覚えのある女性が立っていた
「レイラさん?」
「あ!ルシオ君!やっと帰ってきてくれた」
「僕に用ですか?」
たしかレイラはすでに卒業しているはずだ
それにここは男子寮、よっぽどのことが無いとわざわざ来ることはないと思うが
「リリーを知らない?昨日から帰ってこないの」
「え!?今日は会ってませんよ、昨日図書館で一緒に勉強してそのあと夕方頃家に帰ってったはずですけど・・・」
「帰って来てない・・・」
(まさかまた家出?いや、今のリリーはそんなことしないと思う・・・)
「ってことはなにか事件に巻き込まれたとか?」
「誘拐されてたらどうしましょ・・・」
レイラの顔がどんどん険しくなっていく
「女子寮にいるマヤの所は行きましたか?」
「マヤ?リリーの友達よね?そういえばまだ行ってないわ」
「マヤの部屋に泊まってる可能性もあるかもしれません、行ってみてください」
「わかった」
とはいえリリアーナのことだ、無断で外泊なんてことしないだろう
(今度はどこ行ったんだよ・・・)
レイラを追い女子寮の近くまで行く
少ししてレイラとマヤがやってきた
「いなかった・・・」
「そうですか・・・」
「勉強会のあとルシオは一緒じゃなかったの?よくリリーを送ってあげてるじゃない」
「昨日はすぐ寮に帰ったからリリー一人で帰ったはずだよ」
「そう・・・」
「一度図書館からリリーの家までの道を探してみよう」
「そうね」「わかったわ」
しかし結局道中リリアーナは見つからなかった
「二人ともありがとう、もう遅いから二人は帰って」
「でも・・・」
「もしかしたらルシオ君に会いたくて男子寮に忍び込んでるかもしれないし・・・」
レイラは泣きそうな顔で冗談を言った
でも本当にそうであってほしい
「もし寮に戻ってリリーがいたら連れてきます」
「ええ、ありがとう」
当然寮の俺の部屋にリリアーナの姿は無かった
(大丈夫・・・Saveしたのは勉強会の日の朝だ、最悪やり直せる)
もし家出なら俺はリリアーナの変化に気付けなかったということだ
今は何か手掛かりが欲しい
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そして翌日の夕方
リリアーナの家から学園を挟んで反対方向の区画にある下水道で無残に切り刻まれたリリアーナの死体が見つかった




