55 十歳の大会 弐
この一年アレンは本当に頑張っていた
戦闘訓練の授業に出た時見かけることが多かったし
授業に出ていないときは訓練場に籠り修行していたようだ
だが俺だってこの一年遊んでいたわけではない
転移魔法の研究に時間を取られてはいたが魔力強化等のトレーニングは欠かしていない
上級魔法だって全部使えるようになった
(アレンがどれくらい強くなったのか楽しみだな)
「始め!」
審判が合図を出しアレンとの試合が始まった
アレンは右手に剣のレプリカを持ち、左手には短刀のレプリカを持っている
(二刀流か・・・レプリカっつってもあれで殴られると痛いんだろな~)
「はあーー!!」
アレンが突っ込んでくる
俺はレプリカの武器を使う予定はないので丸腰だ
アレンの攻撃をとりあえず魔法障壁で受けることにした
ガキィーンと金属音が響いた
レプリカとは言っているが、切れないように刃を潰しているだけなのかもしれない
(強化魔法使って鉄パイプ振り回してるようなもんだろこれ!普通に当たったら死ぬぞ)
一応生徒が怪我をした時のために治癒魔法を使える教師が何名かすぐそばにスタンバイしているが
即死してしまったら治療の意味がない
アレンの猛攻は止まらない
剣だけでなく短刀での攻撃や蹴り技なんかも使ってくる
それだけなら以前と大差ないのだが、格段に強化魔法の力が上がっていた
速さと攻撃の重さが以前とはまるで違う
(セレナの戦い方に思うところがあったのかな?)
魔法障壁で防いだり避けたりしているのでまだまともに攻撃は食らっていない
「強くなったなアレン、でもそれくらいじゃまだまだ負ける気がしないな!」
「ちっ・・」
アレンは攻めあぐねているようだ
確かに格段に強くはなったがそれでも去年の俺にもセレナにもまだ及ばないだろう
「それじゃ今度はこっちの番だ!」
「ぐっ!?」
アレンの攻撃にカウンターを合わせる
よろけたアレンが少し後ろに下がった
そこに氷の飛礫を何個も放つ
しかしアレンはすぐに体制を立て直しそれを全てギリギリで避けた
おそらく見切られたんだろう
「お!?やる~」
「ちっ、なめやがって・・・」
(素直に感心したんだけど・・・馬鹿にしてると思われたか。さて、どうやって倒そうかな)
初級魔法程度では今みたいに躱されるかもしれない
かといって威力の凄まじい魔法はさすがに危険すぎる
「ボケっとしてんな!」
倒し方を考えていた少しの瞬間俺の手が止まった
その瞬間をアレンは見逃さず一気に間合いを詰めてきた
「おっと」
凄い踏み込みだ
一瞬で目の前までアレンが迫ってきた
だが俺も強化魔法は常に使っているので反応できないほどではない
アレンの剣を受け止めようと魔法障壁をつくった
その瞬間アレンは両手の剣から手を離し、魔法障壁を躱すよう姿勢を低くして俺の足に掴みかかってきた
「うわっ!」
「取った!」
そのままアレンは俺の足を掴み、ジャイアントスイングのように場外目掛けて投げ飛ばした
「どうだ!・・・・なっ!?」
「あっぶねー」
俺は少し場外に出てしまっている
だが場外に落ちてはいない
魔法障壁を足場に空中に佇んでいる状態だ
「そんなの反則だろ!審判!あれ場外じゃないのか!?」
「場外の地面に落ちていないのでセーフです。試合続行!」
「ふざけんな!」
「ふぅ・・・まさか今の攻撃がフェイントだとは思わなかった」
「くっそ・・・」
完全に場外に落としての勝ちを確信したんだろう、凄く悔しそうだ
場外に飛ばされた時の対処法を考えといてよかった
(油断で負けたら洒落にならないしそろそろ終わらせよう)
魔法障壁に乗ったまま舞台に向かって『タイダルウェイブ』を放つ
「ぐっ、く・・・そ・・・」
アレンは迫りくる大量の水を防ぐ術もなく、少しだけ踏ん張ったが場外に流された
「場外!勝者ルシオ!」
「ふぅ」
魔法障壁から舞台に降りて一息つく
ずぶ濡れになったアレンが怒ってくるかと思ったがアレンは何かブツブツ言っている
「そうか・・・魔法を防ぐ方法も考えないとルシオには勝てないか・・・」
「まあ本気で勝ちに行くならアレンに付き合って肉弾戦やる必要もないからな」
「おい!お前が使ってたの魔法障壁だろ?俺にも使い方教えろ!」
「やだよ」
(それが人にものを頼む言い方か)
「・・・ならいい、自分でどうにかする」
そう言ってアレンは会場から出て行った
(やっぱアレンはアレンのままだったな)
だがそれでいいと思う
あいつはあれで憎めないやつだ
(また来年も勝負できるといいな)
そう思いながら観客席にいるみんなの元に向かった
「おめでとうルシオ」
「投げ飛ばされたときは一瞬ヒヤッとしたよ」
「さすがですねルシオ君」
「ありがとうみんな。リリーも見ててくれたんだ」
「はい」
「リリーは勝てた?」
「もちろんです!」
「よかった、おめでとう」
「ありがとうございます」
「年少の部は明日決勝なのか、早いな。ウィルの試合があるから見に行けないかも」
「別に構いませんよ、見られると緊張しますし」
「まあリリーの優勝で決まりだしね」
「あまりプレッシャーかけないでください」
皆と談笑していると次の試合が始まった
勝った方が明日俺とあたる
「あれがルシオとあたるかもしれないシード枠のレオって人?亜人なんだ」
「あの人なら授業で見たことある」
「アタシと同じ12歳よ、レオ君は滅茶苦茶強いって噂だけどルシオなら大丈夫よ!」
何故かマヤが自信満々だった
(マヤは俺のこと何だと思ってるのかな?)
俺のいるブロックのシード枠、レオという人は亜人だった
この世界には亜人と呼ばれる動物の血が混じった人間がいる
ローリスの村は普通の人間だけの村だったので見かけなかったが、王都には結構亜人も住んでいて
人間が大半を占めているので少ないが亜人の生徒も学園にいる
「戦闘訓練の授業で見たけど、すんごいパワーだったよ」
「見るからに強そうだよねあの人」
レオはライオンの亜人なのだろう
立派な鬣があり体も凄く大きい、12歳とは思えない
試合はレオがラリアットしたら相手が場外に吹っ飛んだ
何度も回転しながら、相手は受け身も取れず変な落ち方をして教師に治療されている
(死んでないよな?)
「あんなのまともに食らったらひとたまりもないって・・・」
「ボクあの人が相手じゃなくてよかった」
「ルシオなら大丈夫よ!」
「食らわなければ問題ありませんよ」
女性陣は気楽なものだ
特にマヤの根拠のない自信はなんなのだろう
だがリリアーナの言う通り、食らわなければ問題はない
(さて、どうやって戦おうか・・・)




