53 継続は力なり
ウィルが学園に入って早数か月
ウィルも学園での生活に慣れてきたみたいだ
ウィルが入ってからの生活は俺にとっても楽しいものだった
マヤやリリアーナとの生活も楽しいのだが、やはり同じ男同士というのは気が楽だ
一緒になって馬鹿なことをできるのが大きい
退屈になりがちな地味な稽古なんかもウィルと一緒にやるだけで楽しいものになる
ウィルも同じように上級魔法をかなりの早さで習得できた
ただ相変わらず風魔法は少し苦手なようで無詠唱はまだできないようだ
よくコツを聞かれるがこればっかりは感覚的なところが大きいので説明が難しい
それでも十歳で基本となる四元素の魔法を全て習得し、いくつかの複合魔法を使えるのでウィルも十分天才だと思う
そして最近マルクとアリスも魔法の勉強を始めた
転移魔法を実際に体験したからか魔法に対する興味が今まで以上に増え、家に帰る度に「魔法を教えて!」とせがまれるようになった
学園に居る間寂しい思いをさせてしまったので二人との時間をつくるためにも教えることにした
二人は初級の魔法をあっという間に習得してしまった
天才だと思う
今なら俺が魔法を覚えた時にアリシアが「天才よ!」とテンションが上がっていた理由がよくわかる
可愛い弟と妹が優秀だと俺まで嬉しくなってしまう
アリシアとディルクのことを親バカだと思っていたが、もし将来結婚して子供ができたら俺も親バカになる自信がある
そんなこんなで転移魔法が完成してから俺の毎日は非常に忙しいものになった
朝起きたら寮にある掲示板を見て興味のある授業がないかチェックしてからランニング
その後余裕があればアニー達の仕事を少し手伝ってから朝食をとる
午前中は村に居た時と同じで魔力強化の鍛錬を行ってから学園の中にある大会にも使われた場所でウィルと格闘訓練をしたり、戦闘訓練系の授業がある場合はそれに参加したりもしている
午後になったら授業に出ない時間は魔法の練習
最近は上級魔法の練習もある程度区切りがついたので訓練場を借りて練習することも少なくなった
ここ何日かは学園のグラウンドでマヤに中級魔法を教えながら隣でリリアーナとウィルが複合魔法の練習をしている
俺はリリアーナとウィルの様子を観察し、何か他に使ったことのない複合魔法がないか考えながらマヤの練習に付き合っている
そしてこの魔法の練習の時間が一日ごとに双子の魔法の練習と変わる
そうして日が傾いてきて皆と解散した後、一人で秘密の修行が始まる
現在三種類の魔法の案がある
といっても全て簡単に習得できるものではない
もし使えるようになれば全てが奥の手になるような凄い魔法だと思う
一つは転移魔法の無詠唱、つまり瞬間移動だ
使えれば移動はもちろん、戦闘でもかなり役に立つだろう
二つ目は重力魔法
重力を操作できるようになれれば空を飛ぶことも可能になるし、これも戦闘などで活用できる
因みにこの世界には『重力』というものはあまり認識されていないみたいだ
そもそも『重力』という言葉をこの世界で聞いたことがない
試しにリリアーナに聞いてみたが、「意味が分からないです」と言われた
魔法が発達している分、化学の発達は遅れているのだろうか
この世界にニュートンのような人間はまだいないのかもしれない
三つ目は光魔法
これはまだ構想の段階でしかないのだが
光を操ることができればレーザーを打つ魔法が使えたり、相手の視覚をだますこともできるようになる
相手から見て自分が居る場所をずらすとでも言えばいいのか
ホログラムのように映像だけで実体がない状態を再現できれば、不意をついたり逃げることが容易になる
三つ全てがまだ雲を掴むような状態ではあるがゲームや漫画でイメージはできているので、まあ気長に研究していこうと思っている
そして空腹が限界になるころにようやく寮に帰る
食事や風呂を済ませてからは一人でのんびりしたりウィルとだべったりしている
双子の魔法の練習の時はローリスの家で食事をとったりもする
その後筋トレをして眠りにつく
最近はそんな日々が続いている
____
__
_
そして季節は秋になり今年も大会が開かれる
俺もウィルも十歳になったので今年からは10歳~12歳の部に出場することになる
なので年上と戦うことになる
「は~、緊張するなぁ~」
「まだ三日も先だろ、今から緊張してどうするのさ。俺は楽しみだけど」
「そりゃルシオは強いからいいけどさ・・・」
「ウィルだって一つや二つ年上になんか負けないって」
「だといいけど」
ウィルにとっては初めての大会になるので緊張するのもわかるが
「意外とこんなものかって思うかもよ」
「でも他の特待生とか凄く強いんじゃないの?前聞いたセレナって子とか」
「セレナは勝つだけならウィルでも勝てると思う」
「勝つだけならってどういうこと?」
「戦い方がシンプルだから目くらましとかに弱いんだよ」
「なるほど・・・他の特待生は?」
「アレンしか知らない、今のアレンがどのくらい強くなってるのか知らないけどセレナよりは弱いんじゃないかな?他の特待生はみんな年上で去年の大会では別のトーナメントだったから知らないや」
「特待生ってくらいだしセレナより強い人もいるよねきっと・・・」
「いたらいいな、あと特待生じゃなくても強い人だっているかもしれないし」
「あ、そうなのか・・・やっぱ緊張する」
「俺とあたるまで負けんなよ」
「頑張る・・・」
そしてトーナメント表が掲示板に張り出される日が来た
いよいよ十歳の大会が始まる




