50 帰郷
冬が終わり春が来た
いよいよ転移魔法陣を繋げるため一度帰郷することにする
魔法陣の小型化は思ったほど成果は出なかった
半分くらいを目標にしていたのだが無理だった、それでも少しは小さくできた
訓練場などを利用して転移魔法陣が作動することはすでに確認済みだ
ただ問題は正しい距離の把握
かなり正確な地図を用いて計算してはいるが誤差は必ずあるだろう
試してみた結果ある程度の誤差は大丈夫なようだがその誤差がどこまで大丈夫なのかはまだ確認しきれていない
これについては王都の魔道具店でいいものを見つけた
魔力を込めると光る指輪のセット
ただ光るだけなので子供のお小遣いでも買える値段だった
これを片方リリアーナに渡して、合図を送る度に事前に何パターンも用意している距離を順番に変えていき総当たりで距離を特定する予定だ
通信装置のような魔道具もあったのだがそちらは馬鹿みたいに高かったので断念した
「じゃあ頼んだよリリー」
「はい、任せてください」
「成功したらウェルクシュタットにも繋いであげるから待っててねマヤ」
「うん、ありがとう」
「じゃあいってきま~す」
「いってらっしゃい」
「お気をつけて」
帰郷するのは俺一人だけ
普通なら子供だけの旅になるので護衛を雇うところなのだがお金がもったいない
そもそも俺だけなら護衛は必要ないし
今回は馬車ではなく馬だけだ、そのため馬車の倍くらいの速さで帰れると思う
馬は学園の馬を借りることができた、乗馬は訓練場で練習済みだ
途中ウェルクシュタットに立ち寄るが食糧の補充くらいでとくに滞在する予定はない
なのでマヤはお留守番
急げば五日ほどでローリスまで帰れるのではないだろうか?
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王都を出て二日目の昼過ぎ、ウェルクシュタットに到着した
「予想より早かったな。お前凄いな、ありがとう」
「ブルルッ」
馬は当然だとでも言わんばかりに鼻息を吐いた
途中何度も休憩をとっているがそれでも結構走り続けてきた
乗っているのが子供の俺だから楽なのかもしれない
「ちょっと食糧買ったらすぐ出発するからもうちょっと頑張ってくれな」
日が暮れるまでにまだ時間があるのでそのままローリスを目指すことにした
王都からウェルクシュタットの間は人通りも多く特に何もなかったが
ウェルクシュタットからローリスの間は人の姿はほとんどない
かわりに冬眠から覚めた魔獣が増える
日が暮れて野営の準備をしているとき数匹の狼に襲われた
びっくりはしたがすぐに氷漬けにして処理したので問題はない
それより驚いた馬が興奮してそれを宥めるのが大変だった
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「見えた!」
王都を出発して四日目の昼頃、ローリスの村が見えてきた
道中狼や熊に遭遇することはあったが特に問題は無かった
(ちょっとだけワイバーンと遭遇するの期待してたんだけどな・・・)
とはいえ無事に帰ってくることができたのでなによりだ
「ただいまー」
「あれ!?ルシオ!おかえり」
村の東の門を越えるとき自警団の人がいたので声をかける
「みんな元気にしてる?」
「ああ、みんないつも通り・・・じゃないのもいるな」
「え?なにかあったの?」
「いやなに、家に帰ったらわかるさ」
「わかった・・・」
王都に居て心配なことはあった
俺がいない間にもし村が前みたいに賊の襲撃があったり、魔獣の群れに襲われたりしていたら
もし帰った時に村が焼け野原になっていたらLoadしてもどうしようもないと
なので村が見えた時は正直ホッとした
馬を村の馬小屋に預けて家を目指す
途中会った人と軽く会話しても皆が「早く帰ってあげな」という
(皆の言い方からして深刻な問題じゃなさそうだけど、誰か病気にでもなったのかな・・・)
そう思いながらも、もしかしたらと不安が募り走って家に帰った
「ただいま!」
勢いよく玄関を開けて中に入る
「きゃっ!びっくりした・・・お帰りなさいルシオ」
「お母さん、ただいま」
アリシアはいつも通りのようだ
(ディルクは仕事で留守だとして、マルクとアリスは・・・)
見回すとリビングの奥で読み書きの勉強をしている二人を見つけた
二人はこちらをぼ~っと見つめたまま固まっている
「二人とも、お兄ちゃんが帰って来たわよ」
「ただいま、マルク、アリス」
「「・・・・」」
「お母さん、二人とも大丈夫な・・
「「にいたん!!!!!」」
「うわっ!」
いきなりの俺の登場で思考が停止していたのか、状況を把握したとたん二人が猛ダッシュで駆け寄ってきた
「ははっ、久しぶり。元気そうでよかった」
「そうでもなかったのよ、ルシオが全然帰って来ないから二人とも元気がなくって・・・」
「途中皆に『早く帰ってやれ』って言われたけどそのこと?」
「多分ね、私がすぐに会えるようになるって言っちゃったから二人もそうだと思ってたみたいで。二人には悪いことしちゃったわ・・・」
「あ、それでか。でもやっと転移魔法陣つくれるようになったからこれからは本当にすぐ会えるようになると思うよ」
「まあ!よかったわねマルク、アリス。これからはお兄ちゃんとすぐ会えるわよ」
二人はアリシアの方をチラッと見た後俺に向かって
「ほんとう?」「おかあさん、まえウソついた」
「ホントホント、お母さんだってたまには間違うんだから許してあげて」
「「わかった」」
「ごめんね二人とも、ありがとうルシオ」
どうやら王都へ向かう前、アリシアが言った「すぐ会える」という言葉を鵜呑みにした二人が
「いつまで経っても帰って来ない!お母さんの嘘つき!」と拗ねていたようだ
そして俺が帰って来ないためどこか元気がなかったらしい
その後は二人の相手をしながら学園のことをアリシアに話したりしてディルクの帰りを待った
そして久しぶりの一家団欒を楽しんだ




