47 リリアーナと魔法の練習
アレンが居なくなってしまった
といっても行先はわかっている
王都の外れにある訓練場だ
ここはもともと王都の兵士が訓練するための練兵場だったが、学園ができた頃に王立学園の生徒も使えるようになったらしい
訓練場はかなり広く、岩場・草原・沼地等といった色々な環境がある
俺は現在こっそりアレンの様子を見るためと、リリアーナに上級魔法を教えてもらうために学園に申請して訓練場に来ている
アレンは岩場のエリアにいた
セレナと俺に負けたのが相当悔しかったのか必死に訓練している
(とりあえず心配はないかな・・・あの様子だと稽古が終わったらまた絡まれそうだけど)
アレンの様子を確認できたのでリリアーナと一緒に草原エリアの誰もいないところに行く
ここなら上級魔法を使っても被害の心配をせずに済みそうだ
「まずは何から練習しますか?」
「えっと、『トルネード』と『アイスベルク』以外で」
「その二つは?」
「規模が小さめだからこの二つは使ったことあるんだ」
「なるほど。では昨日私が使った『エクスプロージョン』から始めましょうか」
「は~い先生」
「せん・・・あんまりからかわないでください」
「ははっ、わかったよリリアーナ。・・・・あ、そうだ。リリーって呼んでもいい?その方が呼びやすいし」
「あ、はい。どうぞ。お姉ちゃんにもそう呼ばれてますし」
「そうだったんだ。んじゃよろしくねリリー」
それからリリーと一緒に一通り上級魔法を試してみた
一度魔導書を読んでいるのでイメージはできている
そのおかげか結構簡単に上級を使うことができた、因みに無詠唱もできた
「やっぱりルシオ君はただ物じゃなかったです、私の目に狂いはなかったですね」
「ん?そんなこと思ってたの?」
「はい、一戦目から目をつけていました。二戦目のときに目が合いましたよね?」
「あ~、熱い視線を向けられてたな~確かに」
「熱い視線って・・・そんなんじゃありませんよ!」
「なんだ残念」
「残念って・・・あまりからかわないでください!」
「ごめんごめん。リリーの反応が可愛いからつい」
「とにかく!ルシオ君とまともに勝負してたら私は勝てなかったでしょう、アレン君にも勝ってましたし」
「じゃあここで試してみる?」
「いえ、結構です。ただ私が知りたいのは、どうしてわざと私に負けたのかです。アレン君と戦わないためと言ってましたけど、セレナさんの方が強いのを知ってましたよね?なら私に勝って決勝に進めばアレン君とはあたらないはずですから」
「えっと・・・」
(セレナの方が強いってのは余計な一言だったな)
今までも何度かやり直しているときに余計なことを口走ってしまうことは何度かあった
当たり前のように口に出したことを「なんでそんなこと知ってるの?」と疑問を持たれたり
たとえば今回だとレイラのことを口にすると「会ったことあるの?」と疑問に思われるだろう
今回はまだレイラに会っていない、俺は知っているがレイラは俺のことを見たこともないだろう
しかし俺には誤魔化すのに便利な設定がある
「実は天啓っていって、少し先の未来が見えることが時々あるんだ。それが大会中にあって・・・リリーが大会のあと行方不明になる未来が見えたんだよ。お姉さん、レイラさんでしょ?レイラさんがリリーが帰ってこないって必死に探してて、僕も探したけど見つからなくて。レイラさんの話だとお義母さんがリリーに酷いことを言ってリリーが家出したんじゃないかって思ったんだけど。そうならないためにリリーに勝ってもらう必要があったんだよ」
あまりに突拍子もないことを俺が言い出したからかリリーは固まっている
「大丈夫?」
「え?はい・・・いや、でも本当に?だけどお姉ちゃんのことも、それにお義母さんならそういうこと言うかもしれないし・・・」
「二戦目に僕を見ていた時どこか不安そうに見えたけど、あれは僕に負けるとお義母さんに怒られると思ってたからじゃないの?特待生のなかでビリになっちゃうからって」
「・・・・・・そうです」
「優勝戦でセレナに負けちゃったけどお義母さんは何か言ってた?」
「いえ、『やっぱりあなたでは優勝なんか無理でしょうね』って言われただけで別に怒られるってほどではなかったです」
(嫌味は言われたんだ・・・)
「じゃあ僕は未来を変えることができたみたいだね、よかった」
「えっと、ありがとうございました?でいいんですよね?」
「別にお礼なんかいいよ、僕が勝手にやったことなんだし。もしかしたら余計なことをしてしまう可能性もあったわけだしね」
「いえ、確かにルシオ君に負けていたらお義母さんは私のことを怒ったと思います・・・最近お姉ちゃんが忙しくて家にいないので、家にいるとお義母さんに色々言われるんです。だんだんそれに耐えられなくなってきて・・・次怒られたら嫌になって家出してもおかしくありません」
「家庭の事情にあまり口出しはできないけど、リリーには味方がいるってことも分かっていて?僕とお姉さんは何があってもリリーの味方だから」
「あ・・・ありがとうございます」
泣きそうな顔を一瞬見せて下を向いてしまった
「何か嫌なことがあったりしたらなんでも相談してよ、お姉さんに相談してもいいんだし。リリーはそれを迷惑かもしれないって考えるかもしれないけどさ、一人で抱え込む方がこっちとしては心配なんだよ。僕にも妹がいるからわかるけど、お姉さんはリリーがわがまま言ってくれるくらいの方が嬉しいと思うよ?お姉さんにとってリリーは掛け替えのない妹なんだから」
「・・・・はい」
リリーは下を向いたまま大粒の涙を零していた
俺はリリーが泣き止むまでやさしく頭を撫でた
子供にとって親というのは絶対の存在だ
大抵の子供は親がいないと生きていけないのだから
特にリリーのように気の弱い子からすれば、常に親を怒らせないように気を配っていなければならない
そして義母は理不尽な怒り方をする
リリーにとってさぞストレスだっただろう
リリーが赤ん坊のころに亡くなった実の母親のことを覚えているのかは疑問だ
だが覚えていないのならリリーにとっては義母が母親になる
それなのに母はレイラばかり可愛がり自分のことは叱ってばかり、それも大した理由でもないことで
今まで鬱憤を溜め続けていたのかもしれない
しばらくしてリリーは泣き止んだ
「すみません、もう大丈夫です」
「ん、じゃあそろそろ帰ろうか。また一緒に魔法の練習しようね」
「はい、わかりました」
泣いてスッキリしたのかリリーの顔は晴れやかだった
「あ!僕に時々天啓があるってことは故郷の村の人とリリーしか知らないんだ、できれば他の人には内緒にしといて?」
「はい」




