43 いなくなった二人
俺は現在図書館に居る
いつも通り転移魔法の勉強をしているのだが
いつもと違うものもある
「・・・・・」
「ルシオ様はこんな難しい本をいつも読んでらっしゃるの?」
「え?うん、まあ。転移魔法が使えるようになると簡単に家に帰れるから便利でしょ?」
「それはそうですけど・・・私にはさっぱりですわ。流石ルシオ様」
「・・・・・はぁ」
いつもと違い今日はセレナまでいる
俺はマヤとセレナに挟まれるように座っている
セレナが居るせいかマヤは非常に不機嫌な様子だ
さっきからずっと頬杖をついてチラチラこっちを見ては、机を指でコツコツ叩いたり溜息をついたりしている
「あなた邪魔なんですけど?」的なオーラが凄い
一方のセレナはマヤなんかいないような素振りで全くお構いなしだ
それが一層マヤの機嫌を悪くしている
(全然集中できない・・・)
「ルシオ様、これはどういう意味なんですの?」
「これは、えっと・・・なんて言ったらいいのかな・・・」
「ちょっとあんた!ルシオの勉強の邪魔しに来たの?」
「あっ・・・決してそういうつもりは・・・申し訳ございませんルシオ様、お邪魔でしょうか?」
「邪魔ってことはないけど・・・」
「本当ですか!?よかった・・・」
「ありがとうマヤ、でも俺は大丈夫だからね」
「う~・・・ルシオがそういうなら別にいいけどさ・・・」
多分マヤのは八つ当たりみたいなものだろう
それなのに俺にお礼を言われたからか少しばつが悪そうだ
「でもセレナはここに居て楽しい?見てもわかんないんでしょ?」
「はい、とても!ルシオ様が普段何をしているのかとても興味がありますので」
「え?俺が?どうして?」
「えっと・・・その、ルシオ様が初めてなんです」
「はい?」
「ええと・・・」
セレナが自分のことを話してくれた
セレナはとても強い
というのも生まれつき魔力の量がとても多く、小さい頃から本能的に強化魔法を使えたらしい
そのため大人相手でもほとんど負けたことは無かった
だが俺が最初に霧で目くらましを使ったように変則的なからめ手を使ってくる相手には相性が悪いみたいで、何度か負けも経験したことがあるようだ
しかしそういう相手には卑怯者という印象を持ってしまうため、負けたことより正々堂々戦わないことに腹が立つらしい
そして正々堂々正面からぶつかってセレナに初めて打ち勝ったのが俺だと言うことだ
「それにルシオ様も怪我だらけだったのに、御自分より先に倒れた私の介抱をしてくれるような優しい方でした。もう完璧ですわ」
セレナは両手を頬にあて、「ポッ」っという効果音が聴こえてきそうなくらい顔を赤くしている
「なので私、もっとルシオ様のことを知りたいんですの!」
「はぁ・・・」
どうやら惚れられたみたいだ
まあ正直好意を持たれること自体は相手が誰であろうと嬉しいものなので構わないんだけど
セレナはお人形のようにとても可愛い女の子だが、俺と同じでまだ九歳だ
二歳しか変わらないマヤもそうだが、中身がおっさんの俺にとってセレナ達の気持ちに応えるというのは犯罪臭がしてならない
今の俺は九歳だから別に悪いことではないのだけれど
(というか友達としては好きだけど、さすがにこの年代を恋人としては見れないよな・・・)
俺はロリコンではない
なので大人になってから言って欲しかった
(あれ?でも今がもしモテ期なら大人になってからモテなくなるんじゃないか?)
子供の頃は可愛くてモテたのに大人になると全くモテなくなった友人を知っている
それはそれで嫌なものだ
そんなくだらないことを俺が考えていたら
「セレナ!ちょっといいかしら?ルシオは勉強続けてて」
「え?わかった」
「なんでしょう?」
マヤが勢いよく立ち上がりセレナの腕をつかんで図書館から出て行った
俺に声をかけるとき無理に笑顔を作ろうとしたのだろうけど、口角を釣り上げただけで全然笑えてなかった
(女の戦いか?子供でも女は女なんだな・・・マヤの顔怖かった・・・)
まあいい、別に決闘を申し込むわけではないだろう
俺の居心地が良くなるなら話し合いはいくらでもしてくれていい
「ふぅ~、ちょっと休憩しよ」
二人が出て行ってから息抜きに適当に本棚から本を取って開けてみた
どうやら地理の本みたいだ
(そういえば転移魔法の本ばかり探してたからこの世界のこと勉強してなかったな、ちょうどいいや)
パラパラとめくってみると世界地図だろうか?大きな地図が描かれているページを見つけた
地図の上部には大きく『アヴァングラース』という文字が書いてある
アヴァングラースというのは、例えば「地球」といったような、この世界そのものの名称だ
世界地図を眺めていると気になる物を見つけた
(どこがどこだか全くわかんないな・・・ん?なんだこれ?鏡海?)
どうやらこの世界には一つの大きな大陸があるだけのようだ
大陸は歪な形をした船の錨が横向きになったような形をしていて、その周りに小さな島が点在している
⚓←これの横向きをイメージ
そして俺が気になったのは世界の端っこの部分
地球と同じように海もあるのだが、地図の端っこには「鏡海」と書かれた薄い壁のようなものが描かれている
まるでオーロラに囲まれているような絵が地図には描かれていた
その鏡海というものに囲まれるように海があり、その海の上に大陸がある
(なんだろうこの鏡海ってのは?もしかしてこの世界って平地なのかな?でも地球と同じで太陽も月もあるし、同じようにグルグル回ってるように見えるけど)
この世界は元居た地球と同じように太陽のようなものがあれば月のようなものもある
地球と同じように昼と夜があり、陽は昇って沈む
なのでこの世界も球体だと思っていたのだが
(やっぱこういうものを見つけちゃうとワクワクしてくるな)
地図を見るのに集中していると二人が戻ってきた
なんか二人ともテンションが上がってるように見える
「あ、ちょうどよかった。二人ともこれわかる?」
「なに?ルシオ」「なんでしょう?ルシオ様」
「うん、これなん・・だ・・けど・・・」
さっきと同じように両隣に座った二人の距離が異常に近い
椅子が完全にくっついている
肩もガッツリあたっている
「なに?世界地図?これがどうしたの?」
「うん、この鏡海っての何か知ってる?」
「さあ?申し訳ありません、私は知りませんわ・・・」
「何って、鏡海は鏡海でしょ?世界の端っこにあるっていう」
「気にしなくていいよセレナ。どういうものなの?マヤ」
「さあ?実際に見たことはないから知らないけど、パパの話だと船で海を進んでいても鏡海にたどり着くといつの間にか進路が鏡みたいに反対方向を向いて帰っちゃってるんだって。だから鏡海って名前で、鏡海がこの世界の端っこだって言ってた」
「「へぇー」」
俺と一緒にセレナも関心している
めちゃくちゃ興味が湧いたので今度先生にでも更に詳しく聞いてみよう
「ありがとうマヤ!」
「ううん、いつもルシオに教えられてばかりだもの。これくらいどうってことないわ」
口ではそういいながらもセレナに向かってドヤ顔をしている
セレナは悔しそうだ
(なんでもいいけど俺を挟んで喧嘩しないでくれよ?)
それからはまた転移魔法の勉強に戻った
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そしてしばらく時間が経ち、日が傾いてきた頃
「すみません!ここにルシオ君って子いませんか?」
「へ?」
図書館の入り口の方から俺を探す女性の声が聞こえた
「僕がルシオですけど?」
「ルシオ君、リリアーナを見なかった?」
「リリアーナを?どうかしたんですか?」
「あの子昨日から家に帰ってこないの、学園にもいないみたいで。どこに行ったか知らないかしら?」
「いえ、知りません・・・」
「そう・・・」
「大会の3位決定戦には出てましたよ?決勝の後の表彰式にはいませんでしたけど」
「9歳以下の部の表彰式のときは私も試合してたから、その後リリアーナがどこに行ったのか知らないのよ」
「えっとあなたは?」
「あ!自己紹介がまだだったわね、私はレイラ。リリアーナの姉よ」
「あ、お姉さん。えっと、リリアーナの行きそうなところは?」
「それを今日一日かけて走り回ったけどどこにも居なくて・・・同じ年少の特待生のルシオ君なら何か知ってるかもと思って聞きに来たの」
「いえ、残念ながら・・・セレナは何か知ってる?」
「あなたがセレナさん?ちょうどよかった、何か知らないかしら?」
「いえ、私も何も知りませんわ」
「そう・・・もしリリアーナを見かけたら私に教えて?」
「はい、それはもちろん」
「ありがとう」
そういうとレイラは走って図書館を出て行った
きっと日が暮れても探す気なのだろう
(リリアーナ、どうしたんだろう?あれはやっぱり、なにか思い詰めてたのかな?)
初めて会った時からリリアーナはずっと様子が変だった
元々そういう子なのかもしれないという可能性はやはり間違いだったようだ
大会後に居なくなったということは、おそらくリリアーナの失踪に俺も少なからず関係している
「明日は僕もリリアーナを探すの手伝うことにするよ」
「アタシも手伝うわ」
「もちろん私も手伝いますわよ」
「ありがとう二人とも」
(無事でいてくれるといいけど・・・そういやアレンは?)




