04 剣と魔法の世界
「お母さん、魔法教えて」
「いいけどその前にお風呂入ってらっしゃい」
「はーい」
「お風呂あがったらお昼ごはんよ、ディルクもね」
「「はーい」」
昼下がり、ディルクとの剣術の稽古の後アリシアに魔法を教えてもらおうとお願いした
だが剣術の稽古で体中ドロドロだった
「いーたーい!」
「ははっ、沁みるだろ」
「んーーーー」
ディルクと一緒に風呂に入った
転んだりしたせいで体のあちこちに擦り傷ができてお湯が沁みる
「父さんも昔はそうやってたくさん稽古で怪我をしたもんだ」
「本で読んだけど怪我を治せる魔法もあるんでしょ?」
「あるけど擦り傷程度に使う必要ないだろ~・・・あ、もしかして治癒魔法を覚えたいから母さんに頼んだのか?」
「ん?ん~~~と・・・えへへ///」
半分図星だった
治癒魔法をすぐにでも覚えたいと思ったのは剣術の稽古が思ったより厳しく生傷が絶えないからだ
「だって痛いの嫌なんだもん」
「心配しなくても擦り傷位すぐに治るしすぐに慣れるさ」
「はぁ~~い」
「それに母さんはヒーラーじゃないから治癒魔法は得意じゃないぞ?」
「ヒーラーじゃないと使えないの?」
「そういうわけじゃないけど冒険者ってのは役割分担が大事だからな、回復はヒーラーに任せるのが普通なんだ」
「ふ~ん」
「だから母さんが得意なのは攻撃魔法だな、それならたくさん教えてくれるさ」
「わかった」
「そろそろ出るぞ、腹減った」
「はーい」
そして魔法を教わる理由のもう半分
魔法を覚えるのに魔導書を読んで独学で覚えてやろうと思ったがいまいち魔力というものを体感できないでいたからだ
魔導書に書いてあることはなんとなく理解できた
この世界では生き物は皆少なからず魔力を持っているらしい
魔法を使うときはその魔力を使って発動する、ここまではゲームと同じだから想像通りだった
だが肝心の自分の魔力をどうやったら使えるのかがさっぱりだった
試しに何度か庭で魔導書に書いてある魔法を声に出して読んでみたが何も起こらなかった
それを洗濯物を干しているアリシアに見られて恥ずかしかった
(終始ニコニコしながらこっちを見ていたもんな~、わざとゆっくり洗濯物干してたし・・・)
そりゃ子供が魔法使いごっこをしているみたいで微笑ましいだろうさ
でも中身はいい大人なんだ
結果羞恥心に耐えられず、手っ取り早く教えてもらうことにした
昼飯を食べた後アリシアと庭に出る
「ずっと本読んでたけど結局魔法は使えなかったの?」
「知ってるくせに・・・」
「うふふっ、ごめんね。でも頑張ってるルシオがかわいくって、邪魔しちゃ悪いかなって思ったの」
近くでニコニコしながら見学するのは邪魔ではないんだろうか?
まあいい、本題に入ろう
「お母さん、魔力って何?」
「魔力っていうのは魔法を使うために必要な力のことよ、重いものを持ち上げるには筋肉が必要でしょ?それと同じね」
「筋肉はわかるけど魔力はわかんない・・・」
「大丈夫!ルシオならすぐわかるわよ、手を出して」
「?」
言われた通り手を前に出す
アリシアが俺の手を取った、俺とアリシアで輪っかを作るような感じだ
「目をつむって全身を集中させて」
「ん」
言われた通り集中する
すると左手から右手へと体内にあたたかいお湯が流れるような感覚がした
「え!?、何これ!?」
「それが魔力よ。ね、言ったでしょルシオならすぐわかるって」
「ほぁ~~~」
「ふふっ、じゃあ今度はルシオだけでやってみて」
「へ?」
「今感じたものがルシオの中にもあるから、今度は一人でやってみて」
「うん!やってみる」
さっきの温かい物が魔力、それが今では体の中にあるのがはっきりわかる
多分アリシアがわかりやすくするために自分の魔力を俺に送り込んでくれたんだろう
体中がポカポカしている
「わかった!」
「じゃあいよいよ実践ね。いい?ルシオ、よく見てて」
アリシアが庭の木の方に手を向ける
「オー・グロ・エス『ウォーターボール』」
魔導書にもあった初級魔法の一つ、アリシアが唱えると水でできた球体が木に向かって飛んでいく
そして木にあたって弾けた、球は小さく当たった衝撃も弱そうだった
さすがに加減したんだろう
「今の水の球を魔力を使って作るの、これが魔法よ」
「最初に言ってたのは何?」
「それは古代語ね、魔法を使うための詠唱よ。意味は・・・母さんもわかんない」
「わかった、やってみる!」
「最初は魔力で水を作るのが難しいかもしれな・・・・・・・」
アリシアがまだ何か言っているが聞こえない
やっと魔法が使えるんだ!
この世界に転生して五年近くかかった、ずっと使ってみたかった
さっき見た水の球をイメージする
「オー・グロ・エス『ウォーターボール』!」
体中でポカポカし続けている魔力をかなり使ったと思う
アリシアが作った水の球の五倍くらい大きい球ができた
「ちょっ、ルシオ!」
アリシアが止めようとしたのだろうが遅かった
大きな水の球は庭の木に向かってかなりのスピードで飛んでった
バッシャーーーン!!!
幸い立派な木だったので折れることはなかったが水滴があたりに飛び散って一面水浸しになってしまった
大きな虹がかかっている
(しまった!やりすぎた!)
跳ね返ってきた水をかぶって俺もアリシアもびちょびちょに濡れている
「大丈夫か!?なにがあった!?」
すると家から音に驚いたディルクが飛び出してきた
「なんだこりゃ・・・アリシアがやった・・・んじゃないよな?まさかルシオが?」
さすがに怒られると思って恐る恐るアリシアの方を見る
「きゃああぁぁぁ!ディルク!やっぱりルシオは天才よ!まさか一度見ただけでできちゃうなんて思わなかったわ!」
そう叫びながら俺をおもいっきり抱きしめた
(はうっ)
暖かく柔らかい極上の感触に全身が包まれる
照れくさいというか恥ずかしいというか、むず痒い感覚
だけどとても安心する母の感触
下心はないぞ、決して
多分・・・
「やっぱりルシオがやったのか・・・こりゃ剣術もビシバシいかないと置いてかれるな・・・」
ディルクが横で恐ろしいことを言っている気がするがアリシアがうるさくてよく聞こえない
あんまり強く抱きしめるとお腹の子に障りますよ?
その後アリシアの興奮が収まるまで彼女の感触を堪能することになった
下心はないぞ!
「でも火や土の魔法は特に危険だからあんなに力を籠めちゃだめよ!」
後でしっかりお説教もされました