38 いざ王都へ
季節はすっかり夏になり、俺は九歳の誕生日を迎えた
いよいよ王立学園に入学するために王都へ向かう
俺が家を出ることについて
アリシアは「たまには顔見せてね」としんみり言い、双子は「やーーーー!!」とごねるので
「学園に入ったらまず転移魔法について勉強してみる」と家族に説明したら
「あら、だったら毎日でも帰ってこれるわけね」とアリシアは安心した様子だった
双子は意味が分かっていないみたいだが、アリシアの「毎日会える」の言葉で安心したのかごねることは無くなった
きっと難しい魔法だろうし使えるようになるまでどれくらいの時間がかかるかわからないのに
「ルシオなら大丈夫よ」とアリシアは能天気だ
まあ別れの時に泣かれたりしんみりするよりはいいだろう
そんなこんなで家を出発するときはアリシアと双子に笑って見送られた
王都へ向かうのは俺とディルクとバーナードとダーヴィの四人
以前ウェルクシュタットに買い物に行ったメンバーだ
二人までついてくる理由は道中の護衛のためだ
行きは俺がバリケードを作れるから野営も心配ないが帰りは俺がいない
そのためディルク一人では野営中が危険になる
他にもいれば交代で休息がとれるのでバーナード達にもついてきてもらうことになった
そして道中は特に何事もなくウェルクシュタットに到着
テッドの所に挨拶に行き「マヤによろしく、マヤをよろしく」といった内容の言葉をもらった
その後ウェルクシュタットで一泊して次の日王都に向けて出発した
王都への道のりもウェルクシュタットの時と同様、山と平原ばかりの代り映えしない景色が続くためすぐに飽きた
しかしローリスとウェルクシュタットを結ぶ街道と違い、ウェルクシュタットと王都を結ぶ街道は人の往来も多く、道中に小屋などもいくつか点在していた
そしてとうとう王都が見えてきた
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「わ~~、でっかい壁・・・」
「あれが王都の城壁だよ、あの壁の向こうにお城があってそれを囲むようにずっと続いてるんだ。見せてやりたいけどぐるっと回ってたら日が暮れちゃうからな、学園に入って余裕ができた時にでも自分の目で見てみるんだな」
王都はお城を中心にそれを囲むように城壁があり、城壁の外に街が広がっている
さらに城壁ほどではないが街全体を囲むように防壁がある
防壁ははるか遠くまで続いている、王都が円形なのか両端は見えない
(すげ~・・・でけ~)
ローリスとウェルクシュタットしか知らない俺にとってはこの景色だけでワクワクしてくる
ウェルクシュタット側にある王都南の関所を通り王都に入る
「学園はどこだったっけな?何度か来たことあるけど広すぎて覚えてないな・・・宿を先に決めてそこで聞いてみるか」
ディルクの案で先に宿を探すことにする
といっても関所を抜けてすぐのところに宿はあった
宿に馬車と荷物を置いて学園の場所を聞く
この宿から城壁に向かって歩いていると大きな建物があるからすぐわかるそうだ
バーナード達はお留守番
ディルクと一緒に言われた通り城壁を目指して歩いていると、教えられた通り一際大きな建物が目に入った
「「これかな?」」
同時にお互いがお互いに聞く
息がピッタリだ、こういうところは親子だなと思う
「僕は初めて来たからわかんないよ」
「俺だって学園に来たのは初めてだよ」
「はぁ~・・・聞いてみる」
建物の入り口に門番が立っているのでその人に聞いてみたところやはり王立学園で間違いないようだ
ついでにレルターの紹介で特待生の試験を受けに来たということも伝えると中に案内してくれた
どうやら話は聞いていたらしい
職員室に案内されると教頭のヴァイスという人が応対してくれた
「レルターから話は伺っています。準備がよろしければさっそく試験を受けられますが、どうします?」
「はい、大丈夫です」
「それではこちらへどうぞ」
運動場のような場所に案内される
(おっと、念のため)
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Saveしますか?
►はい/いいえ
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試験内容はレルターのテストと同じようなものだった
同じように雷魔法を使い、魔力量を見せる
「おお!素晴らしい!レルターから話は聞いていたのですが、まさかこれほどとは・・・」
「それで、うちの子は合格なんでしょうか?」
「はい、もちろん合格です。十歳以下の生徒でこれほどの逸材は大変珍しい、ぜひこの学園で更に腕を磨いていただきたい」
レルターが言っていた通りあっさり合格できてしまった
その後、入学手続きをして学園の授業の仕組みの説明や寮を案内されあっという間に時間が過ぎた
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宿から俺の荷物を寮の部屋に運び終わるころにはすっかり日が暮れていた
「それじゃあ俺は宿に戻るが、まあなんだ・・・頑張れよ」
「うん、ありがとう。お父さん」
「ホームシックになるなよ、ってルシオなら大丈夫か。学園にはマヤちゃんもいるし」
「多分大丈夫」
「えっと・・・あとは・・・」
「お父さん」
「ん?わっと、ははっ苦しいってルシオ」
思いっきり力を入れてディルクに抱き着く
「ん、僕は大丈夫だから。さっさと転移魔法の勉強していつでも会えるようにするために頑張るってお母さん達にも伝えといて」
ディルクから離れながら言う
「わかった」
「あと十歳になるころには剣術だけでお父さんに勝てるようにしておくから」
「うっ、そっちはもう少しのんびりでもいいんだぞ?」
「やだ」
「そりゃいつかは父さんより強くなってほしいが、あんまり早すぎると俺の面子がな・・・」
たしかに十歳の息子に勝てない父親というのは情けないかもしれない
だがそんなの知ったことじゃない
「だったらお父さんも強くなるために頑張ったら?お母さんとマルクとアリスを守ってよ?」
「そうだな、任せとけ!」
「次会う時を楽しみにしてるね」
「ああ」
「明日帰るんでしょ?朝見送りに行くよ。まだバーナード達に挨拶してないし」
「わかった・・・それじゃな」
ディルクが帰り部屋に一人、荷物を整理しながらこれからのことを思う
(なつかしいな~この感じ。一人暮らし始めるとき最初は不安だったな~。まあすぐ慣れたけど)
一人暮らしは前世で経験済みだ、二、三日もすればここが落ち着くようになるだろう
予定ではこれからここでおよそ七年間勉強することになる
その頃にはどれほど成長できているか楽しみだ
未来のことを想像しながら眠りについた




