35 しばしの別れ 其の弐
マヤ達が村に来てから5日が経った
明日の朝にはウェルクシュタットに帰る予定のようだ
テストの翌日、宿に行きレルターと話をした
主に魔法のことについて
「転移魔法はあるのか?」と率直に聞いてみると
「ありますよ」とあっさり教えてくれた
レルターの話だと意外と有名な魔法らしい
転移魔法は主に魔法陣を用いて使用する
かなり専門的な知識が必要になるみたいで、複雑でそのうえ結構大掛かりな魔法陣になるらしい
その為、国の偉い人や貴族などがお金を払い優秀な魔導士につくらせるのが多いそうだ
ローリスとウェルクシュタットのように三日程度で行き来できる場合、移動時間がたいしたことないためわざわざつくる人がいないのだろう
もっと遠距離の、大陸間を移動したり海や山を越えなければいけないような、月単位で時間のかかる場合に使用するらしい
その為、転移魔法陣はお金になる
通行費をとればかなり稼げるようだ
長距離を移動となれば時間がかかるのはもちろん道中危険なことも多々あるため、大金を出してでも楽で安全な転移魔法陣を使う人は多いみたいだ
レルターは転移魔法陣を使ったことは何度かあるがつくることはできないらしい
「その気になったらつくれると思うがつくるのが面倒」と言っていた
レルター自身凄腕の魔導士なので過去に研究してみたことはあったらしい
そして「自分で研究してつくるのは時間の無駄」と判断した
レルターは転移魔法陣で金儲けするつもりもないし研究して魔法陣をつくるのにかなりの時間がかかるため「だったら既存の魔法陣を金を払い使った方が他の好きなことに時間を使える」と考えたようだ
便利そうだし俺は研究してみようと思う、自宅に魔法陣つくるといつでも帰ってこれるし
とりあえず入学してから学園の図書館を漁ってみよう
入学したら忙しくなりそうだ
レルターや家族と話し合い入学は9歳になってすぐになった
あと四ヶ月ほど先だ
別に大した理由はない、もし学園に16歳になるギリギリまで在籍するならきりがいいからだ
それにすぐに入学するとなると準備で忙しくなってしまう
それとマルクとアリスの心の準備のための期間でもある
すぐお別れとなると確実に泣かれるだろう、ウェルクシュタットに行くだけでも泣かれたのに
入学までの間は二人といる時間を増やすつもりだ
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「む~、結局一度もできなかったわ・・・」
「僕も使えるようになったばっかだし上手く教えられなかったよ、ごめん」
「ルシオは全然悪くないわよ!ルシオが一か月かけてできるようになったことがアタシにすぐできるわけないもの」
「魔法覚えるのってコツを掴めれば早いんだけどね」
「教わったこと帰ってからもやってみるわ」
「うん、もしできなくても入学したらまた教えるからね」
「ええ、楽しみにしてる」
「それじゃあまた明日、朝見送りに行くから」
「うん」
マヤは少し寂しそうだ
テストが終わってからはずっとマヤと一緒だった
朝マヤが家に来て、一緒に練習をしてから家で昼食を食べて
そして日が暮れるまでまた練習をする
俺がウェルクシュタットに行った時一緒に買い物をしたみたいに村を歩いて回ることは一切無かった
それでも楽しかった
「なんか、マヤと一緒にいると楽しいな~」
「えっ!?なによ急に」
「だってこの三日間くらい魔法の練習以外なんにもしてないんだよ?はじめは村を案内しようかな~とかいろいろ考えてたのに」
「なんにもないんじゃなかったの?」
「うん、ない。だけど遊びもしないでずっと魔法の練習してたからさ、ちょっと悪いかなって思ってたんだ。でもそれでも僕は楽しかったなって思って、それで」
「アタシが頼んだんだもの、ルシオが気にすることじゃないわ。それにアタシも楽しかったわよ?」
「そっか、よかった」
マヤの顔が赤い、夕焼けのせいかもしれないが
後ろで手を組んでモジモジしている
「どうしたの?」
「えっと・・・なんでもないっ」
「?」
「学園で会えるの楽しみにしてるからね」
「うん、僕も」
「えへへっ、それじゃまた明日ねっ」
「うん」
そしてマヤは宿に帰っていった
途中何度か振り向いては手を振って
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「それでは皆さんお邪魔しました、またいつかお会いしましょう。お元気で」
「テッドさん達もお元気で。ルシオが王都に行くときに一度伺いますよ」
「はい、お待ちしています」
「ルシオ君、学園に来るのを楽しみにしていますよ。私は仕事で学園に居ないかもしれませんが学園の者に話をしておきますので、入学の際に私の紹介だと言えば特待生の審査を受けられるはずです。その時またテストを受けることになりますがルシオ君なら必ず合格できるでしょう」
「わかりました。レルターさん、色々ありがとうございました」
レルターは何も言わず微笑むと御者台に座った
それを見てテッドも馬車に乗り込む
「ルシオ!アタシも学園で待ってるからね!絶対来てね!」
「うん、入学するのはもうちょっと先になるけど必ず行くよ」
「待ってるわ!」
いきなりマヤがほっぺにキスしてきた
「バイバイ、ルシオ!待ってるからね~」
「・・・あ!うん!バイバ~イ」
突然のことでビックリしてしまった
不覚にもドキッとした
馬車の窓から身を乗り出して手を振るマヤに俺も手を振り返す
後ろでディルクとアリシアがニヤニヤしていると思うから振り向かない
(くそぅ・・・10歳の少女にドキッとさせられるなんて)
そんなことを思いながら俺は馬車が見えなくなるまで手を振り続けた




